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第57話:王国最強の騎士団長、おしゃれカフェで最高機密(?)の毒見に挑むの件

勘違い過保護ラブコメ、第57話をお届けします!

すべての元凶である乾パンの真実を通過し、二人の間に少しだけ甘い空気が流れる中――今回は、ライルの提案による「ちょっとしたカフェでのランチデート」のお話です!

普通の恋人同士のように、街のおしゃれな飲食店で楽しく食事……とはいかず、シルヴィアの脳内では完全に「最高機密の首脳会談および防諜作戦」へとスライドしてしまい……!?

果たしてライルは、無事にパンケーキやオムライスにありつけるのか!?

それでは、第57話の幕開けです!

ライルの自室にて。

「おい、シルヴィア。ちょっと待て。なんだその格好は」

ライルは目の前でビシッと直立不動の姿勢をとっているシルヴィアを指差して、引きつった声で声を上げた。

今日のデートに向けて、ライルが「たまには街の新しいカフェで、普通の昼飯でも食おうか」と提案したところまでは良かった。しかし、その誘いを受けたシルヴィアが自室から現れた瞬間、ライルの平穏な日常の希望は音を立てて崩れ去った。

そこに立っていたのは、デート服を着たお洒落な女性の姿ではない。

なぜか漆黒の重厚な生地で作られた「式典用の最高礼服(に偽装した、国家要人警護用の超高硬度防弾魔導スーツ)」を全身にまとい、腰にはいつもの神銀ミスリル製ナイフを完備。さらに、背中には一見するとただのトランクケースだが、中身はおそらく簡易魔法結界の触媒や緊急脱出用の魔導具がぎっしり詰まった装備一式を背負っていた。

「我が君、何を仰るのですか。これこそ、外界への極秘外出における我が国の最高機密礼装、および対暗殺特化型防護スーツですが?」

「どこがデート服だ!! 完全に出陣前の特殊部隊のそれだろ!!」

ライルは頭を抱えながら、目の前の重装備な騎士団長に突っ込んだ。

「いや、いいか? 俺たちがこれから行くのは、街の真ん中にある新しくできたおしゃれなカフェだぞ。パンケーキとか、ふわふわのオムライスとかを食べる、平和で穏やかな場所なんだ。そんな重火器をフル装備したテロリストみたいな格好で行ったら、お店ごと出入り禁止になるか、街の衛兵が全員突撃してくるわ!」

ライル必必死の説得により、シルヴィアは「……そこまで仰るなら、今回は万が一の奇襲に備えて、隠し武器のみの軽装にとどめておきましょう」と渋々納得し、どうにか外見だけは普通のロングコート姿に落ち着いた(※ただし内ポケットにはやはり謎の魔導具がびっしり詰まっている)。

 * * *

街の中心部、ガラス張りの外観が真新しい、評判のおしゃれカフェ。

平日の昼下がりとあって、店内には若いカップルや地元の住民たちが楽しそうに談笑しながら、甘いスイーツや香ばしいランチプレートを味わっていた。

そんな平和な空間に、ライルにエスコートされ(※本人の脳内では「最高指導者の重要警護作戦」)、シルヴィアが足を踏み入れた。

「いらっしゃいませー……って、ひっ!?」

出迎えた若い店員の女性は、シルヴィアが放つ無意識の凄まじい威圧感(王国最強の騎士団長が本気で周囲の敵性存在を警戒しているオーラ)をまともに浴び、その場でビクッと硬直した。

「おい、変なプレッシャーを出すな! 普通にお客さんとして席に着くんだよ!」

ライルが慌ててシルヴィアの袖を引っ張り、どうにか奥のテーブル席へと誘導した。

席に腰を下ろしたシルヴィアは、背筋をピンと伸ばしたまま、まるで要人会談の席にでも座るかのような厳粛な面持ちでメニュー表を開いた。

「ふむ……。これが、街の民が密会に利用するという『カフェ』の機密文書メニューですね」

「ただのランチメニューだよ! 音読するな!」

ライルがメニュー表を覗き込むと、そこには美味しそうな「トロふわオムライス・特製トマトソースがけ」や「焼き立てフルーツパンケーキ・バニラアイス添え」など、見ているだけでお腹が鳴るような料理が並んでいた。

「ふむ。我が君、この黄色いソースと赤く鮮やかな液体……そして純白の泡の調合……。非常に巧妙に偽装されてはいますが、もしやこれは、敵対勢力が我が君の暗殺を狙って仕込んだ『新型の神経毒』および『魔力暴走を引き起こす呪詛のスープ』では……!?」

「ただのケチャップとホワイトソースと生クリームだ!! なんで全部暗殺用の毒物に見えるんだよ!! 頭の中にスパイ組織の裏マニュアルでもびっしり詰まってんのか!」

ライルが机に突っ伏しそうな勢いで絶叫していると、ちょうど注文を取りに来た店員が恐る恐るやってきた。

「お、お決まりでしょうか……?」

その気弱そうな店員を見て、シルヴィアは一瞬目を鋭く光らせた。

「待て。そのトレイに載せられた水と布巾……。毒見は済んでいるのですか? 我が君の口に入るすべての物質は、厳重な国家基準の検査を――」

「すみません!! この人はちょっとスパイスの効いた冗談を言う癖がありまして!! オムライスを二つと、あとパンケーキを一つください!!」

ライルは店員の女の子に平身低頭で謝罪し、半ば強引に注文を済ませた。去っていく店員の背中が、わずかに震えていた気がする。ライルは深いため息をつきながら、じっと向かい側のシルヴィアを睨みつけた。

「お前なぁ……せっかくのデートなんだから、少しは肩の力を抜けよ。誰も俺を毒殺しようとなんて狙ってないから」

「ですが、我が君。世の中の危険というものは、常に最も油断している隙を突いてやってくるものです。ゆえに――」

シルヴィアが何かを言いかけた、その時だった。

厨房の方から、アルバイトの店員がうっかり足を滑らせたのか、スープの入ったボウルを派手にひっくり返す音が響いた。

「きゃっ!?」

ガシャーン!! と大きな音を立てて食器が割れ、スープの飛沫がこちらへ飛んできた――ように見えた。

「――我が君、危ないっ!!」

コンマ数秒の反射神経で、シルヴィアの身体が動いた。

彼女はテーブルを跳び越え、ライルを庇うように覆いかぶさると、懐から閃光のようなスピードで**「特製魔導障壁展開デバイス(※手のひらサイズの謎の機械)」**を取り出し、一瞬で周囲一帯の空間を完全にコーティングした。

バチバチバチッ!! と青白い電撃のような魔力光が弾け、飛んできたスープの飛沫は、障壁に触れた瞬間に綺麗に蒸発して消え去った。

店内が、一瞬にして完全な静寂に包まれた。

他の客たちは何が起きたのか分からず、ポカンと口を開けたままこちらを見つめている。

「……」

「……」

ライルはシルヴィアに覆いかぶさられたまま、自分の顔のすぐ横で青い光を放つ謎のデバイスを見つめ、静かに白目を剥いた。

「……あのな、シルヴィア」

「はい、我が君。敵の奇襲は見事に無力化いたしました。ご安心ください」

「ただの皿洗いのアルバイトがスープを落としただけだろ!!! なんでカフェの真ん中で対魔王最終決戦みたいな結界を展開してんだよ!! もうやめてくれ、俺の羞恥心が耐えられない!!」

ライルは人生で一番大きな声で絶叫し、店中の視線を一身に集めることになったのだった。

 * * *

その後、平謝りを繰り返してどうにか店を追い出されずに済んだ二人。

注文していた「焼き立てフルーツパンケーキ」が、ようやく目の前に運ばれてきた。

先ほどの騒動ですっかりぐったりし、魂の抜けたような顔をしているライルの隣で、シルヴィアは少しだけ申し訳なさそうに視線を落としていた。

「……あの、我が君。その……せっかくの楽しいランチのお時間を、私の過剰な警戒心で台無しにしてしまい、本当に申し訳ありませんでした……」

耳を垂れた大型犬のようにシュンとしているシルヴィアを見て、ライルはため息をつきつつも、怒る気力すら失ってしまっていた。まあ、こいつなりに「普通のデート」をしようとして空回りした結果なのだと分かっているからだ。

「……別に、謝るなよ。お前が俺の身を心配してくれてる(方向性は大分ズレてるけど)のは分かってるからさ」

ライルがぶっきらぼうにそう言うと、シルヴィアはハッと顔を上げた。

「我が君……」

「ほら、冷めないうちに食えよ。これ、一口食ってみろ。結構うまいからさ」

ライルはフォークで一口分のパンケーキを切り分け、たっぷりシロップと生クリームを絡めると、ふっと差し出した。

シルヴィアは驚いたように目を見張り、それから恐る恐る、まるで神聖な儀式でも執り行くかのように、その小さなひと口を口へと運んだ。

瞬間。

シルヴィアの紫紺の瞳が、カッと見開かれた。

ふんわりと焼き上げられた生地の甘さと、とろけるような生クリーム、そしてフルーツの爽やかな酸味が、彼女の味覚を優しく包み込む。

「こ、これは…………っ!」

これまで厳格な軍人として、質実剛健な食事ばかりを口にしてきた彼女にとって、この「甘味」という名の快楽はあまりにも衝撃的だった。

シルヴィアの顔が一気に真っ赤に染まり、耳たぶまでカッと熱を帯びていく。

「ど、どうだ?」

ライルが少し照れくさそうに尋ねると、シルヴィアは胸元に手を当て、うっとりと目を細めた。

「……美味しいです。甘くて……なんだか、胸の奥が温かくなるような……こんなにも素晴らしい食べ物が、この世に存在していたのですね……」

「そりゃよかったな。甘いものは、たまには食うと癒やされるだろ」

ライルが苦笑しながら自分のマグカップのコーヒーをすすると、シルヴィアはふっと柔らかく、どこか愛おしそうな笑みを浮かべた。

「はい。我が君とこうして並んで、同じ味を共有できるのであれば……それはどんな高級な晩餐よりも、私にとってかけがえのない贅沢ですわ」

「っ……またそういう恥ずかしいことをサラッと言い出す……!」

不意打ちの直球の言葉に、今度はライルの方が顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

外では相変わらず要人警護モードの物騒な空気が微かに漂っているものの、このカフェのテーブルクロスの上だけは、甘くて温かな、確かな恋人同士の時間流れていた。

最強の騎士団長と、不憫な苦労人次男のデートは、今日も今日とて盛大な勘違いとほんの少しの甘酸っぱさを残しながら、ゆっくりと進んでいくのだった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第57話、「王国最強の騎士団長、おしゃれカフェで最高機密(?)の毒見に挑むの件」いかがでしたでしょうか!

今回はアルベルトやルキウスの胃痛コンビをお休みさせ、ライルとシルヴィアの二人きりの「カフェデート」をお届けしました! デート服のつもりで防弾魔導スーツを着てきたり、店員のスープを敵の毒物と勘違いして結界を展開したりするシルヴィアの暴走と、それに対するライルの全力の絶叫ツッコミを楽しんでいただけたなら幸いです。

そして最後には、甘いパンケーキを通じて少しだけ二人の距離が縮まる、甘酸っぱい空気感を描かせていただきました!

少しずつラブコメとしての距離感が近づいていく本作、次なる第58話ではどんなドタバタとキュンが待ち受けているのか……!?

「防弾スーツでのデートの気合が斜め上すぎて草」「最後のパンケーキを分け合うシーンが尊い」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!

それでは、また次回の第58話でお会いしましょう!

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