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第52話:帝国騎士団長、地方の大都市で庶民の買い出しに挑む! 初めてのお出かけデート(?)の件

勘違いラブコメ、いよいよ第52話をお届けします!

前回の第51話では、シルヴィアが「普通の主婦」を目指して不器用ながらも手料理作りに奮闘し、ライルとの間に少しだけ甘酸っぱい空気が流れ始めましたよね。そして迎えた第52話は、実家のある地方の大都市の市場を舞台にした「初めてのお出かけ(買い出しデート)」回です! 街の活気に目を輝かせるシルヴィアと、彼女に振り回されつつも次第に距離を縮めていくライルのドキドキの道中をお楽しみください!

それでは、第52話のスタートです!

ヴェルナー伯爵家が位置する、地方の活気ある大都市。

その中心部にある巨大な中央市場には、朝から多くの商人と買い物客が行き交い、威勢の良い掛け声と新鮮な食材の匂いが満ちあふれていた。

そんな喧噪の中に、周囲の人々とは一線を画す、圧倒的な存在感を放つ一組の男女がいた。

「すごいですね、我が君! この大都市の市場は、まるで軍事基地の補給部隊さながらの活気に満ちあふれていますわ!」

「頼むから、市場を軍事基地に例えるのはやめてくれ……あと、街中なんだからもう少し声を抑えてくれよ、みんな見てるだろ……」

ライル・フォン・ヴェルナーは、自分の数歩先を堂々と歩くフルプレートアーマー姿の美少女――シルヴィアの背中を見ながら、何度目かの深い溜息をついた。

今日は母から「夕飯の材料と、お茶請けの買い出しを頼むよ」と頼まれたのだが、なぜか「妻としての嗜みである市場の物資調達を完璧にマスターしますわ!」とシルヴィアが猛烈な勢いで同行を志願し、結果として「大都市の市場デート(※ただし完全武装)」という非常にシュールな同行行脚が始まってしまったのだ。

周囲の通行人や商人たちは、全身ピカピカの神銀ミスリル鎧を纏った王国最強の騎士団長が、なぜかエコバッグを片手に真剣な顔で野菜を見つめているという異様な光景に二度見どころか三度見をし、そして恐怖のあまりスルスルと道を開けていく。

「わ、我が君、あそこに並んでいる赤い丸い物体は何ですか? 敵の魔導爆弾の一種でしょうか……?」

「トマトだよ! 普通の新鮮なトマトだ! 爆発しねぇよ!」

「なっ、これがかの有名な『トマト』……! なんと鮮やかな深紅の装甲……いや、果皮……!」

シルヴィアは感動したようにトマトを一つ手に取り、まるで宝物でも扱うかのように大切にエコバッグへと収めた。その真剣すぎる眼差しは、どう見ても高級な魔法鉱石を吟味する鑑定士のそれである。

しかし、こうして街に出てみると、昨夜までの「実家=絶対防衛要塞」という閉塞感に比べて、大都市の活気ある日常の空気は驚くほど新鮮だった。行き交う人々が笑い合い、店員が威勢よく商品を売る姿は、ライルがずっと求めていた「普通の日常」そのものだった。

「どうですか、我が君? 私の買い出しの手際は、主婦として合格点に達しているでしょうか?」

シルヴィアがクルリと振り返り、少しだけ誇らしげに胸を張った。フルプレートアーマーのせいで金属音がチャリーンと盛大に響いたが、その表情にはいつもの厳格な騎士団長としての顔ではなく、自分を褒めてほしいと訴えるような、どこか年相応の少女らしい無邪気さが滲んでいた。

その予想外の可愛らしい笑顔を間近で見た瞬間、ライルは胸の奥を不意に突かれたような感覚に襲われた。

(っ……! なんだよ、今の表情は……。いつもはあんなに威厳があるのに、こういうところで急に普通の女の子みたいな顔をするから反則だろ……)

ライルは慌てて視線を逸らし、恥ずかしさを隠すようにぶっきらぼうに答えた。

「あ、ああ……悪くはないさ。トマトの目利きも上々だしな。……その、なんだ、結構似合ってるぞ、その主婦っぽい格好も」

「――っ!!」

シルヴィアの動きが、ピタリと止まった。

彼女の兜の下の顔が、わずか一秒で茹でダコのように真っ赤に染め上げられる。心臓の鼓動が、フルプレートアーマーの隙間から「ドクン、ドクン」と大きな音を立てて漏れ聞こえてきそうだった。

(いま……我が君が、私を褒めてくださった……しかも、「似合っている」と……! これは帝国の歴史的快挙……いや、私個人の人生における最高潮の幸福ですわ……ッ!!)

感動のあまり全身を震わせるシルヴィアをよそに、ライルは照れくささを誤魔化すようにスタスタと歩き出した。

「ほら、ぼさっとするな! 次は肉屋だぞ! 肉屋!」

「はっ、はい! 喜んで追従いたしますわ、我が君!」

二人が大都市の市場の通りを並んで歩いていく。

周囲の視線こそ相変わらず集めていたものの、最初の気まずさや恐怖感は消え失せ、そこにはまるで、街を歩くごく普通の若い恋人同士のような、穏やかで甘酸やかな空気が流れていた。

こうして、大都市の喧噪の中での買い出しデートは、二人の距離を確実に、そして大きく縮めていくのだった――。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第52話、「帝国騎士団長、地方の大都市で庶民の買い出しに挑む! 初めてのお出かけデート(?)の件」いかがでしたでしょうか!

実家のある地方の大都市の市場を舞台に、フルプレートアーマー姿のまま真剣に買い出しに挑むシルヴィアと、彼女の意外な可愛らしい一面に少しずつドキッとしていくライルの「お出かけデート回」をお届けしました! 街の活気の中で見せる二人の微笑ましいやり取りや、少しずつ距離が縮まっていく甘酸っぱさを感じていただけたなら幸いです。

少しずつラブコメの糖度が上がってきた本作、次なる第53話では、いよいよ「ライルの子供時代の部屋の片付け」を通したさらなるキュン展開が待ち受けています……!?

それでは、また次回の第53話でお会いしましょう!

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