第48話:ライルの黒歴史ノート発掘!? 漆黒の翼の中二病妄想が「暗黒帝国の神聖予言書」に大誤解された件
勘違い過保護ラブコメ、第48話をお届けします!
前回の第47話では、フルプレートアーマーを纏ったまま真剣な顔でお煎餅をバリボリ食べるシルヴィアと、命がけの命乞いを「魂の誓約」と勘違いされたパパ、そしてすべてに絶叫するライルのカオスなティータイムをお届けしました! そして今回は、実家の自室に逃げ込んだライルを待ち受ける最凶のトラップ――「思春期の黒歴史ノート発掘」のエピソードをお送りします! ライルの精神が完全に粉砕される瞬間を、どうぞお見逃しなく!
それでは、第48話のスタートです!
「もうあんなカオスなリビングにはいられない……! 俺はこの自分の部屋の扉に鍵をかけ、二度と外には出ないぞ……!」
ヴェルナー伯爵家の二階にある自身の部屋に駆け込んだライル・フォン・ヴェルナーは、ガチャンと勢いよく鍵をかけ、ベッドの上にバタリと倒れ込んだ。
実家に帰れば少しは心が休まると思ったのに、現実は魔王軍の迎賓館と化している。パパは命がけの同盟を結ばされ、ママは最強の騎士団長にお煎餅を振る舞っている。こんな地獄絵図から逃れる唯一の方法は、完全に引きこもって気配を消すことだけだった。
しかし、その平穏(?)は、わずか数分で無残に打ち砕かれることになる。
ガタッ……! ドンッ!!
「我が君! お部屋に閉じこもっておられるなど、あまりにお労しい! ですがご安心ください、花嫁修業の一環として、この私が完璧な『お部屋の整理整頓および不審者掃討作戦』を遂行いたしますわ!」
窓の外、あるいは廊下から――正確にはどちらからともなく、フルプレートアーマーの重厚な金属音を響かせながら、シルヴィアが突如として部屋のドアを破壊して侵入してきた。
「なんで鍵がかかってる部屋のドアをブチ破るんだよ!! ここは俺のプライベートスペースだぞ!!」
ライルが青ざめて叫ぶが、シルヴィアはすでに戦闘モード(家事モード)に突入していた。
「お任せください! 掃除機をかけ、埃を一切残さず、この空間を聖域に仕立て上げてみせますわ!」
シルヴィアは部屋に備え付けられていた旧式の掃除機を手に取ると、王国最強の魔力と筋力をそこに注ぎ込んでしまった。
ヴゥゥゥン――ズゴォォォンッ!!!!
凄まじい超音速の真空吸引が発動し、掃除機は一瞬で部屋の空気をすべて吸い尽くし、壁のクロスをバリバリと剥ぎ取り、さらにはライルの学習机の引き出しを奥底まで吹き飛ばすほどの凄まじい暴走を見せた。
「掃除機じゃなくて小型のブラックホールだろそれ!! 俺の部屋の壁が剥がれたぞ!!」
「あっ! すみません、力の加減を誤りました……! ですがご安心ください、引き出しの奥にあったこの『厳重に封印された禁断の古文書』は無傷で保護いたしました!」
シルヴィアは、掃除機の暴風をくぐり抜け、瓦礫の中から一冊の古いノートを華麗にキャッチして見せた。
それは、黒い表紙の、使い古された革のノートだった。
それをひと目見た瞬間、ライルは全身の血が凍りつき、心臓が止まりそうになった。
「そ、それだけは……! それだけは絶対にこっちに返してくれぇぇぇ!!!」
ライルが凄まじいスピードで飛びかかり、ノートを奪い返そうとする。しかし、シルヴィアは華麗な暗殺回避機動でそれをひらりと交わし、ノートを自分の胸元にしっかりと抱え込んだ。
「ふふっ……! ライル様がそこまで必死に隠されるということは、これはただのノートではありませんわね……! 王国の未来を揺るがす、極秘中の極秘文書に違いありません!」
「違う! ただのゴミだ! 思春期のころに俺が現実逃避のために書いただけの、見るだけで死にたくなる黒歴史ノートだ頼むから燃やしてくれぇぇぇ!!」
ライルが床に這いつくばって血涙を流しながら懇願するが、シルヴィアはその必死の叫びを「高度な機密保持のためのカモフラージュ(偽装工作)」と完璧に誤解した。
彼女は神銀ミスリルの手甲でノートの表紙を厳かに開き、その最初のページに書かれた文字を、リビングにいる家族にも聞こえるように、澄んだ美しい声で朗読し始めた。
――『漆黒の闇に抱かれし我が名は、ルシファー・フォン・ヴェルナー。この世界はあまりにも退屈だ。だが、いつの日か我が右腕に宿る封印されし業火の竜が目覚めるとき、世界は我が足元にひざまずくだろう……ククク……』
リビングでくつろいでいた父・エルンストと母・ソフィーの手が、ピタリと止まった。
部屋の外の廊下で、ライルは頭を抱えたまま床に額を叩きつけ、文字通り絶命寸前のうめき声を上げた。
「やめろ……! やめてくれ……! それを読まれるくらいなら、今すぐ隕石に当たって死にたい……!!」
しかし、シルヴィアの朗読は止まらない。彼女はページが破れんばかりの熱量を込め、次のページを読み進めていく。
『――愚かなる者どもよ、震えて眠れ。我が統べる暗黒帝国は、いつの日かすべての星々を飲み込む。ただし、今日のところは母上に言われた宿題を終わらせねばならないので、征服活動は明日の放課後とする……』
シルヴィアは、そこで朗読をピタリと止め、ゆっくりと振り返った。その瞳には、かつてないほど深遠なる感動の光が宿っていた。
「……なんと……!」
彼女のフルプレートアーマーが、感動のあまりガタガタと震えている。
「な、なんと壮大にして、かつ人間味あふれるリアルな戦略計画なのでしょう……! 思春期のころの我が君は、すでに世界のすべてを見渡し、その強大な力をあえて『宿題』という名の日常の制約によってセーブし、来るべき日のために鋭気を養われていた……! これぞまさに、暗黒帝国建国の神聖予言書……『グランド・プロフェシー』ですわ!!」
リビングから、父エルンストの震え声が響いてきた。
「な、なんと……! 我が息子が思春期のころから、そんな世界規模の壮大な野望を……っ! いや、待て、ということは我がヴェルナー家は、昔からすでに世界征服の極秘拠点だったというのか……!?」
エルンストは青ざめながら、先ほど書いたばかりの遺書の続きに『追伸:我が家の次男の中二病のせいで世界が滅びかけました』と書き足し始めた。
母ソフィーは、優雅にお茶を飲みながらニッコリと微笑んだ。
「あらぁ、ライルも昔は可愛い詩を書いたりしていたのねぇ。『宿題を終わらせねばならないので征服活動は明日の放課後とする』なんて、とってもユーモアがあってステキじゃないの」
「ステキじゃねぇよ!!! 母さん頼むからその話をこれ以上広げないでくれ!! 死ぬ! 羞恥心で俺の魂が肉体から遊離して宇宙の彼方に消えかけてるんだよぉぉぉッ!!」
廊下の床を転げ回り、半泣きになりながら絶叫するライルの姿を眺めながら、シルヴィアは神々しいまでの笑顔でノートを胸に抱きしめた。
「我が君……! ご自身の過去の神聖なる予言書を隠されるとは、さすがは謙虚な皇帝陛下でいらっしゃいます! 私がこの予言書を肌身離さず持ち歩き、次の結婚式(第二回戦)の開会式で大々的に朗読させていただきますわね!」
「絶対に朗読するなァァァァァッ!!!! それを広めたら俺はこの街に二度と住めなくなる!! 頼むからそのノートをシュレッダーにかけてくれぇぇぇーーっ!!」
ヴェルナー伯爵家の二階から響き渡ったライルの悲痛な絶叫は、地方都市の青空をどこまでも高く突き抜け、羞恥と勘違いの歴史に新たな1ページを刻み込むのであった――。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
第48話、「ライルの黒歴史ノート発掘!? 漆黒の翼の中二病妄想が『暗黒帝国の神聖予言書』に大誤解された件」いかがでしたでしょうか!
ついに明かされてしまったライルの一昔前の「黒歴史ノート(中二病ポエム)」。それをシルヴィアが「暗黒帝国建国の神聖予言書」と完璧に誤解し、リビングの家族を巻き込んで盛大に朗読してしまうという、主人公の精神が完全に破壊されるドタバタ回をお届けしました! パパの遺書の追記や、ママのマイペースな感想も絶好調でしたね。
実家に逃げ込んでも一筋縄ではいかないライルの明日はどっちだ……!?
「黒歴史ノートの朗読シーンで腹筋が崩壊した」「シルヴィアの解釈力が斜め上すぎて尊い」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!
それでは、また次回の第49話でお会いしましょう!




