第45話:元暗殺者たちのアルバイト挑戦!? 普通の労働が恐怖の経済パニックを引き起こす件
勘違い過保護ラブコメ、本編の第45話をお届けします!
前回の第44話では、胃痛同盟の3人が深夜に開いた「普通の愚痴会(やけ酒)」が、元暗殺者たちの狂気的なフィルターによって「暗黒帝国の体制刷新のための極秘クーデター計画」に大誤解され、街中が戦時体制の戒厳令状態になるという大爆笑のエピソードをお届けしました! そして今回は、そんな騒動のあと、「いつまでも無職の自称・治安維持部隊でいるわけにはいかない!」と一念発起した元暗殺者たちが、街の一般店舗でアルバイトに挑戦するお話です! しかし、彼らが普通の労働を始めると、街の経済は想像を絶する恐怖のパニックへと突入していくのでした――!
それでは、本編第45話のスタートです!
黄金の要塞都市と化した街の朝。
ライル・フォン・ヴェルナーは、自分の部屋の窓から差し込む爽やかな朝日を浴びながら、コーヒーカップを片手に深く息をついていた。
「……ふぅ。昨日は愚痴会がクーデター計画にされるという斜め上の大惨事だったが、今日は特に何もない、ごく平和な朝だ……。このまま静かに一日が過ぎ去ってくれ……」
前日までのトラウマから少しでも心を落ち着かせようと、ライルはのんびりとティータイム(※今回は本当に普通のティータイム)を満喫していた。
しかし、その平穏は、街の商業エリアで突如として巻き起こった「ある大事件」によって、わずか数分で無残に打ち砕かれることになる。
――その頃、街の中心部にある大繁華街。
ごく普通の青果店(八百屋)や、おしゃれなオープンカフェが立ち並ぶ通りに、黒マントを脱ぎ捨てて「普通の布のシャツとエプロン」を装着した元暗殺ギルド「黒い夜の翼」の男たちが、ずらりと整列していた。
リーダー格の男が、血走った目で部下たちに熱く語りかける。
「おい、お前たち! 我々はこれまで庭木の剪定、ゴミ捨て、そして極秘のクーデター協議を通じて、我が君(ライル様)の平穏を守ってきた! しかし、いつまでも無職のままで街の経済におんぶにだっこでは、暗黒帝国の名折れというもの……! 本日より、我々は一般店舗のアルバイトを通じて社会の仕組みを学び、街の経済活動の底上げに貢献するのだ……ッ!」
「「「了解――ッ!!」」」
男たちは一糸乱れぬ敬礼を決め、それぞれ割り振られた店舗へと散っていった。
――それが、街の経済を破滅の淵へと突き落とす「恐怖のアルバイト・テロ」の幕開けであるとは、この時の誰も(元暗殺者本人たち以外は)知る由もなかった。
まず、街の角にある老舗の八百屋「トマトの里」に入った男の場合。
店の親父さんが「おっ、にいちゃん、今日からバイトの……」と声をかけた瞬間、男はビシッと直立不動になり、こう心に誓った。
(よし、店主殿に安心してもらうため、まずは『一般市民の爽やかな笑顔』で接客をしなければならない……!)
彼は顔の筋肉を無理やり引きつらせ、客の主婦に向かって「いらっしゃいませ」と微笑みかけようとした。
しかし、長年の暗殺者生活で染みついた「ターゲットの背後を取り、一瞬で息の根を止める瞬間の凍てつくような殺気」と「全盛期の死神のホラー笑顔」が、彼の顔面を完全に支配してしまった。
男の顔に浮かんだのは、満面の笑み――ではなく、
「真夜中の暗闇で毒針を突き立てる直前の、人間味ゼロの殺意に満ちた死神のスマイル」だった。
さらに、彼の目は獲物を狙う鷹のようにギラギラと見開き、喉の奥から「……フッ……今日も新鮮な野菜を生け捕りにするぜ……ククク……」という低い地縛霊のような笑い声が漏れ出している。
「ひっ……!! 殺人鬼よーーっ!! 青果店に暗殺者が紛れ込んだぁぁ――っ!!」
店に来ていた主婦は、買ったばかりの大根をその場で放り出し、文字通り腰を抜かして失神した。
店主も腰を抜かし、「わ、我が青果店がテロリストに占拠されたぁ……!」とカウンターの裏でガタガタと震え上がった。
一方、街の人気のオープンカフェでウェイターのアルバイトを始めた別の男の場合。
「お冷やをお持ちしました」と客のテーブルに近づいた男は、周囲の注文を驚異的なスピードで処理しようと、長年の暗殺スキルである「超音速の動体視力と瞬発力」を全開で発動させてしまった。
客が「ええと、ブレンドコーヒーを一つ……」と言いかけた瞬間、
シュパッ!! と音速を超えるスピードでオーダー用紙にペンが走り、わずか0.1秒後には、カウンターから沸騰したての熱湯が入ったコーヒーカップが、目にも留まらぬステルス機動(音もなく気配を消した移動)によって、客の鼻の前に完璧な角度で配置されていた。
客はあまりの超光速サービスと、自分の背後にいつの間にか「完全無音の殺気」で立っていたウェイターの姿に心臓が止まりそうになり、恐怖のあまり「ひぃっ!」と叫んで、財布も上着もすべてその場に置き去りにしたまま、猛ダッシュでカフェから逃げ出した。
「ふッ……注文の迅速な処理、および完全無音の配膳完了。……お客が感極まって財布を置いて逃げ出すほどの感動を与えられたな」
男は満足そうに一人で頷いていた。
そんな「元暗殺者たちのアルバイト挑戦」による阿鼻叫喚の惨劇は、瞬く間に街中の商店街へと伝播した。
本屋では、本をレジに通すスピードが音速すぎてバーコードリーダーが追いつかずに発火し、洋服店では、客の採寸をしようとした男の素早すぎる手さばきが「一瞬で服を切り裂く暗殺の居合抜き」に見えてしまい、試着室から客が裸足で逃げ出すなど、街の経済活動は完全に麻痺し、パニックのるつぼと化していった。
その惨状を聞きつけ、中央広場へと駆けつけたルキウスとアルベルトは、目の前で繰り広げられている地獄絵図を見て、その場で崩れ落ちそうになった。
「なっ……なんだこれは……!?」
ルキウスは青ざめた顔でメガネを落とし、頭をかきむしった。
「彼らはただのアルバイトとして一般の労働市場に参入したはずだ……! なのに、なぜすべての労働が『暗殺スキル』と『テロ行為』に変換されているんだ……!? 私の経済学の予測では、こんな街の崩壊モデルはどの教科書にも載っていないぞ……ッ!!」
アルベルトも冷や汗をだらだらと流しながら、震える手で懐から特製の胃薬を取り出し、一気に飲み干した。
「……まったく、恐ろしいことだ。普通の労働をさせようとしただけで街の経済が壊滅しかけるとは……彼らにとって、『働くこと』イコール『敵陣の制圧』なのだろうか……」
二人が絶望のあまり地面に膝をついているその横で、シルヴィアは頬を赤らめながらうっとりと呟いていた。
「あぁ……! 我が君の街の経済を支えるため、元暗殺者たちが自ら泥を被り、命がけの労働によって商工業の活性化と緊張感を保ってくださっている……! なんという自己犠牲の精神、そして素晴らしい商工会への忠義ですわ……! 私、感動で胸がいっぱいです!」
「どこが商工会の活性化だぁぁっ!! 街の経済が完全に崩壊して治安維持どころか商業パニックになってるだろ!!」
自宅のリビングからその凄まじい惨状を目撃し、コーヒーカップを盛大にひっくり返したライルが、ボロボロのパジャマ姿のまま外へ飛び出し、青空に向かって全力で絶叫した。
「おい、あのバカどもを今すぐ全員クビにしろ――っ!! アルベルト! ルキウス! 手伝ってくれ、このままじゃこの街の全店舗が営業停止になって破産する――っ!!」
ライル、アルベルト、ルキウスの三人が、街の経済と自分たちの胃袋を守るため、恐怖に震えながら元暗殺者たちの暴走を止めるべく全力疾走で駆け出していく――。
黄金の要塞都市の青空には、今日も今日とて、ライルの悲痛な叫びと、胃痛同盟の終わらない苦難のドラマがパーンと盛大に響き渡るのだった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
本編第45話、「元暗殺者たちのアルバイト挑戦!? 普通の労働が恐怖の経済パニックを引き起こす件」いかがでしたでしょうか!
「いつまでも無職でいるわけにはいかない!」と一念発起した元暗殺者たちが、街の一般店舗でアルバイトを始めた結果、接客のホラー笑顔で客を気絶させ、音速のレジ打ちとステルス袋詰めで街中を経済パニックに陥れてしまうという大爆笑のエピソードをお届けしました! ルキウスのエリートとしての経済学的絶望と、アルベルトの胃薬コンボも絶好調でしたね。
ライルたちの胃袋と街の平穏の運命やいかに……!?
そして、次回の第46話からは、ついに新章突入&新しいキャラクターが登場します!
物語がさらにカオスに、そして賑やかになっていく『隠れ過保護ラブコメ』の新たな展開を、どうぞお楽しみに!
「元暗殺者のアルバイトがテロすぎて腹筋崩壊した」「次回からの新キャラ登場がめちゃくちゃ気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!
それでは、また次回の新章・第46話でお会いしましょう!




