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第4話:王国最強の騎士団長は、恋する部下の嫉妬を許さない

勘違い過保護ラブコメ、いよいよ第4話です。

今回は外や店ではなく、ついに「周囲の人間」が物語に参戦! シルヴィアに恋心を抱く真面目な部下が、二人の仲を裂こうと(勝手に)嫉妬を燃やしてやってきますが……? 果たしてライルの胃痛の運命やいかに!

それでは、第4話をお楽しみください!

「――ふぅ。やっぱり、木漏れ日の下で風に吹かれながら読む本は最高だな」

辺境の街の小さな公園のベンチ。

ライル・フォン・ヴェルナーは、前回の雑貨屋事件(店半壊)で何とか死守したブランケットを膝にかけ、穏やかな読書タイムを満喫していた。スライム、薬草、フライパンと、命の危機に直面し続けた彼にとって、この静かなひとときは砂漠のオアシスに等しい。

(そうだ、これだよ。俺が求めていたのはこういう平和な生活なんだ……。誰も襲ってこない、誰も大地を更地にしない、ただの平和な日常……!)

ライルが心の中で深くうなずき、ページをめくろうとした、その時だった。

「――見つけましたぞ、団長!!」

ガシャァァン! と、公園の砂利を激しく踏みつける足音が響いた。

ライルがビクッとして顔を上げると、そこには見慣れない男が立っていた。

年はライルと同じくらいか少し下。王都の制服に身を包み、腰にはピカピカの剣を下げた、いかにも「真面目でエリート気質な若い騎士」といった風貌の青年だった。その顔には、怒りと焦りと、そして深い絶望が入り混じった複雑な感情が浮かんでいる。

――いや、正確に言えば、その青年の「すぐ背後」に、いつもの神銀フルプレートアーマーをまとったシルヴィアが、まるで不気味な影のようにピタリと張り付いていた。

「……レオン? あなた、なぜここに?」

シルヴィアは、バイザーの向こうから冷ややかな声を放った。彼女の視線は、愛しいライルを邪魔したこの若い部下に対して、普段の仕事仲間に向けるそれとは到底思えない、底冷えするような殺気を帯びている。

「なっ、なぜって……! 団長がここ数日、理由も告げずに王都の直轄本部を空け続け、こんな辺境の田舎町でずっと行方不明になっていたからです! 私たち騎士団の部下たちがどれほど心配したか……!」

レオンと呼ばれたその青年は、悔しそうに拳を握りしめた。しかし、彼の視線がシルヴィアの隣にいるライルへと移った瞬間、その目は怒りから「異様な憎悪」へと切り替わった。

(ん……? なんか俺、めちゃくちゃ睨まれてないか?)

ライルが冷や汗を流しながら身を引くと、レオンは一歩前に出て、ライルを指さしながら声を荒げた。

「貴様だな……!!」

「えっ、俺?」

「そうだ! 噂には聞いていたが、まさか本当だったとは……! 王国最強と謳われ、全軍の憧れであるシルヴィア団長を骨抜きにし、こんな辺境の地に縛り付けている、その卑劣なヒモ男というのが貴様だな!!」

「ヒモじゃない! 俺は被害者だ!!」

ライルが反射的に叫ぶと、レオンはさらに顔を真っ赤にしてまくし立てた。

「ふざけるな! 団長ほどの御方が、なぜこんな一般市民の男の世話を一日中焼いているんだ! きっとお前は、卑怯な催眠術か、あるいは王国を揺るがすような脅迫のネタでも使って、団長を洗脳しているに違いない……! さあ、今すぐ団長から離れろ、この外道が!!」

(こいつ……! 言いたい放題言いやがって……!)

ライルも言い返そうと口を開きかけたが、その瞬間、周囲の空気が一瞬で「絶対零度」に凍りついた。

ゴゴゴゴゴゴ……!!

地を這うような、重く、底知れない殺気。

ライルの背後にいたはずのシルヴィアが、いつの間にか一歩前に出ていた。彼女の全身から噴き出す魔力は、周囲の木々の葉を散らし、公園の地面に細かなひび割れを作っていく。

そのバイザーの奥の瞳は、怒りを超えて、もはや冷酷な死神のそれだった。

「……レオン」

「っ……! 団、長……?」

「いま、貴様は何と言ったか?」

シルヴィアの低く這うような声に、レオンはゴクリと喉を鳴らした。普段は誰よりも慕う敬愛の上司であるはずの彼女から向けられた殺気に、レオンの足が本能的な恐怖でガタガタと震え出す。

「わ、私は……その男が団長をたぶらかして――」

「――我が最愛の救世主であり、この全宇宙で最も尊く、ガラス細工のようにか弱いライル殿に向かって……その汚い声で、よくも無礼な言葉を吐いてくれたな」

ガシャリ、とシルヴィアが国家予算級の大剣の柄に手をかけた。

「だ、団長……? なぜ、そんな一般人の男のために、部下である私を……っ!?」

「貴様のような無礼者が生きて呼吸をしていること自体、ライル殿の美しい精神を汚す公害だ。……今すぐ、その首を王国の大地ごと微塵切りにしてやろう。覚悟しなさい」

(殺す気だ!? こいつ、ガチで自分の部下を殺す気だぞおい!!)

ライルは血の気が引く思いで飛び出し、シルヴィアの鎧の腕にしがみついた。

「まっ、待てシルヴィア!! 落ち着けって! こいつはただお前のことを心配して来た部下だろ!? 殺すな! 絶対に殺すな!」

ライルが必死に制止すると、シルヴィアの表情は一瞬で氷から春の陽気のように和らぎ、彼女はガシリと重い手甲でライルの手を優しく包み込んだ。

「……ああ、ライル殿。なんと慈悲深いのでしょうか。ご自身の尊厳を盛大に侮辱したこの愚か者の命すらも、慈愛の心で救おうとなさるなんて……。貴方様のその汚れなき聖母のようなお心に、このシルヴィア、再び涙が溢れて止まりません……!」

(どこをどう見たら俺が聖母に見えるんだよ!! あと俺は自分の平穏を守りたいだけだ!!)

一方で、そのやり取りを目の当たりにしたレオンの精神は、完全に崩壊していた。

「だ、団長が……あの誰もが恐れる最強の騎士団長が、見知らぬ一般男の言いなりになって……しかも、私の処刑をその男の慈悲によって免れただと……!?」

レオンは頭を抱え、文字通り白目をむいてその場に崩れ落ちた。

「そんな……私の片思いは……憧れの団長は、あんな怪しげな一般人に完全に骨抜きにされて……ぐはっ……!」

精神的なショックのあまり、レオンはそのまま白目をむいて意識を失い、芝生の上に倒れ伏してピクリとも動かなくなった。

「ふっ、蚊帳の外で勝手に自滅するとは、愚かな部下を持ったものですな。ライル殿、お見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした」

シルヴィアは綺麗に気絶したレオンを一瞥すらせず、うっとりとした表情でライルを見つめた。

ライルは倒れたレオンを見下ろし、そして自分の頭を抱えながら、遠い目をして呟くのだった。

――もうダメだ。この街にいる限り、俺の周りの人間は全員おかしくなるか気絶する運命さだめなんだ……。

青空の下、不憫な次男の胃痛は、今日も限界を突破し続けるのであった。

後書き

最後までお読みいただきありがとうございます!

第4話、「恋する部下の嫉妬と、容赦なくだいすきアピール」いかがでしたでしょうか。

ついに登場した一般部下・レオンの片思いと嫉妬が、シルヴィアの重すぎる愛によって秒速で粉砕されるシュールな回となりました!

ライルの胃痛は癒える暇がありませんが、次回もさらに新しい勘違いとドタバタが巻き起こります。

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