第35話:最強の暗殺者(勘違い)乱入!? ウェディング暴走が盛大にぶち壊れる件
勘違い過保護ラブコメ、本編の第35話をお届けします!
エリート監査官ルキウスを「胃痛の桃園の誓い」で完全に仲間に引き入れ、いよいよ最高潮を迎えた黄金の要塞都市。しかし、シルヴィアによるウェディング暴走(戴冠式)は止まることを知らない……かに思えたその時!
平和(?)な要塞都市に、いかにも怪しげな「最強の刺客たち」がド派手に乱入してきます! 果たして、結婚式の運命やいかに!?
それでは、本編第35話のスタートです!
黄金に輝く防衛壁に囲まれた要塞都市の中心部。
真っ赤なレッドカーペットが敷き詰められた特設ステージの上で、王国最強の騎士団長・シルヴィアは、純白のウェディングベールを揺らしながら、うっとりとした笑みを浮かべていた。
その目の前で、ライルは両手を縛られているわけではないが、絶望のあまり地面に膝をつき、生気を失った目で虚空を見つめている。
「さあ、我が君……いよいよ永遠の愛を誓い合う時ですわ。住民の皆様の祝福を受け、この特製の純金玉座の前で、私たちの新しい人生を始めましょう!」
「誰が玉座で人生を始めるか……! 頼むから誰か、この結婚式を止めてくれ……!」
ライルの悲痛な叫びは、熱狂的な歓声を上げる住民たちの「皇帝陛下万歳――!!」という大合唱にかき消されていく。
その様子を、特設ステージの端で特製の胃薬を一緒にあおっていたアルベルトとルキウスが、遠い目で眺めていた。
「……アルベルト副団長。私の知る王国の法律や治安維持の常識では、このような私的な婚姻式に住民が強制動員され、黄金の要塞まで築かれる事態は想定されていません」
ルキウスが青白い顔で呟く。アルベルトは静かに頷き、空になった胃薬の袋をポケットにしまった。
「ふっ、ルキウス君。君もようやく分かってきたようだね。この街では、『常識』という言葉を発した瞬間に負けなのだよ。……おや?」
その時だった。
突如として、雲一つない黄金の要塞都市の青空が、轟音と共に切り裂かれた。
「な、なんだ……!?」
「地響きか……!? 敵襲か――!?」
住民たちがパニックを起こし、ザワザワとざわめき立つ。
次の瞬間、特設ステージの真上の空気が歪み、上空の防衛壁の屋根を盛大に突き破って、黒マントを身にまとった怪しげな一団がド派手に舞い降りてきたのだ。
ドンッ!! と凄まじい着地音が響き、レッドカーペットの真ん中に砂煙が巻き起こる。
「ふははははっ……!!」
砂煙の中から、不気味な笑い声を響かせながら、中二病全開の装飾が施された仮面をつけた男がゆっくりと姿を現した。彼の背後には、いかにも物騒な短剣や毒薬の小瓶をジャラジャラと下げた、黒装束の部下たちがズラリと並んでいる。
「聞こえているぞ、自称・暗黒帝国の皇帝ライル! そして王国最強の騎士団長シルヴィアよ!」
仮面の男は、周囲のビビり散らかしている住民たちを無視して、大げさに両手を広げた。
「我らは裏社会の影に生きる最強の暗殺ギルド、『黒い夜の翼』! 辺境の地で勝手に帝国を築き、我が物顔で戴冠式をやっているという噂を聞きつけ、この暗黒の支配権を奪いにやってきたのだ……! さあ、その首を差し出せ――ッ!!」
――シーン。
あまりにも唐突すぎるテロリスト(?)の乱入に、周囲の空気は一瞬で凍りついた。
住民たちは「ひっ……! 闇の組織の刺客だ……! 皇帝陛下の戴冠式を邪魔しにきやがったぞ……!」と頭を抱えてパニックを起こす。
一方、ライルは、目の前に現れた怪しい黒マント集団を見て、パッと顔を輝かせた。
(な、なんだこいつら……!? 暗殺者……だと……!? つまり、こいつらが俺を狙いに来たってことは……この狂った結婚式を強制的に中断させる絶好のチャンスじゃねぇか……!!)
ライルの中で、わずかな希望の光が爆誕した。
彼は慌てて立ち上がり、刺客のリーダーに向かって全力で声を張り上げた。
「おっ、お前ら! よくぞ来てくれた!! そうだ、俺はこの街の暗黒帝国の皇帝だ! 欲しけりゃその金ピカの玉座も財宝もくれてやるから、今すぐこいつらをどうにかしてくれ――っ!!」
ライルがまさかの「暗殺者への全面降伏(および身代わりの差し出し)」を叫んだため、仮面の男は「なっ……!? まさか、これほどの罠だとでもいうのか……!?」と一瞬たじろいだ。
だが、その空気――いや、ライルのその発言は、たった一人の女性の逆鱗に完全に触れてしまった。
「……いま何とおっしゃいましたか?」
氷点下よりも冷たく、しかし底知れぬ殺気を帯びた声が響いた。
刺客たちの背後で、頭に純白のウェディングベールをつけたシルヴィアが、すぅーっと一歩前に出た。その紫紺の瞳は、怒りと愛憎が入り混じった恐ろしい輝きを放っている。
「ひっ……! なんだあの女は……! 王国最強の騎士団長だと……!?」
仮面の男が冷や汗を流しながら後ずさりする。
シルヴィアは、ウェディングドレスの裾をひらりとなびかせ、音もなく刺客たちの間合いへと踏み込んだ。
「我が君が、自らの口で『帝国の皇帝だ』とお認めになられた……。それはつまり、この盛大な戴冠式が、正真正銘の国家の儀式であることを意味します」
「は、はあ……? 何を言って――」
「それを……! 私たちの、人生で一番最高で神聖な結婚式のクライマックスを……! どこの馬の骨とも知れない不審者風情が、頭から降ってきて盛大に邪魔をするなど……! ――絶対に、許せませんッ!!!」
ズガァァァァンッ!!!!
すさまじい衝撃音と共に、特設ステージの床が四散した。
剣を抜く暇すらなかった。シルヴィアが放った圧倒的な気の奔流(および愛の鉄拳)は、黒マントの刺客リーダーを正面から捉え、マッハのスピードで黄金の防衛壁の彼方へと吹っ飛ばした。
「ぎゃあああああ――っ!?」
星屑のように夜空の彼方へ消えていくリーダーの悲鳴が、遠くで小さくこだまする。
残された部下の暗殺者たちは、ボスが一瞬で消滅した光景を目の当たりにし、腰を抜かしてその場でひっくり返った。
「ば、馬鹿な……!? 我がギルドの最高幹部が、一撃で……!? なんて恐ろしい防衛力だ……この組織には絶対に勝てない……っ!!」
部下たちは恐怖のあまり武器を投げ捨て、次々とその場で土下座した。
「も、申し訳ありませんでしたぁぁっ!! 私どもの勘違いでした! どうかお慈悲を――っ!!」
「お前たちが邪魔をしたのは、私の結婚式です!」
シルヴィアが殺気全開の笑顔で部下たちに迫る。
「ひぃぃっ! 許してください! これから私たちも、この暗黒帝国の末端として忠誠を尽くしますからぁぁっ!!」
「誰が暗黒帝国だ! 勝手に部下にすんな!」
ライルが必死にツッコミを入れる横で、シルヴィアは部下たちを一瞥すると、「ふん、我が君の結婚式の素晴らしい引き立て役にはなりましたね」と冷たく言い放ち、すぐにパッと表情を華やかに切り替えた。
彼女はくるりと振り返り、まだポカンと口を開けているライルのもとへと、うっとりとした足取りで歩み寄ってきた。
「さあ、我が君! 虫けらどもは綺麗に片付きました! 式の続きを始めましょう!」
「……は?」
ライルは呆然と聞き返した。
「刺客すらも私たちの結婚式の最高のスパイスにしてしまうなんて、さすがは我が君ですわ! さあ、永遠の愛の誓いを……!」
「いや待て待て待て待て!! 結婚式は!? 今の乱入でレッドカーペットもステージもボロボロだぞ!? 中止だ中止!」
ライルが必死に周囲の惨状(崩壊したステージと土下座する暗殺者たち)を指さして抗議する。
しかし、シルヴィアは小首をかしげ、満面の笑みでこう言い放った。
「あら、大丈夫です。今回の式典会場は少し壊れてしまいましたが、我が君の愛の強さがあれば問題ありません。――それでは、さらに盛大な『第二回・結婚式(戴冠式)準備計画』をただちに発令いたします!」
「準備が二回戦に突入するなーーっ!!」
ライル絶叫のツッコミが、再び黄金の要塞都市の空高くへパーンと響き渡る。
刺客の乱入という最大のハプニングですら、シルヴィアの全肯定フィルターの前では「次の結婚式の準備期間」へと華麗に変換されてしまい、ライルの終わらない胃痛の日々は、さらなる壮大なスケールへと突入していくのだった――。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
本編第35話、「最強の暗殺者(勘違い)乱入!? ウェディング暴走が盛大にぶち壊れる件」いかがでしたでしょうか!
ついに訪れた結婚式(戴冠式)の最中、まさかの「勘違い暗殺ギルド」がド派手に乱入してきましたが、シルヴィアの愛の鉄拳によって秒速で宇宙の彼方へ吹き飛ばされるという爆笑の展開をお届けしました! 式自体はめちゃくちゃになったものの、シルヴィアの暴走はさらに「第二回戦」へ突入するという絶望的なオチも決まりましたね。
ライルのツッコミと苦労はどこまで続くのか……!?
「刺客が秒速で退場してて草」「まさかの結婚式準備二回戦突入にライルがかわいそうすぎて面白い」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!
それでは、また次回の第36話でお会いしましょう!




