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第34話:王国監査官ルキウスの絶望!? 胃痛の桃園の誓いと、新たな同志誕生の件

登場人物

ルキウス・フォン・グランツ

王国中央財務局より派遣された特命監査官。非常に優秀で法律と数字を愛するエリート官僚。辺境の街の要塞化と異常事態を目の当たりにして三半規管を破壊され、秒速でエリートのプライドを粉砕されて「胃痛同盟」の門を叩く悲劇の男。

前書き

勘違い過保護ラブコメ、本編の第34話をお届けします!

王都の中央財務局から、不正を許さない厳格なエリート特命監査官・ルキウスが単身突撃してきましたが、この街の常軌を逸した狂気(黄金の要塞都市&シルヴィアのウェディング暴走)の前に、彼の常識は一瞬で粉砕されてしまいました。

そして男たちは、夕日を背に、胃薬を片手に、新たな絆を誓い合う――!?

それでは、本編第34話のスタートです!

「あ……ああ……私の知る経済学が……国家財政の仕組みが音を立てて崩れていく……これでは監査どころか、私の三半規管と精神が……っ!」

王都から意気揚々とやってきた特命監査官・ルキウス・フォン・グランツは、黄金の要塞都市と化した街並みと、庭に転がる闇のブローカーたちと泥棒ピラミッド、そして頭にウェディングベールをつけた狂気の騎士団長・シルヴィアを目の当たりにし、ついに白目を剥いて地面に突っ伏した。

「おい! 監査官が壊れたぞ!! しっかりしろルキウス!」

ライルが青ざめて肩を激しく揺さぶるが、ルキウスの口からは「……監査法が……私のエリート人生が……」といううわ言しか漏れてこない。

その様子を遠巻きに眺めながら、シルヴィアはうっとりとした表情で頬を染めた。

「あぁ、王都から来たエリート様も、我が君のあまりの圧倒的なカリスマ性と、この盛大な結婚式(戴冠式)の気迫の前に、感動のあまり平伏してしまいましたね……! 本当に素晴らしい一日ですわ、我が君!」

「平伏してんじゃねぇよ失神してるんだよ!! 誰かお医者さんを呼べ! いや、胃薬をもう一包み持ってこい!!」

ライル絶叫のツッコミが響き渡る中、ガシャリと重厚な鎧の音を響かせながら、王国騎士団副団長・アルベルトが静かに歩み寄ってきた。

アルベルトは、失神して痙攣しているルキウスの姿をじっと見つめ、そして、深く、それはもう慈悲深い笑みを浮かべた。

「……ライル殿。慌てないでください。彼もまた、私と同じ『深淵』を覗き見たのです」

「深淵って言うな! エリート官僚が一日で廃人になっちまっただろ!」

アルベルトは懐から特製の胃薬を取り出すと、ルキウスの硬く握りしめられた手にそっと乗せた。

「……ルキウス君。聞こえているなら、起きなさい。君が抱いていたその正義感も法律への信仰も、この街の前では紙くず同然だ。だが、絶望するにはまだ早い。私たちには、『仲間』がいる」

その言葉に反応したのか、ルキウスの指先がピクリと動き、やがて彼はうわ言のように呟きながら、フラフラと上半身を起こした。

「……仲間……? 私の……エリート人生を返せ……」

「さあ、立ちなさい。一人でその胃痛を抱える必要はないのだよ」

アルベルトに優しく肩を支えられ、ルキウスは虚ろな目で辺りを見回した。そして、目の前で頭を抱えて頭をかきむしっている一般人・ライルの姿をとらえた。

「君が……この街の首謀者……ライル・フォン・ヴェルナーだな……」

「だから首謀者じゃねぇ! 俺は被害者だ!」

ルキウスはふらふらと立ち上がると、なぜか急に真面目な顔つきに戻り、そして――フッと、この世のすべての理不尽を悟ったような、美しくも哀しい笑みを浮かべた。

「……なるほど。よく分かりました。王都にいた頃の私は愚かだった。法律さえあれば世界は正しく回ると信じ込んでいた……だが、この街の狂気、そしてあなた殿が背負っている苦難の重さに比べれば、私の悩みなどちっぽけなものだ」

「急に悟りを開くな! 怖いからやめろ!」

ルキウスは胸に手を当て、まっすぐにライルを見つめた。

「ライル殿。私を、あなたのその過酷な戦いに混ぜてほしい。いや、『秘密の胃痛同盟』の末席に加えてもらいたい!」

「勝手に同盟に入るな! 俺はいつの間にか組織のトップみたいな扱いになってるけど、本当に入りたいやつは誰もいねぇよこんな地獄のサークル!」

だが、アルベルトは満足げに頷いた。

「素晴らしい。これで我が胃痛同盟も三名体制となりました。……ライル殿、折角ですから、あの夕日を背に、あの黄金の要塞の片隅で、例の儀式を執り行おうではありませんか」

「例の儀式ってなんだよ! やらねぇよ!」

「さあ、遠慮しないでください」

アルベルトと、すっかり洗脳……いや覚醒したルキウスが、両側からライルの両腕をガッチリとホールドした。

「ちょっ、まっ、離せ! なんだこの無理やり連行されるシチュエーションは!」

ライルがジタバタと暴れるが、王国騎士団の副団長と王都のエリート監査官という、スペックの無駄遣いすぎる二人のガチ固定を振り解くことはできなかった。

こうして、黄金の要塞都市が夕日に染まり始める頃――。

街の片隅の特設ステージ(?)にて、三人の男たちが横一列に並び立つという、最高にシュールな光景が完成した。

アルベルトが懐から取り出したのは、特製胃薬の瓶。

ルキウスは自分の手帳を放り捨て、代わりに胃薬の小袋をしっかりと握りしめている。そしてライルは、両側をガッチリ押さえられたまま、絶望的な顔で天を仰いでいた。

「おい、本当にやるのかこれ……!」

「当然です、ライル殿。男に二言はありません」

アルベルトが厳かに宣言し、ルキウスがそれに続く。

三人はそれぞれの手に胃薬を掲げ、夕日に向かって高らかに、そして心からの絶叫をもって誓いの言葉を唱えた。

「「「我ら、生まれた日は違えど、胃に穴の空く苦しみと絶望を分かち合うことを誓う――!!」」」

それはもはや三国志の英雄気取りを通り越し、完全なる「胃痛戦士たちの聖戦ジハード」の契りであった。

夕暮れの黄金の壁に、三人の男たちの哀愁漂う声が盛大にこだまする。

その感動的(?)な光景を、少し離れたレッドカーペットの上から眺めながら、シルヴィアは頭のウェディングベールをキュッと直し、うっとりとした表情で両手を胸の前で組んだ。

「あぁ……なんと崇高で、美しい血盟の儀式なのでしょう……!」

シルヴィアの瞳に、ハートマークがギラギラと浮かび上がる。

「王都の厳格な監査官様までをも我が君の陣営に引き入れ、国家の財務・司法中枢のすべてを『秘密の同盟』という名の絆で一つに結びつけてしまうなんて……! 我が君、あなたはやはり、この世界をその愛と統率力で完全に支配するお方ですわ……! 私、胸が張り裂けそうです!」

「違うわぁぁぁっ!! 世界なんて支配しねぇよ! ただの胃痛持ちの傷の舐め合いだぁぁっ!!」

ライルが声を限りに絶叫する中、アルベルトとルキウスは固い握手を交わし、互いの健闘(胃の無事)を祈り合うのだった。

こうして、王国からやってきたエリート監査官は、見事に「胃痛の桃園の誓い」を完遂し、ライルの終わらないカオスな日常の新たな相棒として、永遠にその名を刻むことになったのだった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

本編第34話、「王国監査官ルキウスの絶望!? 胃痛の桃園の誓いと、新たな同志誕生の件」いかがでしたでしょうか!

王都からやってきたエリート監査官・ルキウスが、黄金の要塞都市の狂気によって常識を粉砕され、最終的にライル、アルベルトと共に夕日の中で「胃痛の桃園の誓い」をガチで交わしてしまうという、最高潮のシュールさと笑いをお届けしました! シルヴィアの勘違いフィルターも絶好調ですね。

ライルの胃の限界はどこまで続くのか……!?

「まさか本当に桃園の誓いをやるとは思わなかったw」「ルキウスの落ちぶれっぷりと真面目さが最高すぎる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!

それでは、また次回の第35話でお会いしましょう!

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