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第32話:黄金の要塞都市に響く戴冠式!? ウェディングベールが舞う財宝編フィナーレの件

勘違い過保護ラブコメ、ついに「財宝編」のクライマックスとなる第32話をお届けします!

実家から届いた朝貢品(財宝)に始まり、泥棒ピラミッド、闇のフリーマーケット、そして街の黄金要塞化へとエスカレートしてきたこの大騒動。迎える最終話は、すべての要素が綺麗に(盛大に)回収され、カオスとラブコメのエネルギーが最高潮で大爆発します!

ライルの悲鳴とシルヴィアのウェディングベールが舞い踊る、財宝編フィナーレの幕が今、上がります!

それでは、第32話のスタートです!

黄金に輝く防衛壁に囲まれた、要塞都市へと変貌を遂げた辺境の街。

その中心部からライルの自宅の玄関先にかけて、いつの間にか一寸の隙もないほど真っ赤な「レッドカーペット」が優雅に敷き詰められていた。

「……なんだこれ」

朝、家から一歩外に出たライルは、目の前に広がるレッドカーペットと、その両脇でピシッと直立不動で並び立つ武装した街の住民たちの姿を見て、完全に魂が抜けたような声を漏らした。

「おはようございます、我が君!」

住民の代表として最前列に立っていた商会の主人が、感激に震えた声を張り上げた。

「昨夜一晩で要塞化を完了させましたが、それだけでは我が街の主であるあなたに対する忠誠の証として足りません! 本日ここに、我が街を『暗黒帝国の首都』へと正式に昇格させ、それを祝して――盛大な『戴冠式(お祭り)』を執り行うことを宣言いたします!」

「誰が暗黒帝国の首都だ!! 勝手に街の名前を変えるな!!」

ライルは反射的に絶叫したが、住民たちはそれを「謙虚な君主の照れ隠し」と勝手に解釈し、むしろ感動の涙を流して拍手喝采を送った。

「さあ、ライル様! こちらへお進みください! 我々が血汗を流して作り上げた『特製の王冠』と『純金の玉座』が、あなたをお待ちしております!」

住民たちがゴロゴロと重そうな車輪のついた、ルビーやサファイアがこれでもかと埋め込まれた悪趣味なほど豪華な玉座を引っ張ってきた。さらに、別の住民が頭の上からピカピカと光る巨大な王冠をかぶせようと突進してくる。

「玉座になんか座るかぁっ! 王冠も被せんな! 俺は一般人だ! 帰れ! 今すぐ解散しろ!」

ライルが全力で両手をブンブンと振り回し、必死の形相でその場を逃げ回る。

だが、その狂騒の只中を、レッドカーペットを優雅な足取りで踏みしめながら、一人の女性がすぅーっと歩み出てきた。

王国最強の騎士団長・シルヴィアである。

彼女はいつも身に纏っている騎士の制服ではなく、どこから調達してきたのか、裾が地面を引きずるほど長く、純白のレースと刺繍が施された――紛うことなき「特注のウェディングドレス」を身に纏い、頭にはきらめくウェディングベールをふわりとかぶっていた。

その紫紺の瞳は、これ以上ないほどトロトロに甘く蕩け、完璧なまでの幸せオーラを全開に放っている。

「――おや、我が君。そんなに焦らなくても、ちゃんと主役の席は用意されておりますよ」

「シルヴィア!? お前、いつの間にその格好をして……!」

ライルが腰を抜かしそうになりながら後ずさる。しかし、シルヴィアはうっとりとした表情で頬を染め、胸の前で両手を組みながらこう告げた。

ウエディングベールを揺らしながら、彼女は微笑んだ。

「住民の皆様が企画してくださったこの盛大な『戴冠式』……。ですが、私にはよく分かっております。これこそが、我が君が私のために準備してくださった、世界で一番ロマンチックな『結婚式』のサプライズ演出なのですね!」

「どこが結婚式だ!! これ戴冠式って言っただろ今の住民のセリフが聞こえなかったのか!」

ライルは喉が張り裂けんばかりの勢いでツッコミを入れた。

「ふふ、照れ隠しで『戴冠式だ』と言い張るお姿も素敵ですわ。ですが、王冠を授かる代わりに私と永遠の愛を誓い合い、この特製の玉座を『新居の特等席』として仲良く並んで座る――あぁ、なんて完璧なシナリオなのでしょう!」

「完全に別のストーリーが勝手に脳内で爆誕してんじゃねぇか!! 誰が玉座に並んで座るか!」

「さあ、我が君! 扉の向こうには、私たちを祝福するために集まった全住民の皆様が待っています! さあ、バージンロードへ――いえ、戴冠式のステージへ進みましょう!」

シルヴィアがグイッと力強く(しかし乙女のように優しく)ライルの腕を掴み、レッドカーペットの上へと無理やり引っ張り出そうとする。

「待て! 引っ張るな! 離せ! 俺は結婚式も戴冠式も一生しないからな!!」

ライルが必死に地面を踏ん張り、両足を突っ張って抵抗するが、王国最強の騎士団長の怪力の前には無力だった。ズルズルとレッドカーペットの上を引きずられていくライルの姿は、まさに絶望そのものだった。

その時である。

群衆のどよめきを掻い潜り、ガシャリと重い鎧の音を響かせながら、一人の男がスッと歩み出てきた。

王国騎士団副団長・アルベルトである。

アルベルトは、レッドカーペットの上で暴れるライルと、ウェディングベールを揺らしながら満面の笑みを浮かべるシルヴィア、そして黄金に輝く要塞都市の光景を、じっと見渡した。

数秒間の沈黙。

彼は一切の動揺を見せず、いつもの胸ポケットから、ついに最後の一包みとなった「特製胃薬」を取り出した。

そして、フタを開けると、水なしで一気にすべての粒を喉へと流し込み、深く、それはもう仏のように穏やかな笑みを浮かべた。

「……アルベルトっ! お前、見てないで助けてくれよ! 副団長の権限でこのふざけた祭りをぶっ壊してくれ!」

ライルが涙目で叫ぶと、アルベルトは静かに首を横に振った。

「いいえ、ライル殿。もう止める必要などありません」

「は……?」

「泥棒をピラミッドにし、闇市を開かせ、街を一晩で要塞化し、そして最後には住民総出の『戴冠式兼結婚式』を執り行う……。これほどまでに壮大で、誰にも真似できない完璧なカオスを目の当たりにして、私の胃酸もついに悟りを開きました」

アルベルトは遠い目をしながら、感服したように深く頭を下げた。

「お見事です、ライル殿。あなたが意図したかどうかは別として、この辺境の街は今、名実ともにあなたの『暗黒帝国』として永遠に歴史に刻まれることでしょう。……心より、門出のお祝いを申し上げます」

「祝うな! 誰が暗黒帝国の皇帝だ! 俺は一般人としてひっそり暮らしたいんだよ!!」

ライル絶叫のツッコミが、黄金の要塞都市の空高くへとパーンと響き渡る。

住民たちは「皇帝陛下の御成婚万歳――!!」と歓声を上げ、空に向かって高価な宝石や金貨を紙吹雪の代わりに盛大に投げ散らした。キラキラと輝く金粉と宝石の雨が降り注ぐ中、ウェディングベールをなびかせたシルヴィアが、逃げ惑うライルを優しく、そして絶対に逃がさない力加減でしっかりと捕らえ続ける。

こうして、莫大な財宝を発端とした数々の大勘違いは、すべての要素が最高潮で大爆発を起こし、誰もが予想しなかった(そして誰も止めることのできない)盛大すぎる大団円を迎えるのだった。

――だが、この平穏(?)な要塞都市に、さらなる「血縁者からの特大の爆弾」が迫っていることを、この時のライルはまだ知る由もなかった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第32話、「黄金の要塞都市に響く戴冠式!? ウェディングベールが舞う財宝編フィナーレの件」いかがでしたでしょうか!

ついに完結した「財宝編」! 庭の朝貢品から始まった数々の勘違いが、泥棒ピラミッド、闇市、街の要塞化を経て、最後は住民による「戴冠式」とシルヴィアの「ウェディング暴走」が綺麗に一つに混ざり合うという、最高潮のカオスとラブコメをお届けしました! ライルのツッコミスキルも限界突破し、アルベルトの胃も無事に悟りを開くことができましたね。

長きにわたる(?)財宝編をお楽しみいただき本当にありがとうございます!

そして次回からは、いよいよ物語は新たなステージへ……!?

大都市にいるはずの「あの人物」がついに動き出す――!?

それでは、また次回の新展開でお会いしましょう!

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