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第30話:夜の闇市!? 庭で開催される極秘オークションと、心酔する闇のブローカーたちの件

勘違い過保護ラブコメ、第30話をお届けします!

前回の「気絶泥棒ピラミッド」で辺境の治安(?)を勝手に守ってしまったライルの庭ですが、事態はさらに斜め上のステージへと加速します。泥棒の次は、なんと怪しい仮面をつけた「闇の商人・ブローカーたち」が参戦!?

夜の庭で繰り広げられるカオスな極秘オークションと、ライルの絶叫をお楽しみください!

それでは、第30話のスタートです!

再び訪れた、静まり返った深夜の闇。

前日に見事なピラミッド状へとリフォームされた不法侵入者たちは、夜が明ける前に街の衛兵(あるいは恐怖に震えた仲間たち)によってこっそりと回収され、ライルの自宅の庭には再び静寂が戻った……はずだった。

「――フッ、甘いな。この闇市で『極上の財宝』を手に入れるためには、全財産を賭ける覚悟が必要なのさ……」

「なっ、何を言う! あのヴェルナー家の次男様が放出した秘宝だぞ! 私の持ってきた禁断の魔導具こそ、最高入札にふさわしいわ!」

月明かりの下、ひそひそと怪しげな声が響き渡る。

音の元は、ライルの家の塀を軽々と飛び越え、庭に勝手に侵入してきた一団だった。彼らは動物や悪魔を模した禍々しい仮面をつけ、黒いマントを羽織った――地方の裏社会で名を馳せる闇のブローカーや、怪しげな黒魔術の商人たちであった。

彼らは昼間、街中に広まった「裏のボスの庭に莫大な財宝が野ざらしになっている。しかも昨夜はそれを狙った盗賊が『芸術的な造形物』にされたらしい」という噂を、完全に間違った方向に解釈していた。

すなわち――『あれは裏社会のボスが仕掛けた、選ばれし者しか参加できない「極秘の地下オークション(あるいは忠誠の入札会)」の試練なのだ!』と。

「おい、見てみろ……! あの庭に積まれた金貨と宝石の山を……! あんなものが無造作に放置されているなんて、まさに我が主からの慈悲深きお召し物だ!」

「急げ、夜が明ける前に我々の持ち寄った最高級の品々をそこに置き、入札を証明するのだ!」

闇の商人たちは、自分たちが勝手に持ち込んだ怪しげな毒薬、禁制品の魔導具、王都でも手に入らない裏ルートの宝石などを、ライルの庭に積まれた財宝の脇へと次々に並べ始めた。

もはや庭の一角は、完全に治安の悪い「ブラックマーケット(闇のフリーマーケット)」の様相を呈していた。

「よし、これで私の入札は完了だ……! あとは我が主からの審判を待つのみ……!」

ブローカーの一人が満足げにうなずいた、その時だった。

「――我が君の庭を勝手にゴミ捨て場にする不届き者は、どこのどいつですか」

凍りつくような冷たい声が、夜風に乗って庭全体に響き渡った。

ビクッと全員が肩を震わせ、おそるおそる声の方向に振り返る。そこには、漆黒の夜闇を背景に、紫紺の瞳をギラギラと怒りに燃え上がらせた王国最強の騎士団長・シルヴィアが立っていた。彼女はまたしても、ライルの寝室の窓から一睡もせず、庭を監視していたのである。

「ひっ……!? き、騎士団長ローゼンブルク……っ! なぜここに……っ!?」

「我が君の大切な新居のインテリア(※財宝の山)の周りに、何処の馬の骨とも知れぬ連中が勝手にガラクタを散らかしている……。許されざる大罪です!」

シルヴィアは怒りに任せて大剣の柄に手をかけ、一歩踏み出した。

その殺気は、百戦錬磨の闇のブローカーたちすら失禁しかけるほどの圧倒的なプレッシャーを放っていた。

「ひ、ひぃぃぃっ……! 殺される……っ! この組織の粛清部隊に消されるぞ……っ!」

ブローカーたちが絶望のあまり頭を抱えてその場に平伏した、その瞬間。

シルヴィアの動きがピタリと止まった。

彼女は、ブローカーたちが地面に置き忘れた「持ち寄りの品(闇の魔導具や高価な宝石)」を一瞥し、そしてハッとしたように目を見開いた。

(……待てよ。これはもしや……)

シルヴィアの脳内で、例の「全肯定・最強ラブコメフィルター」が凄まじい音を立てて起動した。

(夜な夜な我が君の庭に忍び込み、自らの一番大切な宝物を次々と差し出していくこの者たち……。まさか、我が君が主催する極秘の結婚式(または披露宴)に向けて、全国から集まった者たちが、先立って『祝福の品(ご祝儀)』を捧げにやってきているのでは……!?)

なんと恐ろしい脳内変換スピードであろうか。

シルヴィアの険しい表情は一瞬で慈愛に満ちた聖母のような微笑みへと変わり、彼女は優雅にふっと息をついた。

「……なるほど。あなた方は、我が君との婚姻を祝福し、遠方からわざわざ忠誠の証と祝儀を届けにきてくれたのですね」

――は?

平伏していたブローカーたちは、あまりの斜め上の発言に、思わず間抜けな声を漏らして顔を上げた。

「い、いや、我々はただ闇市で高額入札を……」

「ふっ、照れ隠しは不要です。その不審な仮面も、我が君のプライバシーを守るための配慮でしょう。ですが、夜中に不法侵入するいけない子供たちには、少しばかり『愛の躾』が必要ですね」

シルヴィアがふわりと微笑んだ次の瞬間――。

――ドゴッ! バキッ! ドーンッ!!

光速の居合いと体術のコンボが炸裂し、庭にいた闇のブローカー十数名全員が、文字通り一秒足らずで地面に沈んだ。

誰も死んではいないが、全員が気絶寸前の状態で冷や汗を流しながら、空を見上げて白目を剥いている。

「ふふ、これで完璧ですね。我が君の平穏を脅かす不届き者を排除しつつ、皆様からの大切な祝儀もしっかりと受け取りました。明日、我が君に誇らしく報告するとしましょう」

シルヴィアは一人で満足げにうなずくと、何食わぬ顔で再び寝室へと戻っていった。

そして――迎えた翌朝。

「……はぁ。今日も今日とて、最高の悪夢のような朝だな」

ライルは昨日の今日で完全にすり減った神経を無理やり奮い立たせ、重い足取りで寝室から庭へと出ていった。

前日の「泥棒ピラミッド」の衝撃がまだ脳裏に焼き付いているというのに、ライルが目の当たりにした光景は、それをさらに遥かに超越していた。

「…………は?」

言葉が出なかった。

昨日の夜まで金銀財宝といくつかの木箱しかなかったはずの庭が、今や完全に「怪しげなブラックマーケット(闇のフリーマーケット)」へと変貌を遂げていたからだ。

地面には見たこともない怪しい毒々しい薬の瓶、闇ルートの高級魔導具、一目でヤバいとわかる呪いの面、そして山のような札束や宝石が、昨日の朝貢品とごちゃ混ぜになって綺麗に陳列されている。しかも、その脇では、昨夜の闇のブローカーたちが気絶したまま行儀よく並べて寝かされていた。

「なんでだよ!!!!」

朝の静寂を粉々に粉砕するライルの絶叫が、辺境の青空を突き抜けた。

「なんだこれ! なんでうちの庭が今度は闇のフリーマーケット会場になってんだよ! 朝起きたら勝手に商売が始まってるのか!? おい、誰だお前ら! 勝手にうちの庭でバザールを開いてんじゃねぇ!!」

ライルが頭を抱えて絶叫し、その場で地団駄を踏んでいると、ガシャリ、と聞き慣れた重い鎧の音が近づいてきた。

いつも通りの朝の巡回ルートを歩いていた王国騎士団副団長・アルベルトである。

アルベルトは、ライルの家の庭に広がる「闇市の光景」と、並べられた怪しげな魔導具の数々をじっと見つめ、そして――フリーズした。

数秒間の沈黙の後、彼はゆっくりと視線をライルへと向け、いつもの深い、あまりにも深い溜息を吐き出した。

「……おはようございます、ライル殿」

「おはようじゃねぇよアルベルト! 見ろこれ! 昨日はピラミッドだったのに、今日はもう闇市だぞ! うちの庭のキャパシティはどうなってんだよ!」

ライルが半泣きになりながら闇市を指差すと、アルベルトは遠い目をしながら、お馴染みの胸ポケットから特製の胃薬を取り出した。

そして、慣れた手つきで三粒を口に放り込み、水なしで飲み込んでから、静かに口を開いた。

「……いやはや。驚きましたね。まさか、地方の闇社会を牛耳るブローカーたちが一晩で全員ひれ伏し、自らの全財産と禁断の品々を我が団長の手によって『上納品(あるいはご祝儀)』として強制収奪……いえ、自主的に差し出させるとは」

「強制収奪だよどう見ても!! 誰が商売しろって言ったんだよ!」

アルベルトは懐からもう一包みの胃薬を取り出すと、震えるライルの手にそっと差し出した。

「どうぞ、ライル殿。今日の分の特製胃薬です。昨日のピラミッドの時点で私の胃袋は限界を迎えていたはずですが、人間の身体とは不思議なもので、これほどの絶景を見せられると、逆に胃薬の味が美味しく感じられるようになってきました」

「麻痺してんじゃねぇよ! お前の胃袋を今すぐ病院に連れて行け!」

ライルは渋い顔をしながらも、差し出された胃薬を受け取り、ヤケクソ気味に口に放り込んだ。

「しかし、ライル殿」

アルベルトは真剣な表情に戻り、庭に転がる怪しげな魔導具を指差した。

「これほどの裏社会の大物が一網打尽にされ、庭が完全に闇市と化したとなれば、いよいよ王国中枢や他領の諜報部員たちも無視できなくなります。いっそのこと、この庭を正式に『国際闇市場』として登録しては――」

「登録するかぁぁぁっ!! 俺はただの一般人として、畑でトマトでも育てながら余生を送りたいんだよ!! なんで毎日組織のボスみたいなイベントが発生するんだよ!!」

ライルの魂の叫びは、朝の冷たい風に虚しく乗せられて彼方へと消えていった。

庭の闇市で気を失っていたブローカーたちが、うっすらと意識を取り戻しながら「なんと気高いお方だ……我々の闇市すら我が君の手にかかればこの通り……」と勝手に感動して涙を流し始めているのを見て、ライルは静かに天を仰ぎ、二度と戻らない平穏な日常へと涙を流すのだった。

こうして、庭の財宝を巡るカオスは、さらなる狂乱の第31話へと突入していくのだった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第30話、「夜の闇市!? 庭で開催される極秘オークションと、心酔する闇のブローカーたちの件」いかがでしたでしょうか。

庭の財宝を狙って夜な夜な忍び込んできた闇のブローカーたちが、シルヴィアによって一瞬で一網打尽にされ、なぜか勝手に「結婚式のご祝儀(上納品)」として色々なヤバいアイテムを置いていってしまうというカオスな闇市回をお届けしました! アルベルトの胃薬耐性もついに限界突破の領域に突入しつつありますね。

しかし、泥棒やブローカーが片付いた程度で、この騒動が終わるわけがない……!?

次回、第31話はいよいよ、この財宝編の最大の見せ場!

【「血の金貨」チャリティーパニック系】!

財宝をどうにか処分しようと、ライルが近所の住民や孤児院に「これいらないからあげるよ」と気前よく配って回ったところ、住民たちが恐怖のあまり震え上がり、一晩で街中に黄金の要塞を建て始めてしまい……!?

それでは、また次回の第31話でお会いしましょう!

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