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第25話:王国騎士団の「鉄壁の副団長」アルベルト、辺境の街の闇に震え上がりながらも、真実を知って絶句する件

登場人物

アルベルト・フォン・シュタイン

王国騎士団の副団長にして、「鉄壁のアルベルト」と称される冷静沈着な優秀な男。シルヴィアが辺境で「謎の男に骨抜きにされている」という不穏な噂を聞きつけ、組織の秩序を守るために単身で乗り込んできたが、街の異常な空気とライルの予想外すぎる実態に直面し、盛大に精神をバグらせていく新キャラクター。

前書き

勘違い過保護ラブコメ、第25話をお届けします。

前回の「兄の胃痛コント」を経て、今回はついに待望の新キャラクターが登場します! 王国騎士団の副団長にして「鉄壁のアルベルト」と呼ばれる優秀な男が、辺境の街の「ヤバい噂」にビビりながら乗り込んできました。

優秀なエリートが狂気の勘違いワールドに足を踏み入れたとき、何が起きるのか――!?

それでは、第25話のスタートです!

王都から馬を走らせること数日。

王国騎士団の副団長――「鉄壁のアルベルト」の異名を持つアルベルト・フォン・シュタインは、今まさに問題の「辺境の街」の巨大な門の前に立ち尽くしていた。

その端正な顔立ちは、緊張と警戒心から酷く引きつっている。アルベルトの手に握られた極秘調査書には、こう記されていた。

――『辺境の街。数日前より、王国最強の騎士団長シルヴィア・フォン・ローゼンブルクが常駐。その地を治める謎のライル・フォン・ヴェルナーの配下となり、街の住人を恐怖の凱旋パレードで次々とひれ伏させ、裏社会の王国を築きつつある』

「……信じられん。あの孤高で最強のシルヴィア団長が、たった一人の男に心棒を抜かれ、反逆の尖兵と化しているだと……?」

アルベルトはごくりと唾を飲み込んだ。鉄壁の精神力を誇る彼であっても、流石に国家の根幹を揺るがすかもしれないこの一大事には冷や汗が止まらなかった。

意を決し、アルベルトは厳重に身を引き締めて街のメインストリートへと足を踏み入れた。

だが、街に入った瞬間から、彼の肌は異様なピリピリとした空気を察知した。

行き交う人々は、アルベルトの姿(王都の騎士の制服)を見るやいなや――。

「ひっ……!?」

「あ、あの背負っている剣……! まさか、裏の支配者の組織の、新たな刺客の幹部か……!?」

「目を合わせるな! 粛清されるぞ……!」

道行く商人も主婦も、まるで死神でも目撃したかのように青い顔でパニックを起こし、蜘蛛の子を散らすように道の両脇へと逃げ出し、頭を抱えて身を縮こまらせた。

(なっ……なんだこの街は……!?)

アルベルトは動揺のあまり、思わず足を止めた。

(私が視線を向けただけで、全員がこれほどまでに恐怖に震え上がっている……。これが、あの男が敷くという『恐怖政治』の現実か……! 街の住人たちの精神は完全に破壊されている……!)

アルベルトのなかで、ライルという人物に対する評価は、すでに「冷酷非道で、底知れぬ魔力を宿した裏社会の絶対君主」として完全に固定されつつあった。

彼は腰の剣に手をかけ、周囲の暗殺者や罠に警戒しながら、街の中心部にあるマーケットへと慎重に歩みを進めた。

――そして、その運命の時は訪れた。

マーケットの一角。

活気があるはずのその場所だけは、周囲の店主たちが極度の緊張感でガタガタと震えながら、一人の「地味な青年」を囲むようにして直立不動で控えていた。

「ええと……この大根、一本でいくらだっけ?」

「ひっ! は、はいっ! ライル様のお気に召すままに、いくらでもお納めくださいませ……!」

「いや、値段を聞いてるんだよ。高すぎたら隣の店に行くからさ、もうちょっとまけてくれよ」

「なっ……! ライル様が直接価格交渉を……!? こ、この大根には、我が全財産の価値がございます! どうかお持ちください……!」

青年の何気ない買い物のやり取りを、店主は命懸けの忠誠の儀式であるかのように受け止め、涙を流しながら大根を差し出している。

アルベルトは、その光景を遠くの物陰から目撃した瞬間、全身の血が凍りつくような衝撃を受けた。

(あ、あれが……噂の「裏の支配者」、ライル・フォン・ヴェルナー……!)

一見すると、どこにでもいそうな普通の、むしろ日々の労働で少し疲弊しているような一般の青年だった。しかし、アルベルトの優れた魔力探知レーダーは、その青年の周囲に「底知れぬ漆黒の気配」を感じ取っていた。

(……恐ろしい。見た目の無害さに油断してはならない。あれこそが、人間の感情を完全に捨て去り、数々の猛者をも一瞥だけで従えてきたという、真の怪物……!)

アルベルトは意を決すると、ガシャリと鎧の音を響かせながら、その人物の背後へと堂々と歩み寄った。

「そこまでだ、ライル・フォン・ヴェルナー……!」

低く、硬質なアルベルトの声がマーケットの空気を切り裂いた。

周囲の住民たちは、「ついに組織の幹部同士の内部抗争が始まったぞ……!」と、さらに真っ青になってその場に伏せた。

ライルは「ん……?」と気の抜けた声を上げながら、持っていた大根を持ったままゆっくりと振り返った。

「えっと……誰だ、あんた? 見慣れない格好だけど……」

「とぼけるな! 私は王国騎士団副団長、アルベルト・フォン・シュタインだ!」

アルベルトは鋭い視線をライルに向け、一歩踏み出した。

「貴様が、我が騎士団の誇る最高戦力・シルヴィア団長をたぶらかし、この辺境の街を不穏な闇の王国に仕立て上げているという元凶だな! 貴様のその危険な野望、この鉄壁のアルベルトがここで完全に打ち砕く!」

――静寂。

アルベルトの熱のこもった宣戦布告を聞いたライルは、持っていた大根をポロリと落としそうになりながら、目を見開いて固まった。

(……は?)

ライルの脳内で、情報が一瞬にしてショートした。

王都の騎士団副団長? シルヴィアの知り合い? 組織をたぶらかした元凶?

「ちょっ……待て待て待て待て!!」

ライルは慌てて両手を激しく横に振ると、顔を青ざめさせながら絶叫した。

「誰が闇の王国だ!! 誰が元凶だ!! 俺は毎日、あの狂った過保護のせいで命の危険と胃痛に怯えながら暮らしている、ただの一般被害者だぞ!! たぶらかしてるんじゃなくて、こっちがたぶらかされて(物理的に命を狙われて)困ってんだよ!!」

「……は?」

今度は、アルベルトが盛大に間抜けな声を漏らした。

「被害者……? 貴様が……あの最強のシルヴィア団長を従えている『裏の王』ではないのか……?」

「だから誰が裏の王だ!! 見ろ、俺のこの服を! どこに裏社会の支配者の要素があるんだよ! ただの綿のシャツだろ! 剣も持ってないわ!」

ライルが必死に自分の貧相な身なりをアピールすると、アルベルトは混乱のあまり「え……? しかし、街の人々は貴様にひれ伏し、恐怖に……」と言いかけた。

「違うんだよ! 勝手にあの騎士が俺の周りでフルアーマーを着て殺気を撒き散らすから、この街の人たちが勝手に怯えて土下座してるだけなんだよ! 俺は被害者なんだ、頼むから信じてくれ……!」

ライルの必死すぎる形相と、どこからどう見ても「ただの苦労人」にしか見えない微塵のオーラのなさに、アルベルトの脳内で構築されていた『魔王討伐クエスト』の前提条件が、音を立てて崩れ去っていった。

(……まて。噂と、目の前の現実が……完全に一致しない……? この男の目は、命乞いをする悪党のものではなく……理不尽な労働環境に耐える社畜の目をしている……ッ!?)

アルベルトはあまりの予想外の事実に、その場でガタガタと膝を揺らし、冷や汗を滝のように流し始めた。

――最強の騎士団長の副団長であるアルベルトは、こうして「裏の支配者の真実」を知ってしまい、早くも自分のなかの常識を盛大に破壊されるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第25話、「王国騎士団の『鉄壁の副団長』アルベルト、辺境の街の闇に震え上がりながらも、真実を知って絶句する件」いかがでしたでしょうか。

新キャラクター・アルベルトが意気揚々と辺境の街に乗り込んできたものの、街の異常な噂にビビり散らかし、いざライル本人に会ってみたら「ただの苦労人一般人」だったという衝撃の事実を知る大爆笑の対面回をお届けしました! 優秀なエリートが狂気の勘違いワールドでどうなっていくのか、今後の展開もぜひお楽しみに!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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