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第23話:病み上がりのライル、久しぶりの外出で「裏の王の凱旋パレード」を盛大に開催してしまう件

勘違い過保護ラブコメ、第23話をお届けします。

前回の「要塞看病作戦&額合わせの赤面パニック」を経て、無事に風邪を治したライル。今回は、数日ぶりに街の空気を吸いに出かけますが……そこにはまたしても、斜め上の大誤解による盛大な大パニックが待ち受けていた!?

最強の騎士団長を引き連れた「散歩」が「凱旋パレード」と化す、爆笑必至の街歩き回です!

それでは、第23話のスタートです!

「ふぅ……ようやく熱も下がって、まともな空気が吸える……。やっぱり外に出るに限るな」

数日間の「要塞看病生活」から解放されたライル・フォン・ヴェルナーは、眩しい太陽の光を浴びながら、伸びをした。

風邪ですっかり鈍った体をほぐすため、今日は近所のマーケットまで軽い散歩に出かけることにしたのだ。何日ぶりかの外の世界は心地よく、鳥のさえずりさえもいつもより優しく聞こえる気がする。

「よし、今日は特別に、あの店で焼き立てのパンでも買って帰るとするか」

ライルが軽い足取りで歩き出そうとした、その瞬間――。

背後から、ガシャァァン! と、周囲の空気を一刀両断するような重厚な金属音が響き渡った。

「――これより、病み上がりの我が君を護衛するための『最高警戒・要人警護モード』に移行します! 周囲の不審者は一切容赦しません!」

振り返るとそこには、いつもの神銀ミスリル製フルプレートアーマーを全身に纏い、背中には国家予算級の大剣を剥き出しで背負ったシルヴィアが、鬼気迫る表情で仁王立ちしていた。その両目は周囲のあらゆる微動だにしない影をレーダーのように睨みつけている。

「おい、ちょっと待て。散歩だぞ? なんだその要人警護って……」

ライルが引きつった顔でツッコミを入れると、シルヴィアは一切の妥協を許さない真剣なトーンで言い放った。

基調な我が君が数日間姿を見せなかったことで、闇の組織や敵対勢力は『ライル卿は討ち取られた』という誤った情報を掴んでいる可能性があります。今この瞬間に、我が君がその健在な姿を街に示すこと――それこそが、敵の陰謀を粉砕するための『最高戦略の凱旋行進パレード』なのです!」

「誰が凱旋行進をするか!! 俺はただパンを買いに行くだけの一般市民だ!!」

ライルの必死の叫びも、シルヴィアの強固な防衛脳には一切届かない。

「さあ、お進みください我が君! 私が前衛として、街の全障害物を排除しながら道を開きます!」

こうして、不本意すぎる「最強の騎士を従えた街の支配者の散歩(=周囲からはどう見ても恐怖の視察パレード)」が強制的にスタートしてしまったのだった。

 * * *

街のメインストリートに足を踏み入れた瞬間から、異変は起きた。

普段であれば、主婦や子どもたちが行き交い、活気に満ち溢れているはずのマーケット通りが、ライルたちの姿を見た途端――ぴたりと静まり返った。

「ひっ……!?」

「あ、あれは……!」

露店で野菜を並べていた八百屋のおじさんは、完全武装で凄まじい殺気を放つシルヴィアと、その隣でなぜか申し訳なさそうに歩いているライルの姿を認めるなり、文字通り顔を真っ青にして震え上がった。

「き、聞こえたか……! 数日間、屋敷から一歩も出ずにおられたあの『影の支配者』様が、ついに王国最強の騎士を引き連れて街の本格的な視察……いや、不良勢力の粛清パレードを始められたぞ……!」

「な、なんて恐ろしい気迫だ……! あんな化け物を従えているなんて、やっぱりあの御方はこの辺境の本当の王様だったんだ……!」

通りにいた他の商客や住民たちも、次々と恐怖のあまり顔面蒼白になり、パニックに陥った。

そして、誰から言うともなく――。

ドサッ!! と、次々に道の両脇にひれ伏し、額を地面につけてガタガタと震え始めたのだ。

「ひぃぃっ! どうかお慈悲を! 我々は何も見ておりません! いつでも税を納めますから、どうか粛清なさらないでくださいませ……!!」

「ちょ――っ!? 何やってんだ、みんな! 頭を上げてくれ! 土下座するな!」

ライルはあまりの光景に心臓が止まりそうになり、慌てて道の脇に駆け寄ってひれ伏す人々の肩を必死に引っ張り上げようとした。

「違うんだ! これはパレードでも粛清でもない! 俺はただの散歩で、この騎士は単なる付き添いの……」

「ライル様がお優しく慈悲深いお言葉をかけてくださっているぞ……! 『ただの散歩だ(=これからこの街を散歩するように我が物に収める)』という隠されたおぞましいご意思だ……っ!」

「ひぃぃ、お許しください、お許しください……!」

住民たちは恐怖のあまり、さらに深く地面に額を擦りつけるばかりで、ライルの弁明は完全に「裏の王の不気味な慈悲」へと脳内変換されてしまっていた。どうあがいても悪者にしか見えない状況に、ライルはその場で頭を抱えて白目を剥きそうになった。

そんな中、行列の先頭に立つシルヴィアは、満足げにふっと胸を張った。

「ふふ……流石は我が君です」

シルヴィアは紫紺の瞳を輝かせ、ライルを振り返りながら誇らしげに囁いた。

「言葉を一つ発することもなく、ただ街を歩くだけで、全勢力が一瞬にしてひれ伏し、忠誠を誓う……。これぞまさに、裏社会の頂点に君臨する者にしか成し得ない、圧倒的なカリスマの支配劇です! 私の胸が熱くなります……!」

「どこがカリスマの支配劇だ!! ただの通りすがりの恐怖政治になってるだろ!! お前のその物騒なフルアーマーのせいで街中がガタガタ震えてるんだよ、今すぐその兜を脱げ!」

「なりませぬ! 我が君の御身を狙う刺客がいつどこから狙っているか分からないこの状況、警戒を解くことは死を意味します!」

シルヴィアはさらに威圧感を高め、周囲を鋭い目で睨みつけた。その殺気を受けた住民たちは、いよいよ恐怖の限界を超えてガタガタと小刻みに震え出し、もはや誰も近づけない絶対不可侵の空間が完成してしまった。

「……もうだめだ。俺はこの街で生きていけないかもしれない……」

ライルは遠い目をして青空を仰ぎ見ると、もう弁明する気力すら失い、トボトボと項垂れながら自宅の方向へとすごすごと引き返していくのだった。

後ろからは、「さすが我が君、本日の視察も完璧に終了しましたね!」と満面の笑みで付き従う最強の騎士の足音が、カチャカチャと威勢よく響き渡るのであった。

――最強の騎士団長の過剰すぎる要人警護は、病み上がりの散歩を「恐怖の凱旋パレード」へと変貌させ、今日も今日とてライルの社会的信用を地の底へと叩き落としていくのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第23話、「病み上がりのライル、久しぶりの外出で『裏の王の凱旋パレード』を盛だくさんに開催してしまう件」いかがでしたでしょうか。

風邪が治ってやっと外に出たと思ったら、シルヴィアのガチすぎる要人警護のせいで街中が恐怖に震えて土下座し出すという、不憫さ全開の街歩き回をお届けしました! 必死に弁明するライルと、それを「圧倒的なカリスマの支配劇」と勘違いして誇らしげにするシルヴィアのすれ違いを楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタラブコメが待ち受けています!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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