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第19話:王国最強の騎士団長、完全武装のフルアーマーで「極秘デート任務」を強行し、屋台を制圧する

勘違い過保護ラブコメ、第19話をお届けします。

前回の「ワンピース姿で防御力ゼロになり逃走した事件」の反動で、シルヴィアが出した結論とは――「やっぱり我が君を守るには、完全防備のフルアーマーこそが最強のドレスコードです!」。

今回は、ガチの重装備で街のマーケット(お祭り)に繰り出す二人を描いた、男女問わず楽しめるドタバタ爆笑アクション・コメディ回です!

それでは、第19話のスタートです!

「……おい、シルヴィア。なぜだ。なぜ今日の俺たちの外出が、そんな『決戦前夜のフルプレートアーマー仕様』なんだ……!」

週末の活気あふれる辺境の街のマーケット通り。

その中央で、ライル・フォン・ヴェルナーは頭を抱えながら、目の前に仁王立ちする銀髪の美少女を見上げて絶叫していた。

前回の私服回で恥ずかしさのあまり逃げ出してしまったシルヴィアは、「私服はあまりにも無防備すぎて心臓に悪く、敵の奇襲を防げません!」という謎の境地にたどり着き、今回はさらに気合を入れて、全身を神銀ミスリルの重装甲で固め、背中には国家予算級の大剣をなんと二本もクロスさせて背負い込んでいた。

「何を仰いますか、ライル殿。前回の潜行任務で私の肌がどれほど危険に晒されたか……。我が君の平穏な休日を確保するためには、これほどの重装甲によるエリア制圧が絶対不可欠なのです!」

「どこが休日だ! 周りを見ろ! お前が歩くだけで周囲の人間が完全に道を空けて、まるで治安維持部隊による厄介者の強制連行みたいになってるだろ!!」

実際に、シルヴィアが威圧的な足音を響かせて歩くたびに、買い物をしていた一般市民たちは「ひっ……! 今日の軍の査察は厳しそうだな……!」と勘違いし、文字通りパッと左右に分かれて道を譲っていた。カップルも子供も一目散に避難している。これではデートどころか、完全に犯罪者の護送劇である。

「はぁ……もうこうなったら、仕方ない。せめてあの屋台で甘いものでも買って、さっさと帰るぞ」

ライルがげんなりしながら指差した先には、香ばしい匂いを漂わせる「特製クレープと焼き菓子」の屋台があった。

屋台の店主(人の良さそうなおじさん)は、歩いてくるフルアーマーの美少女を見て腰を抜かしそうになりながらも、「い、いらっしゃい……! うちは安全な菓子店だよ! 怪しい爆薬とかは扱ってないからね!」と必死に両手を上げてアピールした。

「ふむ……。この甘い香りを放つ黄色い生地とクリームの塊……。敵が市民を油断させるために用いる『糖分偽装型の催眠毒餌トラップ』の可能性がありますね」

「ただのクレープだ!! クレープ屋の親父に向かって毒餌とか言うな!」

ライルが慌てて店主に平謝りしながら、「すいません、チョコバナナクレープを一つ!」と注文した。

店主が震える手で華麗な手さばきでクレープを作り上げ、「お、お待たせ……」と差し出した。

美味しそうな生クリームとバナナが詰まった、ごく普通の甘いクレープである。

「よし、我が君に毒が回る前に、私が全成分の分析と毒見を行います」

シルヴィアはそう言うと、右手に持っていた大剣の切っ先をスッと取り出し、その先端でクレープの端を慎重に突き刺した。

――ザクッ。

「あぁぁぁぁっ! クレープを処刑するな!!! 美味しいスイーツが泣いてるだろ!!」

「……ぐっ。毒反応はありません。しかし、この圧倒的な甘味の密度……! 食べた者の精神をトロトロに溶かし、戦闘不能に追い込む極めて危険な快楽兵器です! 我が君、口を開けてください、私が安全に口まで運んで差し上げます!」

「人の手で作られたスイーツを生物兵器みたいに扱うな! ていうかその大剣の先端ですくったクレープを『あーん』されても、怖くて死ぬわ!!」

ライルが必死に拒絶していると、周囲のギャラリー(野次馬)たちから「おい、あのフルアーマーの姉ちゃん、クレープに本気で命懸けだぞ……」「すげえストイックな愛の形だな……」という謎の感嘆の声が漏れ聞こえてきた。もう何が何だか分からない。

頭を抱えたライルは、「もういい! 次のゲームの屋台に行くぞ!」と強引に場所を移動した。

そこに現れたのは、的当て(射的)や輪投げが並ぶ、お祭りの定番の遊戯屋台だった。

「ほう……! 遠隔から標的を撃ち抜く、戦闘シミュレーション訓練施設ですね!」

シルヴィアの目がギラリと光った。彼女のなかの「騎士団長としての戦闘本能」が、ここで最悪な形で火を吹いてしまった。

「いや、子供が的当ての人形を狙って遊ぶだけの普通の縁日のゲームだからな! 本気の武器は使うなよ!」

ライルが念を押したにもかかわらず、シルヴィアはすでに屋台の前に立ち塞がり、店主のお兄さんに向かって「一回分の挑戦権を買い取ります。標的はどこですか」と真剣なトーンで詰め寄っていた。

「い、いらっしゃい……お姉さん、武器の持ち込みはちょっと……」

「問題ありません。我が右腕に宿る魔力と投擲技術で十分です」

ライルが止める間もなく、シルヴィアは屋台の景品(木製のコルク銃やおもちゃの矢ではなく、なぜか店主が仕入れていた本物の鉄製のダーツのような投げ矢)を手に取った。

彼女が構えた瞬間、周囲の空気が一瞬でピタリと止まった。

――シュッ!!

凄まじい風圧と共に、投げ矢は目に見えないほどの超高速で真っ直ぐ飛翔し、一番奥にあった「特賞の特大クマのぬいぐるみ」の鼻先を正確に貫通。さらに勢いそのままに、背後の木の壁を数センチも深くえぐり取ってドスンと突き刺さった。

ガシャーーーン……!! と、的の台座ごと、屋台のバックパネルが綺麗に真っ二つに粉砕されて崩れ落ちた。

完全なオーバーキルである。

静まり返る屋台の前。

店主の青年は、目の前で起きた大惨事と、跡形もなく消え去った的を見つめながら、目玉が飛び出るほど驚愕してその場にへたり込んだ。

「わ、私の屋台が……攻城戦の直撃を受けた城壁みたいに崩壊した……?」

「ふっ……。見事、中央司令部の核(特賞のクマ)を完全に破壊しました。我が君、任務完了です」

シルヴィアは誇らしげに胸を張り、粉砕された瓦礫の中から、辛うじて無事だったボロボロのクマのぬいぐるみ(ただし串刺しにされている)を拾い上げてライルに差し出した。

「完了じゃねぇよ!! 屋台を半壊させる客がどこにいるんだ!! すいません店主さん! 弁償します! 全部の損害賠償は俺が払いますから生きてください!!」

ライルは青い顔をして財布を取り出し、店主に狂ったように頭を下げて謝罪し続けた。

周囲の観客たちは、あまりのスケールのデカすぎる的当て(という名の破壊活動)に、なぜか「おぉ……!」と割れんばかりの拍手を送り始め、ライルは恥ずかしさと疲労でその場で気絶しそうになった。

 * * *

夕暮れ時。

マーケットの隅のベンチで、ライルは全身の水分と魂を吸い取られたような顔でぐったりと座り込んでいた。

その隣では、シルヴィアが「見事な防衛戦でしたね、ライル殿!」と、ボロボロになったクマのぬいぐるみ(串刺し)を嬉しそうに抱えて誇らしげに胸を張っている。

「……なぁ、シルヴィア。頼むから、次の休日は家から一歩も出ないでおこうな。俺の心臓と、この街のインフラが持たない……」

ライルが力なく呟くと、シルヴィアは少しだけ首を傾げ、しかしすぐに頼もしい笑みを浮かべた。

「ふふっ、お任せください我が君。今日の戦闘データをもとに、次はさらに重装甲なデート作戦を立案しておきます!」

「作戦を立案するな!! デートを戦争にするなーーっ!!」

今日も今日とて、不憫な次男の悲痛な絶叫は、夕暮れ時の平和な街の空へと虚しく響き渡っていくのだった。

――最強の騎士団長の「フルアーマーデート」は、今日も今日とて、街中の屋台とライルの平穏を完全制圧(物理)していくのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第19話、「王国最強の騎士団長、完全武装のフルアーマーで『極秘デート任務』を強行し、屋台を制圧する」いかがでしたでしょうか。

私服パニックの反動でフルアーマーに逆戻りしたシルヴィアが、街のクレープ屋や射的の屋台をガチの軍事作戦として攻略(破壊)していく、ドタバタアクション・コメディ回をお届けしました! クレープを大剣で毒見し、的当ての屋台を木端微塵にするシルヴィアと、ひたすら弁償とツッコミに奔走するライルの掛け合いを楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるパニックが待ち受けています!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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