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第18話:王国最強の騎士団長、初めての「普通の洋服」に防御力ゼロのパニックを起こす

勘違い過保護ラブコメ、第18話をお届けします。

前回の「ふれあい牧場でのアルパカ狙撃(?)事件」で動物をも震え上がらせたシルヴィアですが、今回はついに、あの代名詞である「フルプレートアーマー」を脱ぎ捨てて、街の「普通の洋服」に挑戦することに……!?

最強の騎士団長が防御力ゼロの私服姿で見せる、人生最大の羞恥心とパニックの行方はいかに!

それでは、第18話のスタートです!

「……なぁ、シルヴィア。一度でいいから考えてみてくれ。お前がその全身フルプレートアーマーのピカピカの重装備で街を歩くたびに、周辺の一般市民が直立不動になって怯え、子供が泣き出し、野良犬すらも一目散に逃げ出しているというこの現実を……!」

辺境の街の一角にある、明るく清潔感のある洋服店「シュトラール・テキスタイル」。

その店の前で、ライル・フォン・ヴェルナーは頭を抱えながら、目の前に仁王立ちする銀髪の美少女を見上げて深い溜息を吐いていた。

どれだけ「ここでは誰も襲ってこないから鎧を脱いでくれ」と頼んでも、シルヴィアは「我が君の傍にいる限り、いつどこから刺客が飛んでくるか分かりません!」の一点張りで、頑なに神銀ミスリルの鎧を脱ごうとしない。

しかし、このままではいつまで経っても街の人々から「変なカップル(または危険な傭兵と一般人)」として奇異の目を向けられ続ける。スローライフの第一歩として、どうしても彼女に「普通の一般人の服」を一枚くらい買って着させなければならないのだ。

「いいか、今日は特別な潜行任務だ。街の住民に溶け込み、敵の目を欺くための『カモフラージュ衣装』を調達する――そう思って、この店で普通の私服を選んでくれ」

ライルが必死に知恵を絞り、「潜行任務」「カモフラージュ」というシルヴィア大好物のワードを使って説得すると、彼女の紫紺の瞳がキリッと引き締まった。

「――なるほど。敵の目を欺くための極秘潜入用『変装服』ですね……! かしこまりました。我が君の安全な情報収集のため、この私が身を挺してその衣装とやらに身を包んでみせましょう!」

(よし、乗ってくれた……!)

ライルが内心でガッツポーズを決めながら、店の中へとシルヴィアを促した。

店内に入ると、優しそうな雰囲気の店主のおばちゃんが、珍しいフルアーマー姿の客に目を丸くしながらニコニコと出迎えてくれた。

「いらっしゃい……って、おや、今日はまた随分と気合いの入った格好の連れ合いだねぇ。お姉さん、中で試着していくかい?」

「はい。この店で最も隠密性に優れ、かつ我が君の視線を釘付けにする『極秘の戦闘用カモフラージュ服』を見繕ってください」

「えっと……普通の可愛いワンピースとか、動きやすいシャツを探してるんです。すみません、こいつちょっと特殊な訓練を受けてまして……」

ライルが冷や汗を流しながら店主にフォローを入れると、店主は「ほほう、若いのに服の趣味が独特だねぇ。それじゃあ、このあたりはどうだい?」と、爽やかなライトブルーのシンプルなワンピースや、動きやすいカーディガン付きの私服のセットをいくつか差し出してくれた。

数分後。

フィッティングルーム(試着室)の前に、ライルはポツンと立っていた。

(ちゃんと着られるだろうか……。そもそも、あの鎧の下がどうなっているのか普段は全く見えないからな……)

ガチャリ。

静かに試着室の扉が開いた。

「……ま、待たせました、ライル殿……」

その声に導かれてライルが視線を向けた瞬間、彼の時が完全に停止した。

そこには、いつも世界を救うかのような威厳を放っている王国最強の騎士団長ではなく、まるで春の陽気のような爽やかなライトブルーのワンピースに身を包んだ、息をのむほど美しい一人の少女が立っていた。

いつもはフルアーマーの兜や重装備に隠れていたサラサラの銀髪がふわりと肩に流れ落ち、上品でシンプルなドレス風のワンピースが、彼女の驚異的なスタイルと整った美貌をこれでもかと引き立てている。

ただ、その表情は――文字通り、人生最大の恐怖に直面しているかのように真っ青だった。

「ど、どうでしょうか……?」

シルヴィアは、自分の両腕や首元を細い手でギュッと押さえながら、ガタガタと全身を震わせていた。

「なっ、なんですかこの服は……! 布地が全体の面積の半分もありません! 肩から腕にかけて、そして首元から背中にかけて、あまりにも無防備すぎて丸裸も同然です……! これでは後ろからそっと近づかれたら、一瞬で急所を突かれて即死してしまいます……っ! 全く防御力という概念が存在しない致命的な戦闘服です……!」

「いや、ただの普通のワンピースだろ!! 誰も急所を突かないから安心しろ!」

ライルは心臓をグッと鷲掴みにされたような衝撃を覚えつつも、慌ててツッコミを入れた。

(なんだこれ……めちゃくちゃ似合ってるじゃないか……! いつものゴツい鎧のギャップで、破壊力が異常すぎるだろ……!)

「安心できません! 腕が! 肌が! 外の空気に直接さらされているこの恐怖……! いつもなら神銀のプレートが私の全身を完全に守護しているというのに、今の私はまるで防御力ゼロの状態でスライムの群れに放り出された気分です……っ!」

シルヴィアは半泣きになりながら、ワンピースの裾を必死に引っ張って隠そうとした。そのあまりの恥ずかしがり様は、普段の鬼神の如き強さを誇る騎士団長とは似ても似つかない、ただの年頃の可愛い少女そのものだった。

その健気で、しかしあまりにも可愛すぎる姿を目の当たりにしたライルは、顔がカッと一気に熱くなるのを抑えられなかった。

「……い、いいじゃないか。その、すごく……似合ってるぞ、シルヴィア」

ポツリと、ライルが本音を漏らした。

「え……?」

シルヴィアの動きがピタリと止まった。

彼女は驚いたように紫紺の目を見開き、真っ赤に染まった顔でライルをじっと見つめた。

「い、いつもみたいにゴツい鎧を着てるより……その、街の景色にも馴染んでるし……その……なんだ、すごく可愛い……と思うぞ」

照れくささのあまり、ライルは視線をそらしながらボソボソと言い訳するように付け加えた。

その瞬間。

シルヴィアの頭から、プシュウウウッと現実逃避の湯気が盛大に吹き出した。

「か……『可愛い』……いま、我が君が私を……? 乙女としての……女としての私を……その、お褒めくださったのですか……っ!?」

シルヴィアの顔の赤さは限界突破し、茹でダコのように真っ赤になってフラフラと後退りした。

「ば、馬鹿な……心拍数が通常の七倍を超えています……! 敵の奇襲よりも遥かに致死性の高い、甘美すぎる精神攻撃……! 耐えられません……っ!」

「お、おい、どこに行くんだ!?」

「し、失礼します――っ!!」

あまりの羞恥心と嬉しさに耐え切れなくなったシルヴィアは、試着室から全速力で店の外へと飛び出して行ってしまった。

店内に残されたライルは、呆然と開いたままの試着室を見つめ、それから自分の真っ赤になった顔を両手で覆い隠した。

「……あいつ、服を着ただけで逃げ出すのかよ……。まったく、どこまで初心なんだまったく……」

遠くで「我が君に褒められたぁぁぁ!」という遠吠えのようなシルヴィアの叫びを聞きながら、ライルは深い溜息と共に、自分の高鳴る心臓をそっと抑えるのであった。

――最強の騎士団長は、鎧を脱ぎ捨ててもなお、愛する我が君の心を一撃で粉砕する破壊力を秘めていたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第18話、「王国最強の騎士団長、初めての『普通の洋服』に防御力ゼロのパニックを起こす」いかがでしたでしょうか。

いつもはフルアーマーで完全防備なシルヴィアが、ライルのために可愛いワンピースに挑戦するも、あまりの無防備さと恥ずかしさに全速力で逃げ出すという、ギャップ萌え全開の回をお届けしました! 照れながらも「可愛い」と言ってしまうライルと、嬉しさのあまりキャパオーバーを起こすシルヴィアのやり取りに、少しでもキュンとしていただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタが待ち受けています!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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