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第15話:王国最強の騎士団長、目の前に現れた「偽物のライル」を秒速で追い詰める

勘違い過保護ラブコメ、第15話をお届けします。

前回の「試着室のカーテン粉砕・生存確認事件」でライルの羞恥心を文字通り木端微塵に破壊したシルヴィアですが、今回は一転して、街に出現した「不届きな偽者」をめぐる大騒動回をお届けします! 最強の騎士団長の名前と我が君の尊厳を汚す詐欺師が現れたとき、シルヴィアの怒りと愛の爆撃はどう炸裂するのか!?

それでは、第15話のスタートです!

「……おい、なんだか最近、街を歩く人々の視線が以前にも増して冷たくないか……? いや、冷たいというか、もはや哀れみを見るような目なんだが……」

辺境の街の青空市場。

ライル・フォン・ヴェルナーは、落ち着いたブラウン髪を軽く掻き上げながら、すれ違う通行人たちがソッと距離を置く様子に首を傾げていた。

前回の洋服店での大惨事以来、なるべく目立たないように静かに暮らそうと心に誓っていたはずなのに、どうも街の空気感が妙におかしい。八百屋の店主は目を合わせようとせず、すれ違った冒険者たちは「あぁ、あの……大変だな……」と意味深な同情の目を向けてくる。

「気のせいではないかもしれません、ライル殿」

いつもの神銀ミスリル製フルプレートアーマーを纏い、背中に国家予算級の大剣を背負ったシルヴィアが、ライルの背後にピタリと密着しながら鋭い眼光を四方に飛ばした。

「我が君の周囲に漂うこの不穏な空気……。どうやら、この街の治安を乱す『新たな脅威』が潜んでいるフシがあります」

「脅威って……お前がいつも目立ってるからじゃないのか……?」

ライルがジト目でツッコミを入れたその時だった。

街の広場の中心に位置する、いつも賑やかな酒場のテラス席あたりから、何やら威勢のいい男の声が響いてきた。

「へへっ、お前ら、知らないのか? この辺境の街を裏で牛耳り、あの王国最強の騎士団長すらも俺の言いなりにしている男――この俺様こそが、名門ヴェルナー伯爵家の次男、ライル様よ!」

その声を聞いた瞬間、ライルの足がピタリと止まった。

「……は?」

今、なんと聞こえたか。

「我が家の次男」だと? しかも「あの王国最強の騎士団長すらも俺の言いなりにしている」だと――!?

ライルが信じられない思いで声のほうを振り返ると、そこには見覚えのない派手な身なりをした男が、酒場のテラス席で地元のワルそうな連れや酒飲みたちを相手に、大きな身振り手振りで豪語している姿があった。周囲の客たちは「マジかよ」「すげえな、あの騎士団長を手懐けてるなんて……」と、その男をすっかり信じ込んで感嘆の声を漏らしている。

(なんだあいつ……!? 俺の名前を騙る詐欺師か……!? ていうか、よりにもよって『騎士団長を手懐けてる』なんて大嘘をついてやがる……! そんなことしたら、本物のあの騎士団長に耳に入ったら一瞬でこの世から消去されるぞ……っ!!)

冷や汗が背中を滝のように流れ落ち、ライルが慌ててその場から立ち去ろうとした、その時だった。

ピキッ……! と、空気が凍りついたような音がした。

ライルの背後。

そこには、先ほどまでとは比較にならないほどの、文字通り「世界が滅びるレベル」の殺気を纏ったシルヴィアが、ゆっくりと一歩を踏み出していた。

その銀髪の美貌は怒りに満ち溢れ、紫紺の瞳は血に飢えた猛獣のように冷徹に輝いている。

「……今、何と聞こえましたか」

シルヴィアの低く、しかし広場全体に響き渡るような声が漏れた。

「我が君の尊いお名前と名誉を騙り、あまつさえ『私を言いなりにしている』などと大口を叩くあの不埒な愚者……。我が君の平穏なスローライフを冒涜するその卑劣なドブネズミの群れを、今すぐこの世界から一匹残らず更地にしてまいります」

「ま、待てシルヴィア! 落ち着け! あんな偽者に本気でキレるな、治安維持は衛兵の仕事だろ!!」

ライルが慌てて彼女の肩を掴んで引き留めようとしたが、すでにシルヴィアの戦闘スイッチは完全に入り切っていた。

ガシャァァァン!! と、凄まじい神銀の魔力が爆発し、シルヴィアの姿がかき消えた。

次の瞬間。

「――おっ、だからよ、俺の一言であの騎士団長なんてイチコロで――ぐえっ!?」

酒場のテラス席で調子に乗って酒を飲んでいた偽ライルの背後に、音もなく影が落ちた。

振り返る暇すらなかった。

シルヴィアは冷徹な眼差しで偽ライルの襟首を片手でガシッと掴み、そのまま地面に叩き落としたのだ。

ドゴォォォン!! と、石畳の地面が見事に陥没し、盛大な砂煙が舞い上がった。

「ひ、ひぃぃぃっ――!? な、なんだお前は――っ!?」

偽ライルは血の気を完全に失い、目玉を飛び出させながら悲鳴を上げた。背中に乗せられたプレプレートアーマーの重みと、全身を貫く殺気圧に、息をするのもままならない。

周囲の客たちはあまりの急展開に「うわあああ! 殺人だぁぁ!」と一斉に逃げ出し、一瞬でテラス席の周囲には広大な空間が生まれた。

シルヴィアは、足元で情けなく震える偽ライルを冷ややかな目で睥睨し、国家予算級の大剣の柄にそっと手をかけた。

「我が君の名を名乗る不敬、万死に値します。その首、今すぐここで切り落として、街のさらし首台に飾るのが妥当ですが……何か言い残すことはありますか?」

「ひっ……! 殺される、殺されるぅぅぅ!! 助けてくれ誰かぁぁぁ!! 俺はただの詐欺師だ! 名前を騙って酒をご馳走してもらっただけだぁぁぁ!!」

偽ライルは涙と鼻水を盛大に垂らしながら、命乞いのように絶叫した。

その惨めな姿を、少し離れた物陰から青白い顔で見守っていたライルは、盛大に頭を抱えて天を仰いだ。

「あぁ……もうやめてくれ……。あいつが偽者だってことは周囲にバレたけど、俺の胃に穴が開きそうだ……! ていうか、本物の俺が近くにいるのに誰も助けてくれないの何なんだよ……!」

「――処刑執行まで、あと三秒です」

「待て待て待て待て! 本当に殺すな! 衛兵を呼べ! 騎士団長を止めてくれ!!」

ライルが慌てて駆け寄り、シルヴィアの腕にしがみついて必死に制止した。

「シルヴィア、頼むから剣を抜け! いや抜くな! 収めろ! 衛兵の前に突き出すだけでいいから! これ以上街の地面を破壊するな!!」

ライル必死の説得(というか絶叫)に、シルヴィアはわずかに動きを止め、不満そうに眉をひそめた。

「……しかし、我が君の名誉を傷つけたあの害虫を生かしておくのは、私の騎士道に反します」

「生かしておいてくれ! 死刑にするほどの罪じゃないから! 詐欺罪で牢屋に入れればそれで十分だろ!!」

ライルに必死にすがりつかれ、シルヴィアはようやくふっと息を吐き、冷徹な殺気を引っ込めた。

彼女は冷ややかな目で、地面にめり込んで気絶寸前になっている偽ライルを見下ろし、低く言い放った。

「……我が君のご慈悲に感謝しなさい。今すぐその場から失せなさい。二度と我が君の御名に泥を塗るような真似をすれば、次は三途の川を逆流させて差し上げます」

「ひっ……ひぃぃぃぃっ……!!」

偽ライルは恐怖のあまり泡を吹いて完全に気絶し、そのまま白目を剥いて動かなくなった。

 * * *

騒動が鎮まったあと。

衛兵たちが慌てて駆けつけ、気絶した詐欺師の偽ライルを引きずって連行していった。

広場の隅のベンチに腰掛け、ライルはぐったりと肩を落として深い溜息を吐いていた。

「……はぁ。まさか自分の偽者が現れるなんて思ってもみなかったが……結末が過激すぎて、街の人たちの俺を見る目が『同情』から『恐怖』にレベルアップした気がするぞ……」

その隣で、シルヴィアは綺麗に整えられた手甲をピカピカと拭きながら、どこか誇らしげに胸を張っていた。

「ご安心ください、ライル殿。いかなる偽者が現れようとも、我が君の真の素晴らしさを知るこの私が、すべての敵からその名誉を完璧に守護してみせます」

「いや、一番名誉を傷つけてるのはお前のその過激すぎる対応なんだが……まぁ、いいか……」

ライルは遠い目をしながら空を見上げ、今日も今日とて、平和なスローライフの遠さを痛感するのであった。

――偽者の出現すらも粉砕する最強の騎士団長の愛は、今日も今日とて、暴走の限界を突破し続けていく。

後書き

最後までお読みいただきありがとうございます!

第15話、「王国最強の騎士団長、目の前に現れた『偽物のライル』を秒速で追い詰める」いかがでしたでしょうか。

ライルの名前を騙る調子乗りの偽者が現れるも、シルヴィアの圧倒的な殺気によって秒速で精神崩壊させられるスカッと(?)&ドタバタ回をお届けしました! 必死に止めるライルと、ガチで処刑しようとするシルヴィアの温度差を楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタが待ち受けています!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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