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第14話:王国最強の騎士団長、試着室のカーテンをブチ破って生存確認する

勘違い過保護ラブコメ、第14話をお届けします。

前回の「ダンジョンでのお姫様抱っこ爆走事件」により、男のプライドとHPを完全にゼロまで削り取られたライル。今回は平和な街の洋服店を舞台に、さらなる予測不能のハプニングが彼を襲います! 閉ざされた試着室のカーテンの向こう側で、最強の騎士団長の過保護レーダーが振り切れたとき、一体何が起こるのか!?

それでは、第14話のスタートです!

「……ふぅ。あのダンジョンの件以来、どうも背中が痛い気がするが……まぁ、今日のところは平穏そのものだな」

辺境の街の穏やかな通り。

ライル・フォン・ヴェルナーは、落ち着いたブラウン髪を軽く手で払いながら、目の前にあるこぢんまりとした洋服店の扉を開けて中へと足を踏み入れた。

先日のダンジョン暴走劇でボロボロになった上着を新調するため、今日は一人で(もちろん、背後にはいつものように完璧なフルアーマーを纏ったシルヴィアが控えに回っているが、店内には入らず店の外壁に張り付くように待機させている……はずだった)。

「いらっしゃいませ。おや、若い旦那さん、新しいシャツでもお探しかい?」

店主の気さくなおじさんが笑顔で声をかけてきた。

「ええ、ちょっと普段着用のシャツがほしくてね。これなんかどうかなって」

ライルがハンガーにかけられたシンプルな麻のシャツを手に取ると、店主は「お目が高いねぇ、それは動きやすくて通気性も抜群の品だよ。奥に試着室があるから、サイズを確かめておきなさい」と親切に案内してくれた。

「助かるよ。じゃあ、ちょっと試してくるか」

ライルはシャツを手に持ち、店舗の奥にある簡易的な試着室へと向かった。

試着室の入り口には、チェック柄の厚手の布製カーテンがパタパタと揺れており、それをシャッと引けば完全に外から遮断される仕組みになっている。

(よし、チャッチャと着替えて買って帰ろう。あの外にいる過保護すぎる騎士団長に変な心配をかける前にな……)

ライルがそんなことを考えながら試着室に入り、カーテンをしっかりと閉めた――その、まさに数秒後のことだった。

店舗の外。

壁に張り付き、周囲の気配をミリ単位で警戒していたシルヴィアの脳内で、凄まじい警報音が鳴り響いた。

(……待て)

シルヴィアの足がピタリと止まった。

(我が君が、あの空間に入ってから……すでに、およそ『三十秒』が経過した……!)

彼女の脳裏に、これまでの人生で最も恐ろしい最悪のシミュレーションが駆け巡る。

(試着室という名の、外部から完全に遮断された密室空間……! もしかして、あの狭い空間の気圧が急激に低下し、我が君の肺から酸素が奪われているのでは……!? いや、それだけではない! 壁の隙間から極小の毒針を放つ暗殺組織の罠か、あるいは空間そのものを捻じ曲げる高等転移魔法の罠に囚われたに違いない……!)

「我が君の呼吸が、外に聞こえない……っ! これは一大事です!!」

シルヴィアのなかのリミッターが、音を立てて完全に崩壊した。

彼女は「待て、待ってください我が君――ッ!!」と、もはや理性をかなぐり捨て、店舗の入り口を全速力で突き破るようにして店内に乱入した。

「お、おや、お嬢さん、どうしたんだい急にそんな大声で――」

店主がおじいちゃん特有ののんびりした声で声をかけようとしたが、シルヴィアの視界にはもう何も入っていなかった。

彼女が向かった先は、店内の奥にある――あの「試着室のカーテン」であった。

ちょうどその頃、試着室の中では。

「ふぅ、このシャツ……サイズも丁度よさそうだな。さて、元の上着を着直して……」

ライルが古い上着を脱ぎ捨て、新しいシャツに腕を通そうと、まさに半裸(上半身裸)の状態で腕を上げかけた、その瞬間だった。

ガッシャァァァン!! と、店内の空気を揺るがす凄まじい爆音が響き渡った。

「――我が君、無事か――ッ!!!!」

轟音とともに、試着室の厚手のカーテンが、シルヴィアの放った凄まじい突撃の圧力(と神銀の魔力)によって、文字通り跡形もなく粉々にブチ破られた。

「……は?」

ライルの時が、完全に、永遠に停止した。

目の前には、愛用のフルアーマーを纏った最強の騎士団長が、片手を突き出し、鬼気迫る形相で試着室の中に仁王立ちしている。

そして、その視線の先にあるのは――今まさに上半身裸で、シャツを片袖だけ通した無防備すぎるライルの肉体であった。

一瞬の静寂。

そして、現実を脳が理解した瞬間。

「「うわあああぁぁぁぁぁっ――!?/きゃあああぁぁぁぁぁっ――!!!」」

洋服店の店内に、男女の絶叫が盛大に木霊した。

シルヴィアは、自分の目の前で半裸を晒しているライルの姿を見た瞬間、顔面がトマトのように一瞬で真っ赤に沸騰し、思考回路がショートした。

「ひ、ひ、ひ、非道な刺客の罠ではなく……! 我が君の、あまりにも神々しく引き締まった上半身の裸体が、私の視覚と精神を直接強襲してきている……!?」

「なんでだ!! なんでお前がここにいるんだよ!! ていうかノックしろ! せめてカーテンは開け方ってもんがあるだろ!! ブチ破るなよ!!」

ライルは血の気が一気に引き、頭から湯気を出しながら、慌てて脱ぎかけのシャツを体に押し付けて必死に身を隠した。

「も、申し訳ありません我が君! 密室の中で酸欠になって意識を失われているのではないかと、私の生存確認レーダーが極限まで振り切れてしまい……っ!」

シルヴィアは顔を両手で覆い、真っ赤に染まった顔の隙間からチラチラとライルを見つめながら、ガタガタと全身を震わせた。

「しかし、まさか、その……予想以上に露出度の高い、あまりにも直球すぎる肉体美を拝見することになるとは……私の心臓の防衛ラインが完全に突破されました……!」

「お前のその変な勘違いのせいで、俺の精神的防衛ラインが完全に崩壊したわ!! 見るな! こっちを見るな!!」

ライルはあまりの羞恥心にその場で崩れ落ちそうになりながら、半泣きで絶叫した。

外で何事かと慌てて駆けつけてきた店主のおじさんは、粉々に破り捨てられたカーテンと、半裸で赤面して絶叫するライル、そして顔を真っ赤にして直立不動で震えているフルアーマーの美少女騎士というカオスすぎる光景を目の当たりにし、持っていたハンガーをポトリと床に落とした。

「……おやまぁ。若いのに、なかなか激しい試着のやり方をするもんだねぇ……」

「違うんだよじいさん!! 誤解だ! これは事件なんだよ!!」

ライルの必死の弁解の声は、洋服店の活気ある店内に虚しく吸い込まれていくのだった。

 * * *

それから数分後。

ボロボロになったカーテンの代わりに、新しい布を応急処置的にかけられた試着室の前。

ライルはすっかり着替えを済ませたものの、魂が半分ほど抜けたような虚ろな目で、パイプ椅子に腰掛けてぐったりと息を吐いていた。

その隣では、シルヴィアが先ほどの失態(?)への反省と羞恥心からか、いつも以上に直立不動の姿勢で、しかし耳まで真っ赤に染めながらピクリとも動かずに立っていた。

「……はぁ。もう二度と、一人で外の店で服なんて買わない……。家で通販カタログでも眺めてる方がマシだ……」

ライルが小声でポツリと呟くと、シルヴィアは申し訳なさそうに視線を泳がせながら、小さな声でこう絞り出した。

「……次からは、いかなる密室であっても、カーテンをブチ破る前に、まずは三回ノックをしてから生存確認の気配を読み取る訓練を積んでまいります……」

「そういう問題じゃねぇよ! そもそも試着室に入るな!! 入るなら店の外で待ってろ!!」

今日も今日とて、不憫な次男の絶叫は、平和な洋服店の天井裏へと元気よく響き渡っていくのだった。

――最強の騎士団長の過保護な生存確認は、今日も今日とて、愛する我が君の羞恥心を容赦なく粉砕していく。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第14話、「王国最強の騎士団長、試着室のカーテンをブチ破って生存確認する」いかがでしたでしょうか。

試着室という究極の密室(?)で起こる、最高に恥ずかしくて笑えるパニックハプニング回をお届けしました! 真面目すぎるがゆえに最悪の想像をしてカーテンを粉砕してしまうシルヴィアと、半裸の状態で遭遇して全自動で絶叫し続けるライルの温度差を楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタが待ち受けています!

それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!

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