↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/65

第10話:王国最強の騎士団長、見知らぬ美青年の接近に嫉妬の炎を燃やす

大好評の勘違い過保護ラブコメ、第10話をお届けします。

温泉での要塞防衛戦を何とか切り抜けたライル。今回は、ついにラブコメの王道にして最危険地帯――「大嫉妬回」が到来です! 麗しきエリート貴族の登場によって、シルヴィアの銀髪の下で燃え盛る嫉妬の炎が、辺境の街を焼き尽くす……!?

それでは、第10話の幕開けです!

「……ふぅ。今日は風も穏やかだし、温泉の件で溜まった胃の疲れもようやく抜けてきた気がする」

辺境の街のメインストリート。

ライル・フォン・ヴェルナーは、落ち着いたブラウン髪を揺らしながら、のんびりと石畳の道を歩いていた。

前回の「秘湯の要塞化事件」から数日。幸いにも街は平穏を取り戻しており、ライルは「今日は本当に何も起きない、極上の休日だ」と心の中でガッツポーズを決めていた。隣には、いつもの神銀ミスリル製フルプレートアーマーを纏い、背中に国家予算級の大剣を背負った銀髪の騎士団長・シルヴィアが、一言も発さずに直立不動でついてきている。

(いつも通り物騒な格好ではあるけれど、俺の数歩後ろをちゃんと従って歩いてくれている。……いや、これだけでも十分すぎるほど平和な日常じゃないか……)

ライルがしみじみと平穏のありがたみを噛みしめていた、その時だった。

「おや? もしかして……ライルじゃないか!」

明るく、よく通る爽やかな声が、前方から響いてきた。

足を止めたライルが顔を上げると、そこには仕立ての良い上品な上着をまとい、整った顔立ちをした金茶髪の青年が、満面の笑みを浮かべて手を振って近づいてくるところだった。

「――って、クリストファーか!?」

ライルは驚きに目を見開いた。

現れたのは、かつて王都の学院で苦楽を共にした、名門アルフレッド家の次男であり、ライルの数少ない友人であるクリストファーだった。

「いやぁ、懐かしいなライル! 辺境の街に赴任したって聞いていたが、まさかこんなところで偶然再会できるなんてな!」

クリストファーはそう言うと、旧友との思わぬ再会に嬉しそうな笑みを浮かべ、何の警戒もなくライルのすぐ傍へと歩み寄ってきた。そして、親愛を示すように、ガシッとライルの肩に力強く腕を回したのだ。

「おいおい、相変わらず元気そうじゃないか。こっちでの暮らしはどうだ? 今度ゆっくり昔話でも――」

――その瞬間。

周囲の空気が、これまでにないほど凄まじい速度で凍りついた。

「…………っ」

ライルの背後。

数歩下がった位置で控えていたシルヴィアの身体が、ピタリと硬直した。

彼女の銀髪が、圧倒的な殺気と荒れ狂う闘気によって、ふわりと逆立つように揺らめく。そのバイザーの奥の瞳から放たれた光は、もはや人間のそれではなく、獲物を狙う狂暴な猛禽類、いや、すべてを滅ぼす「死神」のそれであった。

(や……やばい……!!)

脊髄反射レベルの危機感を覚えたライルは、冷や汗が一気に噴き出すのを感じた。

クリストファーはまだ何も気づいておらず、「ん? どうかしたのかライル、顔が真っ青だぞ?」と首を傾げている。

「なっ……」

シルヴィアの唇が震え、低く這うような、地獄の底から響いてくるような声が漏れ出した。

「我が君の……その神聖なる、世界で一番尊い右肩に……」

ガシャァァァン!! と、シルヴィアの全身の鎧が怒りに震えて激しい金属音を鳴り響かせた。

「あの、身の程を知らない『金茶髪の不審者』が、馴々しく、あまつさえ肉体的に密着しているだと……!?」

「待て待て待て待て待て!!! クリストファーは不審者じゃない! 俺の昔の友人だ!!」

ライルは慌ててクリストファーの腕を外し、血の気が引く思いで絶叫した。

しかし、一度点火してしまったシルヴィアの「嫉妬の炎」は、もはや誰にも止められない領域に達していた。

「友人だと……? 例えどんな高貴な血筋であろうとも、我が君のパーソナルスペースを無断で侵犯し、その尊い御身に触れるという大罪を犯した以上、もはや生きて帰れると思うな……!」

ガチャリ、と国家予算級の大剣の柄に、シルヴィアの鋼の手甲がガッチリと握りしめられた。

「ひっ……!?」

ようやく背後の尋常ならざる気配に気づいたクリストファーは、恐る恐る振り返った。

そこにいたのは、全身を神銀の鎧で固め、この世のものとは思えないほどの冷徹な殺気を纏った、美しき銀髪の鬼神(騎士団長)であった。

「な、なんだこのおっそろしく美しいお姉さんは……って、待てライル! なんかものすごい殺気を出してないか!? 俺、何か地雷を踏んだか!?」

クリストファーは恐怖のあまり顔を真っ青にし、その場で腰を抜かしそうになりながらガタガタと震え出した。

「踏んだも何も、お前のその『馴れ馴れしく肩を組んだ手』が、今まさに世界を滅ぼすレベルの引き金を引いたんだよ!!」

ライルは叫びながら、シルヴィアの巨大な大剣の柄にしがみつき、全身の力を込めて引き留めた。

「やめろシルヴィア! 大剣を引け! 友人だ! 殺すな! クリストファーを宇宙の塵にするな!!」

「しかしライル殿! あの男の瞳には、我が君に対する下心と、言語道断の馴れ馴れしさが満ち満ちております! 今すぐあの腕を根本から切断し、存在の記憶ごと歴史の闇に葬り去ってこそ、このシルヴィアの平穏が保たれます!」

「俺の平穏が保たれないわ!! 頼むから落ち着いてくれ! 深呼吸しろ! 吸って、吐いて!」

「落ち着けと言われて落ち着けるものですか! 恋人同士の聖域である『二人の距離感』に土足で踏み入る不届き者は、私がこの手で――」

「だから恋人じゃない! いつからそんな関係になったんだよ!!」

大通りの中央で、銀髪の騎士団長が大剣を抜こうと暴れ回り、地味な次男の青年がそれを必死に羽交い絞めにして絶叫するという、カオスを極めた光景が繰り広げられる。

周囲を通行していた一般市民たちは、「またあの不憫な次男が、騎士団長の嫉妬のせいで命がけの人間交差点に立たされている……」と、完全に恐怖と同情の入り混じった目でその場から蜘蛛の子を散らすように逃げ出していき、一瞬で周囲一帯が綺麗に無人地帯と化した。

「ひ、ひぇぇ……ライル、君は一体どんないカミソリみたいな女性を飼育しているんだ……! 俺はもう帰る! 生きて王都に帰るぞ……!」

クリストファーはガタガタと震えながら這うように後ずさり、最後は振り返ることもなく、全速力で地平線の向こうへと走り去っていった。

 * * *

数分後。

一騒動が去り、人気のない路地裏。

ライルは地面にぺたりと座り込み、天井を見上げながら、生気のない顔で深い、深い溜息を吐いていた。

「はぁ……はぁ……。もうダメだ、俺の寿命が確実に十年は縮んだぞ……」

ライルがぐったりしていると、その目の前で、ガシリと重い音を立ててシルヴィアが膝をついた。

彼女はフルプレートアーマーの面当て(バイザー)をグッと押し上げ、いつもの美しい銀髪の素顔を覗かせた。

その顔には、先ほどまでの恐ろしい殺気は綺麗さっぱり消え失せており、代わりにどこか気まずそうな、しかしどこか満足げな、複雑な表情が浮かんでいた。

「……ライル殿。先ほどの不審者……ではなく、旧友の男は、無事に我が手から逃がしてやりました」

「逃がしてやったじゃねぇよ、お前が恐怖のあまり追い払ったんだろ……! おかげで昔の友人とまともに喋れなかったじゃないか」

ライルがジト目で抗議すると、シルヴィアは少しだけ目を伏せ、しかし真っ直ぐにライルを見つめ返した。

「ですが……あれほどの馴れ馴れしい男が近づいてきたにもかかわらず、私が我慢できなかったのは、その……」

シルヴィアの白い頬が、ほんのりと紅潮した。

「我が君の隣に並び立ち、その御身に触れてよいのは、この世界でこのシルヴィアだけであると、私の魂が勝手に主張してしまうからに他なりません」

「っ……!」

思いがけない直球の言葉に、ライルは胸の奥を不意に突かれたような感覚を覚えた。

怒りと冷や汗でぐったりしていたはずの心臓が、別の意味でドクンと大きく跳ねる。

(……なんだよそれ……。普段あんなに物騒なことばっか言うくせに、そんな真っ直ぐな目で『私だけ』とか言われたら……なんか、ズルいっていうか……悪くないなんて思っちまうだろ……)

ライルは顔が赤くなっているのを誤魔化すように、慌てて視線をそらした。

「なっ、なにを急に恥ずかしいこと言ってんだよ……! 友達だろ、ただの!」

「友人であっても、我が君の肩を抱くことは万死に値します。次にあのような不届き者が現れたときは、例え国の要人であっても、容赦なく宇宙の彼方へ飛ばしますのでご覚悟を」

「結局反省してないじゃねぇか!!」

夕暮れの路地裏。

ほんの少しだけ甘酸っぱい雰囲気が漂ったのも束の間、結局いつもの過激すぎる過保護と絶叫のツッコミへと戻っていくのだった。

――不憫な次男の胃痛と、最強の銀髪騎士団長の重すぎる独占欲は、今日も今日とて限界突破を更新し続けている。

後書き

最後までお読みいただきありがとうございます!

第10話、「王国最強の騎士団長、見知らぬ美青年の接近に嫉妬の炎を燃やす」いかがでしたでしょうか。

ついに王道ラブコメの「大嫉妬回」をお届けしました! 旧友の登場でブチ切れる銀髪のシルヴィアと、必死に仲裁するライルの不憫なやり取り、そしてラストの少しだけドキッとする(?)やり取りを楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタが待ち受けています!

よろしければ、ブックマークや評価、感想などをポチッとよろしくお願いいたします!

最後までお読みいただきありがとうございます!

第10話、「王国最強の騎士団長、見知らぬ美青年の接近に嫉妬の炎を燃やす」いかがでしたでしょうか。

ついに王道ラブコメの「大嫉妬回」をお届けしました! 旧友の登場でブチ切れる銀髪のシルヴィアと、必死に仲裁するライルの不憫なやり取り、そしてラストの少しだけドキッとする(?)やり取りを楽しんでいただけたなら幸いです。

次回も、予測不能な勘違いとクスッと笑えるドタバタが待ち受けています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。