第5ラウンド:新団体の旗揚げだぜ
ドワーフの里を「腹パン地獄」に変えた俺は、ついに標高三千メートルのオーガの嶺に辿り着いた。
「……これだ!これだよ、俺が探していたのは!」
目の前には、身長3メートル、丸太のような腕を持つ赤鬼の群れ。
オーガ
こいつらこそ、19世紀のボストンでもお目にかかれねえ、真の「スーパー・ヘビー級」だ。
「グオォォォ! 人間ごときが、我が聖域に何用だ!」
一匹のオーガが、岩塊を片手で握りつぶして威嚇してくる。
だが、俺は恐怖どころか、初恋の女に会った時のような輝く笑顔を浮かべていた。
「おい、デカブツ。その岩を砕く握力、広背筋の厚み……最高だ。……だが、構えがなっちゃいねえ。顎を引け、脇を締めろ。俺がお前の『パンチ』を完成させてやる」
「……何だと!? 死ねッ、虫ケラが!」
オーガの巨大な拳が、空気を爆ぜさせながら振り下ろされる。
俺は一歩、スッと横にズレた。
レイ・ロビンソンも驚くようなサイドステップだ。
「……!? 当たらぬ……だと!?」
「いいか、デカいだけのパンチは『ただの暴力』だ。俺が教えるのは『芸術』なんだよ」
俺は跳び上がった。
オーガの喉元へ、右のストレートを一閃。
衝撃がオーガの巨体を貫き、背後の岩山が爆発したように崩れた。
オーガは白目を剥き、ゆっくりと、だが地響きを立てて沈んでいく。
「レフェリー、カウントしろ。……あ、ここにはいねえんだったな」
静まり返るオーガの里。
すると、生き残ったオーガたちが一斉に地面に膝をつき、地鳴りのような声で叫んだ。
「……王だ! 拳一つで我が一族を凌駕する、真の王が降臨された!」
「……いや、俺は王じゃねえ。……プロモーターだ」
俺はシルクハットを被り直し、オーガの長を引き起こした。
「いいか、お前ら、明日からロードワークだ。山を三往復しろ。それから、魔獣の肉を食って食って食いまくれ。俺が、この世界で一番熱い『興行』を組んでやる」
オーガたちは、感涙にむせびながら「ベアナックル・ポーズ」をとった。
その巨大な拳が空を切るたびに、周囲の雲が吹き飛んでいく。
「…まぁ、これなら最強の軍団……いや、団体になるな。いいか、行くぞ野郎ども! ターゲットは……人と金が渦巻く王都だ!」
「オォォォォォ!!」
人間、オーガ、オーク、ドワーフ、そして(無理やり肉を食わされてガタイが良くなった)エルフ
サリバン率いる「異世界拳闘団体(WBA - World Beaten-up Association)」の進軍が始まった。




