第8話「生粋の不適合者」
保健室のような場所で運んでいた女をベッドに寝かせた霧平は、昌幸とここを受け持っているらしい老婆の話が終わるのを待っていた。
「じゃあおじさんは霧平くんを案内するからよろしくね〜」
ようやく話が終わったらしい。
昌幸が老婆と別れを告げて、こちらの方へ向く。
「ごめんね、あんまりここによらないもんだから話が弾んじゃったよ」
「....別にいいが、さっさとさっきの話をしてくれ」
再びエレベーターに乗り込んで霧平は先ほどの自分の質問についての話題を再開させる。
「えぇと転生者がなぜ生まれるかだったよね〜?さっきも言ったように二つあって、まずは下級神とか天使が君みたいな神様のパワーをある程度無視できる人を見逃してそのまま別の世界に送っちゃうことだよ」
(....神様のパワーってのがわからねぇが多分あのセイってやつが「動くな」って言った時に動けなくなったあれか。つまりあのパワーか何かで記憶を吹き飛ばしてまた別のところに魂?を送ってるのか)
霧平は昌幸の説明を噛み砕いて理解していく。
「それで二つ目は....上級神たちの趣味だね」
「おん?」
それを聞いて一つ目のことについて色々考えていたことが吹き飛ぶ。
(つまりおままごとの片付けに付き合わされるってことじゃねぇかよ、途端にやる気がなくなってきたじゃねぇか)
霧平の不機嫌そうな顔を見て昌幸のニコニコした顔が初めて苦笑いに変わる。
「まぁ当たり前の反応だよね〜、おじさんも結構長くここで働いてるけど今でもそのことは若干不満に思ってるよ」
「....質問だ、俺とあの女以外で今一番新しい職員は何年目だ?」
その言葉を聞いて霧平は心を落ち着かせながらそう問いかける。
「う〜ん、...確か4年目じゃなかったかな?」
「こことここ以外で働いている人の合計人数は?」
「言っても主なのはここと転移者を管理してるところだからね〜、せいぜい30人ぐらいだったと思うよ?」
「......」
昌幸の回答をを聞いて、霧平は悟る。
「本当にこことその転移者ってのを管理してる場所しかないんだな?」
「おじさんが把握してる限りではそうだよ」
念押しの確認も終わる。
(.....決定だ。人様のあり方を遊びで決定する奴もそれに従っているこの神界も全てぶっ壊してやる)
霧平には神を名乗るふざけた奴らのお遊びもそれに従っている奴らも気に食わなかった。
自然とバットを持つ力が強くなる。
「ありがとな、おっさん。俺の質問はこれで終わりだ」
「それなら良かった、じゃあこれから他の職員とか施設の紹介をしちゃうねぇ〜」
再び昌幸の顔が笑顔に変わり、そしてタイミング良くエレベーターが止まる。
リズムを取りながら歩いている昌幸の背中を見ながら霧平はひっそりと決意を固めるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
館山霧平。
日本の群馬県出身。
高校中退後、群馬県のとある運送会社に雇われそこの用心棒とした働いていた。
....運送会社と言えば聞こえがいいが実際のところは場合によっては殺しにさえ手を染める犯罪組織だった。
しかし敵の犯罪組織の人間こそ殺すが、決して一般人には手を出さないどちらかと言えば義賊に近い組織であったため霧平は特に組織に不満を覚えることなく働いていた。
本人は頭の回転が速く、物事をすぐ飲み込むが、自分のポリシーに反することに関しては感情的になる。
ただし感情的といってもその頭の回転の速さと持ち前の身体能力を利用して着実に相手を潰しにくる。
それを恐れた敵対組織が霧平が1人で住んでいるアパートを爆破した。
霧平はその爆発からも生き残るが、念入りに警戒していた敵対組織の人間に蜂の巣にされて死亡した。
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