17.夢魔マレ戦! その1
アルストロメリア侯爵家の眠りを守るための守護天使であるはずの彫像は、夢魔マレの邪悪な力に操られていた!
天使の像は二メートルを超える巨大なもので、体は硬い石で出来ている。
強敵だが、こんなところで足止めされる訳にはいかない!
ガンマチームの猛攻の前に、天使の像は崩れ落ちた!
「やはり、君達に付いてきてもらって正解だな。さあ、中に入ろう。マレはこの中だ」
ナリスに促され、二体の偽天使を倒したガンマチームは、扉を開け霊廟へと入った。
霊廟の中は、教会の礼拝堂のような大きなホールになっていた。かび臭くてヒンヤリとした空気が漂っている。
真ん中が通路になっており、その両脇に沢山の棺が並んでいる。
歴代のアルストロメリア侯爵家の人々の亡骸が安置されているのだろう。
だが、なんだか様子がおかしい。
霊廟内部は棺や彫像、それに壁や燭台までも無残に破壊され、そこら中に蜘蛛の巣が張っている。
由緒ある侯爵家の霊廟なら、ご遺体は丁重に葬られ、死後の安寧を守るため、きちんと管理されているはずだ。
霊廟内にはおびただしい数の大きな蝶達がひらひらと舞っていた。
黒曜石のように美しい黒蝶だが、どこか不気味な雰囲気を醸している。
ナリスが叫んだ。
「あれは混乱の蝶。鱗粉を吸い込むと混乱させられるぞ」
アンは槍を握りしめて不敵に笑う。
「戦える相手なら、楽勝よ!」
昨日の悪夢で鬱憤がたまっていたらしいアンが、蝶を次々突いていく。
ガンマチームの勝利!
戦闘は無事に終わったが、霊廟内は混乱の蝶達に破壊され、淀んだ空気が漂っている。
「ぴぎゃ」
だが、バクが鼻で空気を吸い込むと、霊廟はたちまち綺麗になる。
「これって、あなたの力? すごいわねぇ」
カチュアがバクを褒めるとバクは得意げに「ぴぎゃ」と鳴いた。
「あ、飴食べる?」
「ぴぎゃっ」
なんとなくバクと会話出来るようになったカチュアだった。
そして人もモンスターも甘い物は別腹。
バクの力で精神に残っていた悪夢の痕跡を修復出来た。
ナリスは辺りを見回す。
霊廟内はカチュア達が入ってきた扉以外、扉らしきものは見当たらない。
「ふむ、修復出来たようだな。だがこの部屋にはマレはいない。霊廟の奥深くに潜んでいるのだろう。どこかに隠し通路があるはずだが……」
その時、バクがふっと顔を上げた。釣られてカチュアもそっちを見ると。
「あっ」
そこに立っていたのは貴族風の衣装を身につけた二人の男女だった。
年は四十代くらいだろうか。
カチュアはゴクリと息を呑んだ。
二人は、半分透けていたのだ。――生きている人間ではなく、幽霊のようだ。
男女はカチュア達が気付いたのを見て、そっと自分達の足下を指さす。
そうして、慈しむような、懐かしいものを見るような優しい目でカチュア達を見つめると、スウッと二人は消えてしまった。
ベルンハルトは呟いた。
「あれは、お祖父様……、お祖母様……」
「えっ、ベルンハルトさんのおじいちゃんとおばあちゃん?」
彼らの指さした場所を探すと地下に降りる階段が見つかった。
侯爵の父親と母親が、マレの居所を孫のベルンハルトに伝えてくれたのだ!
「行こう、時間がない」
ナリスに急かされて、ガンマチームは階段を下りる。
今度の部屋は薄暗い地下室だ。
ここも一族の霊廟のようだ。沢山の棺が置かれている。
部屋には何匹もの白い鳥が群れていた。ギャーギャーと鳴いて燭台を倒したり、壁を汚したりと、壊したりとやりたい放題だ。
「気をつけろ、そいつらはレーテの鳥と呼ばれている。攻撃を受けると記憶の一部を失ってしまうぞ!」
ナリスの注意が飛ぶ。
地味に嫌な敵だ!
「要するに、攻撃を食らわなければいいんですよね?」
リックもオーグも素早い攻撃は大得意だ。
攻撃を一度も受けずに撃破した。
ガンマチームの勝利!
「びょえ」
またバクが一声鳴いた後悪夢を吸い取る。
部屋は瞬く間に修復され、静かな霊廟に戻った。
「ああ、良かった」
カチュアがほーっとため息をついたその時。
ゴゴゴッ。
不穏な音とともに地面が大きく揺れた。
「きゃっ」
「地震か?」
ナリスが険しい目でドアの向こうを見つめる。
「いや、ここは精神世界だ。彼の精神の深くに潜む夢馬マレが私達に気付いたようだ。行こう」
ガンマチームは次の部屋に急いだ。










