1話 『同じ少女』
「お前今日どのくらい潜る?」
「んー、今週分の小遣いは稼ぎたいかな」
「そ、んじゃ半日は最低でも潜らないとな。狩って狩って狩らないと」
「あ、俺いくつかポーション類買ってから行くわ。先行ってて」
「あーいよ」
2人の青年はこの日の目標を決めると互いに目的の場所に向かい歩き始める。ダンジョンに行くのだろう。
そんな2人の会話を自分の装備の整備をしながら聞いている男がいた。
彼の名はカナ=フライム。職業は冒険者だ。
この世界では冒険者は腐る程いる。ギルドへ行き冒険者登録。募集してある依頼を選択。ダンジョンの中に生息する指定のモンスターを狩る。狩ったモンスターの心臓部『マナダイト』を回収し、そのモンスターの血液を冒険者登録した際に渡されるプレート(正式名称は冒険者の証)の窪みに一滴垂らす。あとはギルドへ戻り報酬を受け取る。たったこれだけだ。
マナダイトはその性質から、表面を削り、形を整えれば様々な使用方法がある。モンスターの強さも大きさに比例して、大きければ大きいほど強く、それでいて仕留めるのに時間がかかる。どこの世界でもでかい生物は強いからな。
マナダイトはモンスターの心臓部である。生命力が強いモンスターのものほど価値がある。稀に姿形は小さいがとんでもない生命力を持ったモンスターも存在するらしい。それはさらに価値が高く、とてつもなく強いと言われている。
マナダイトも強いモンスターのものであればその利用価値や耐久性も雑魚モンスターのものとでは比べ物にならない。
しかしマナダイトはどんなに大きくても一つとしてしか機能しない。大きいからといって二つ三つにして使うとこは出来ない。
理由は解明されてはいないが、おそらく心臓を二つにしては使えないということだろう。
ちなみに血液を採取する行為にも意味はあり、モンスターの名前、レベルや得られる経験値、属性や弱点などの情報を読み取ることができる。
血を窪みに垂らし解析が出た情報はすぐにギルド本部に送信されその都度新しい情報に更新されている。
そしてこれが一番重要な事だが、冒険者は本来職業では無い。
副業や趣味として行うのが一般的で本業には決してしない。理由は単純に危険だからである。
ギルドへの依頼内容は何もモンスターの討伐だけでは無く、家事手伝いから動物の世話まで誰でもこなせてかつ、安全なものもある。しかし、それだけをこなしていても食べていけるだけの金を稼ぐことはできない。
冒険者を本業にし、かつ食べていこうとするには覚悟を決めなければならない。安全を捨て危険に自ら踏み込む覚悟をだ。
そしてカナはただの冒険者ではない。通常冒険者はギルドへ行き依頼を受けるのが常識だ。依頼されているのは既に突破され攻略が完了しているダンジョンでできることだけなのだ。危険性を極力無くし、ちゃんと地図を確認しながら進めば誰でも依頼をこなすことが出来る。これが副業として冒険者をする者の常識である。
__そろそろ行くか
カナは立ち上がり剣を腰に装備するとポーション類の入った皮製のカバンを肩にかける。地図は持たずに。
数時間後…
カナは倒れていた。
モンスターにやられたわけではない。疲労が原因でだ。
カナが寝ている場所はダンジョン内だが地面ではない。数千はいるであろう蜘蛛の死骸の上に平然と寝転がっている。
蜘蛛のモンスターネームは《スパンダ》新種の害虫系モンスターだ。
一見した特徴としては群れをなして行動し、吐く糸には強力な粘着性と溶解性がある厄介なモンスターだった。
しかし、そんなスパンダを“初見にも関わらず”意に介さず、カナは数千匹倒してしまう。
勿論誰でもできるわけではないのでカナが相応の実力者であることに違いないわけだが。
「ふぅ、つーかれたぁ」
この日も日課になっている『あること』をやり終え、達成感に浸りながらも帰る準備をする。
「って、うわ!」
起き上がり背中についたゴミを払おうと手を伸ばすとにちゃりとしたなんとも気味の悪い感触が右手に伝わる。おそらく倒しきれていなかったスパンダの体液が付着したのだろう。
「はぁ」とため息をつき服を脱ぎ始める。
所々付着した体液で服が溶けている部分がある。この分だとおそらく多少の怪我は背中に負っていることだろう。
着替え終わると、肩まである黒髪を後ろに1つに束ね出口へ向かい歩き出す。目的地へと。
__都市ユーヴェル
人口およそ300万人が住む世界三大都市の1つである。ユーヴェルをこう呼ぶものも多い。《戦狂の都市ユーヴェル》と。
その名の通りユーヴェルには戦闘狂つまり、職業冒険者の割合が世界で一番多い。この都市では血気盛んな老若男女が冒険者になる。勿論本職として。当然荒くれ者も大勢居るが、他の都市に比べ、一番栄えているのもまた事実である。何故なら世界一のマナダイト製品の生産量を誇るから。
ユーヴェルで一番の観光地はなんといっても冒険者ギルドだろう。人口300万人のうち、約四割の人間が冒険者をやっているので自然とギルドも大きい。小遣い稼ぎでダンジョンに潜る人たちのことも考え、ユーヴェルといえばでっかいギルド!と、周りに認知されるほどに。
「んーー、やーっとついた。……ん?なんだこりゃあ」
ユーヴェルに着きほっと一息つきたいカナの目の前には人だかりがあった。ギルド本部前にザワザワと群がっている。
「なああんた、そそ、あんた。こりゃなんだい?」
「あぁ、カナか。て、なんだお前。なんか臭うぞ」
「え、まじで?えー、やっぱし匂いは落ちないか。ん、まぁいーや。それで、なんの騒ぎ?」
「ん、あぁ、これは……」
近くにいた男をちょいちょいっとつつき状況の説明を求める。
「ふむふむ、なるほどね」
男の説明によると、見慣れない顔の女がギルド内にいるらしい。
ただいるだけならそれほど騒ぎにはならないのだが、なんでも珍しい髪色をしてる上に仏頂面で一言も言葉を発しないという。
とりあえず噂の彼女を一目見ようと人混みをかぎ分け進む。
途中から俺に気付いたのか、少しづつ楽に前に進めるようになる。周りの連中が鼻をつまんでこちらを見ているからなんともいたたまれない。
人混みを抜け出し一番前にやってくると、噂の彼女の姿を見ることができた。
少女は“カナと同じ”黒髪を腰まで伸ばし、それを一つに束ねていた。
お読みくださった方ありがとうございますm( _ _ )m
誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
えー、おそらく物語の核心に入るのは第2章に入ってからだと思います。
結構ダラダラと投稿していきますのでそこらへんは何卒ご容赦を…




