ライオンとリボン
日が空いての更新になってしまいすいません。『誰がドロシーを殺したか?』の第7話「ライオンとリボン」です。最後まで読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
<オズの国>
「本当に真っ暗なんだな…。」
ロゼとリズは深い森に入ると、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡す。
「だろ〜?灯りが必要とまではいかねぇが足元見とけよ。」
シュルトとグリモワは転ける素ぶりもなく慣れたように森を進んでいく。
「あれなぁに〜?」
ロゼが何やら奇妙な動物を指差す。体はクマ、顔はトラのような見た目をした鋭い爪を持った動物だ。
「おっと…、あんたらそこの木の裏隠れろ。」
グリモワが真剣な顔をして声を落として双子に言った。
「なんで〜?」
「あれがヤバいんじゃないの?ほら、こっち。」
危機感のないロゼをリズが引っ張ってグリモワに言われた通りに、大きな木の裏に隠れた。
「どうします?ボス。あれいたら進めねぇっすよ?」
グリモワが一歩、奇妙な動物から離れる。
「まぁ俺様に任せろ。殺せるかは保証しねぇが道は開けてやるぜ?」
シュルトはニヤリと不敵な笑みを浮かべて後ろに担いでいた弓を構えた。
「矢がないよ…?」
ロゼが不安そうに呟いた。確かにシュルトは弓を構えた時点では矢を一本も持っていなかった。だが矢がないまま弓を引くと真っ黒な矢がシュルトの手の中に現れた。
「まぁボスは魔法使いだからな。」
グリモワはさも同然のように自分も木の裏に隠れながら言った。
「魔法使い…?」
双子が魔法使いという聞き慣れない単語にぽかんとしている間にシュルトはその奇妙な動物を狙い矢を放った。すると双子がよく知る矢よりもずっと速いスピードでその矢は奇妙な動物に命中した。その瞬間、その矢から強い電流が流れて奇妙な動物はその場で一時的に気絶した。
「んじゃ先進むか!」
シュルトは弓を担ぎ直し、ニカっと笑いながら木の裏に隠れている3人を振り返る。
「そうっすね。腹減ったしさっさとこの森抜けますか。」
グリモワは躊躇いもなくサッと木の裏から出て、先に進んでいくシュルトの後に続いた。しかし、双子はしばらく木の裏から動かなかった。
「なんだお前ら?行かねーのか?」
シュルトが催促するように双子を振り返った。
「いや…いくけど。ほんとにそいつ動かないのか?」
リズはロゼが勝手に飛び出さないように手を繋ぎながらシュルトのすぐ隣に横たわっている気絶した奇妙な動物を指差した。
「当たり前だろ〜?わざわざ俺様が眠らせてやったんだ。半日は動けねぇよ。」
シュルトが自信満々に、さも当たり前のように胸をはる。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だって!寝てれば案外可愛いし?」
リズのそんな心配をよそにロゼはその奇妙な動物に興味津々だ。
「…ロゼ。絶対アレに触るなよ?」
リズはロゼの手を強く握り直して声を低くして言う。
「はーい!」
ロゼはしっかりとリズの言葉に従い、奇妙な動物には触れずに横を通り過ぎ、シュルトたちを少し早足で追った。
「この森って後どのくらい続くんだ?」
シュルトとグリモワのすぐ後ろに追いついてしばらく歩いていると、リズが疲れたように言った。
「後ちょっとだぞ。どうする?一旦休むか?」
疲れた様子のリズを見てグリモワが一度足を止める。後ちょっととは言ったもののそこそこな道のりが残っているらしい。
「休も〜!」
ロゼが元気よくぽすんっと木に寄りかかって座った。
「いやまだ大丈夫…」
リズがそう言い切る前にグリモワが適当な木の幹に腰掛けた。
「まぁそう意地張るなって。ちょっと休んだって変わんねぇよ。」
グリモワがリズの腰に手を回して木の幹に腰掛けるように促す。
「まぁ一回座ろうぜ?」
リズは少し不満げながらもグリモワに促されるままロゼの隣に腰を下ろした。そうしてシュルトとグリモワが適当な世間話をしているうちにロゼとリズは互いに寄り添い合うように眠ってしまっていた。
「寝ちまったか。」
シュルトがそれに気づいて、自分の羽織っていたコートを2人に被せた。
「俺様がここを見ててやる。てめぇは飯でもとってこい。」
「えぇ…ボスが入ってきたらどうっすか?俺ここで見張ってるんで。」
「なんで俺様が雑用みてぇなことしなきゃなんねぇんだ?」
シュルトがどっしりと木の幹に座ったまま立ち上がる気がないのを感じ取ると、グリモワはめんどくさそうに立ち上がった。
「はぁ…適当な草でいいっすよね?」
グリモワはのそのそと森の奥の方に向かう。
「俺様は肉がいいな!デケェ肉とってこい!!」
その背中にシュルトが遠慮のない要望を投げる。その要望にグリモワは片手を上げるだけで応えた。
「はぁ…肉っつってもこの辺なんかいたっけか…」
グリモワは相変わらずだるそうな足取りで獲物を探している。しばらく歩き回っていると三匹のウサギが集まっているところを見つけた。おそらく親子のウサギなのだろう。
「ちいせぇな…まぁあれでいいか。」
他のでかい獲物を見つけるのは面倒臭かったのか、ベルトの裏に仕込んでおいた投げナイフを3本取り出す。そしてグリモワお得意の隠密スキルで、見つからないように茂みの裏から狙いを定める。グリモワがナイフを投げると一寸のブレもなく、3匹のウサギを順に脳天に突き刺さり、仕留めた。
「捌いてから持ってくか…?皮だけ剥げばいいか。」
グリモワはウサギが3匹とも絶命したのを確認すると、今度はブーツの中から先ほどのものより大きなナイフを取り出す。そして皮だけ剥いでそのままウサギをシュルトたちがいる所に持って帰った。
「ちゃんと肉とってきてやりましたよー。」
グリモワはウサギの肉をシュルトのところに持ち帰ると、まるで登山でもしてきたかのように疲れ切った素振りを見せた。
「わーい!お肉だよ、リズ!」
ロゼとリズも眠りから醒めていたようで肉と聞いて、座っていたロゼが元気よく立ち上がる。
「お、あんたらお目覚めだな?」
「さっき起きたんだ。」
リズは立ち上がってグリモワのすぐそばにきてウサギを受け取ろうとする。
「おっと嬢ちゃん、結構血まみれだぜ?こいつ。」
そのグリモワの言葉にリズとロゼが目を丸くして驚く。
「リズのこと女の子ってわかるの!?」
「なんでわかったんだ?」
ロゼとリズは訳あって本来とは反対の性別の格好をしているのだ。
「そりゃあ見りゃわかるだろ?ボス。」
シュルトも驚いた顔をしていた。
「お前女だったのか!?」
「声でっか…」
シュルトが今日1の声のデカさで声を上げた。リズはそれに迷惑そうに眉を顰めると、ロゼの耳を手で塞ぐ。その時、後ろの茂みからザワザワと音がした。シュルトとグリモワは即座に反応し、ロゼとリズの前に庇うように立ちはだかった。
「てめぇは双子のそばにいろ。」
そう言い捨てるとシュルトは弓をすぐに構えられるように持ち、茂みに近づいていく。するとずおんっと全長2メートルは越えようかという巨体のライオンが茂みの中から出てきた。すかさずシュルトが弓を構え、グリモワが双子を守るようにナイフを構える。
「弓を下ろしてくれ。お前たちに手は出さない。」
ライオンはシュルトが構えた弓を機にすることもなくこちらに進んでくる。
「てめぇ…ただのデカブツじゃねぇな?」
シュルトはライオンに言われた通りに弓を下ろすと、子供のようにワクワクとした雰囲気を滲ませながらライオンを見上げた。
「さっきから付け回ってたのはあんたか?」
シュルトの後ろからグリモワのいつもよりも鋭い声が飛んでくる。グリモワはまだナイフを構えたままだ。
「ああ、気づかれてたのかい?」
ライオンは悪びれる様子もなく茂みの中から全身を出すとシュルトの横に座った。
「んで?てめぇは何しにきたんだ?」
シュルトは多少の警戒を残しつつも興奮を抑えられぬ様子でライオンに期待の眼差しを向けている。
「少し話でもどうかと思ってね。」
そうライオンが言うとシュルトは心底がっかりと入った様子でグリモワたちの元に戻った。
「チッ…俺様と戦う気はねぇってか?」
「まさか。今はそんな気はないな。」
シュルトはライオンのその言い回しにピクリと反応した。
「今はってことはいずれは頼むぜ〜?」
シュルトはニヤニヤとライオンを見上げた。それにライオンは苦笑いで返した。
「君たちはドロシーを探してるってことでいいかな?」
ライオンがロゼとリズを見つめた。そしてその言葉にどきっとしたのか、ロゼとリズは一歩前へ出た。
「なんで知ってるの〜!?」
ロゼはきゃっきゃっと楽しそうにライオンに駆け寄る。
「どこで聞いてたの?」
リズは一歩出たところで立ち止まり、ライオンを睨む。
「この深い森の入り口で話してただろう?すまないが聞かせてもらっていた。」
それを聞いてシュルトがライオンに突進しそうな勢いのロゼをヒョイっと担いで止めて、リズの元に戻す。グリモワもリズに寄り添う騎士のように隣に付いた。
「ドロシーとは仲が良かったから、ちょっと聞きたくなってしまった。盗み聞きをしたのは謝ろう。」
ライオンは頭を下げた。
「まぁ結構でかい声で話してたしそれは別にいいんだよ。なんでつけてたの?私たちのこと。」
リズが鋭い声で問う。
「ドロシーを探さないでほしい。」
ライオンが静かにそう言った。
「なんで〜?僕たちね、ドロシーちゃんと同じところからきたの!」
「…とにかく探さないでくれ。」
それだけ言うとライオンは森の奥に駆けて去ってしまった。
「逃げ足は一丁前だな。」
シュルトが苛立ったように言い捨てた。リズがライオンが先程まで座っていたところに何かが落ちていることに気がついた。
「何それ〜?」
ロゼがひょこっと後ろ側から顔を出して落ちていたそれを拾う。
「赤いリボン…?」
リズがまじまじとそのリボンを見る。
「赤と水色のリボン!」
ロゼがリボンに水色の部分があることに気がついてリズに見せた。どうやら元の色は水色のリボンだったようだ。その後から何やら濃い赤色の液体が付着している。
「なんだろこの赤いやつ?」
ロゼが匂いを嗅いでみた。
「ん〜、よくわかんない。」
そこでリズはカカシのいたトウモロコシ畑で拾った赤と白のシュシュを思い出した。ポケットの中に手を突っ込んで取り出す。
「これ、この赤色そっくりじゃない?」
ロゼにそのシュシュを見せた。
「ほんとだ!同じ人が色つけたとか?」
双子はうんうんと唸って考え込む。シュルトとグリモワは辺りを警戒してキョロキョロと忙しなく森の中を見渡していた。
「よくわかんないな。でもどっちも女物っぽいけどね。」
リズはロゼからそのリボンを受け取って、シュシュと一緒にポケットに仕舞い込む。
「とりあえず持っとくよ。持ち主がいたら渡せばいい。」
「だね〜!」
そうして4人はシュルトとグリモワを先頭にライオンを警戒しながら深い森を抜けた。
「ない…。首にちゃんと巻いておいたはずなのに…。」
4人が深い森を抜けた頃、ライオンは先程4人とライオンが鉢合わせたところに戻って来ていた。
「ドロシーのリボンがない…。探さないと…。」
その日ライオンは一日中そのリボンを探し回っていた。
読んでいただきありがとうございました。また続きは数日以内に更新する予定ですので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。




