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双子の靴

更新遅くなりました。「誰がドロシーを殺したか?」第6話「双子の靴」です。1話から読んでいただけるとより楽しめるかと思います。よろしくお願いします。

<オズの国>


「ちょっと暗くなってきたね〜。」

「そうだな。もしかしたらちゃんと夜とかあるのか?」

トウモロコシ畑から離れ、黄色の道を進んで行くと気づけば辺りが不気味に暗くなっていた。双子は慎重に黄色の道を進んでいくと目の前には真っ暗な終わりの見えない大きな森が広がっていた。

「僕たちがいた森とはなんか雰囲気が違うね…。」

「道は森の中にも続いてるみたいだな。」

2人は森に入る手前で中に入ることを躊躇するように足を止めて森の奥を見据えた。

「この森、避けていけないの?」

「わかんねぇ。でも避けて行くってどこ通ってくんだよ?」

辺りを見渡しても他に道はなく、後ろを向いても歩いてきた道とだだっ広い草原があるだけで他に黄色の道と同じ方向に続く道は見当たらなかった。

「にしても変だよな。ここで明るいところと暗いところの境目がはっきりしてる。」

リズは少し後ろに戻って、草原やトウモロコシ畑のある明るい方と大きな森のある暗い方の境目の真ん中に立った。確かにリズの体の半分に影が差したようにはっきりと明暗が分かれていた。

「ほんとだー!不思議〜!!」

「カンザスにこんなとこなかったよな。まぁここはカンザスじゃねぇんだろうけど。」

「んね〜。どうするー?森の中入る?」

ロゼは境目をぴょんぴょんと行ったり来たりしながらリズに問いかける。すると森の方からリズではない声がロゼの問いに答えた。

「俺様はやめておいた方がいいと思うけどな。」

双子はその声に驚いて、声の聞こえた方向を振り向いた。

「誰〜?」

声の聞こえた方を見るとガタイのいい傷跡だらけの白髪の男が森の中から出てきた。歳は30代前半のように見える。

「なんだお前、この辺に住んでおいて俺様の顔を知らねぇのか?」

傷だらけの男はニヤつきながら双子に近づいてくる。

「悪いが私たちはここらへんの者じゃない。顔も名前も知らないな。」

リズはロゼに近づかせまいと前に出て傷跡だらけの男とロゼの間に入る。

「なんだてめぇらこの辺の奴らじゃねぇのかよ。んじゃあ俺様の顔を知らなくてもしょうがねぇなぁ!」

ガハハと豪快な笑みを見せ、双子に近寄って肩を組む。ロゼは一瞬驚いたようだったがすぐに快活な笑顔をみせ、面白そうに肩を揺らしている。

「ボス…何してんすか?」

森の方からもう一つ新しい声が聞こえてリズがそちらを見やる。そこには傷跡だらけの男ほどではないがガタイのいい、気だるげな青年が森から出てきたところだった。

「おー、来たかグリモワ!おせぇぞー?」

傷跡だらけの男はその青年をグリモワと呼び、グリモワが森から出てくると双子からパッと離れてそちらにゆっくりと歩いて行った。

「誰すか?そいつら。」

「知らねぇ奴らだな。」

グリモワは心底呆れたようにため息を吐くと双子の方に気だるげに歩いてきた。

「あー…悪かったな、うちのボスが。」

「ボス?」

聞き馴染みのない呼び方を聞いて、ロゼがキラキラと興奮を隠す気のない目でグリモワを見上げる。

「えっとな、あのデケェ男はうちの盗賊団のボスなんだよ。シュルトっつーんだけど…知ってるか?」

グリモワは頭の後ろをポリポリと掻きながら居心地悪そうに傷跡だらけの男、シュルトを双子に紹介した。

「はぁ?盗賊団…?」

「盗賊団だって!リズ!」

心底意味のわからないと言ったように眉を顰めるリズとは対照的に、ロゼはリズの腕にしがみついて興奮を隠せない様子で揺らしている。

「あんたら仲いいな。」

グリモワはそれを微笑ましそうに見守っていた。

「あの森って入るとなんかあるのか?」

リズはふとシュルトの言っていたことを思い出し、グリモワに聞いた。

「いや特にやばいって話は最近聞かなくなったけどな。」

「じゃあ前まではやばかったのー??」

最近はという言い方に疑問を持ったのかロゼが会話に割って入って聞いてくる。するとシュルトがいつの間にか近づいてきて、グリモワの頭を後ろからわし掴むように撫でて言った。

「ちょっと前まで凶暴なライオンが出るってんで誰も近寄らなかったんだよ。まぁ俺様は別だけどな!」

シュルトはまたもやガハハっと豪快に笑った。

「今はその凶暴なライオンってやつはいないのか?」

そのリズの問いにグリモワがシュルトの腕から逃れて答える。

「なんか最近ドロシーっていう女が飼い慣らしたって聞いたぜ?大人しくなったって。」

「ドロシーちゃん!!」

その名前に食いつくようにロゼが前のめりになって先ほどよりも大きな声で言った。

「おーおー!食いついがいいなぁ、お前!なんだ?その女に惚れたか?」

ニヤニヤと口角を上げながらシュルトがずいとロゼに顔を近づけた。

「ちがーう。今ねー、そのドロシーちゃん探してるの〜!」

それにシュルトは興味をなくしたようにロゼから顔を遠ざけてつまらなそうに頭の後ろで腕を組む。

「チッ…探してるだけかよ。」

「はぁ…悪いなあんたら。うちのボス、色恋話が大好物でよ。」

リズはそんなことどうでもいいと言わんばかりに口を挟む。

「ドロシーってやつは今どこにいるんだ?」

グリモワはシュルトを叩いて森の方に帰ろうとするのを引き止めた。

「おいボス、ドロシーって女今どこにいるんすか?」

その問いかけにシュルトは面倒だといわんばかりの態度で振り返る。

「さぁ?俺様は知らねぇな。あの女がどこ行ったかなんて情報は入ってねぇよ。」

その言葉にグリモワは少し驚いたような表情を見せた。

「珍しいっすね?そういうちょっと怪しそうな情報は大体すぐ入ってくんのに。」

リズは落胆した様子を見せた。その様子を見たシュルトが口を開いた。

「なんか突然消えたとかいう情報は入ってるぜ?」

その言葉にロゼが先に反応した。

「ドロシーちゃん消えちゃったのー?」

「ああそうだぜ?オズのとこに行ったっきりカンザスにも帰れねぇで消えたってよ。」

リズは眉間の皺を深くした。

「ドロシーもカンザスに帰るのが目的だったのか?」

「そう聞いてるけどな。つーかカンザスってどこなんだろうな?」

シュルトは不思議そうに頭をひねる。

「ちょっと待て、あんた今“ドロシーも“って言ったか?」

グリモワは怪訝そうにリズに聞いた。

「ああ。私たちはカンザスから来た。」

それを聞いてシュルトとグリモワは目線を合わせてもう一度2人に向き直った。

「カンザスってのはどこにあるんだ?」

ロゼが元気よく身振り手振りも交えて説明する。

「あのねー!空が青くてね、すっごーく広くて森が綺麗なとこ!」

盗賊団の2人は驚いた様子を見せた。

「空が青いのか?」

このオズの国の空は常にピンクとも紫とも言えない奇妙な色で雲などなく、昼も夜もない空をしている。

「うん!あ、でもね夜はお星様がいっぱいで真っ暗で綺麗なんだよ〜!」

それを聞いてグリモワがますます顔を顰める。

「おほしさまってのは空にあるもんなのか?」

シュルトも興味深げに聞く。   

「よるってやつはなんだ?こういう深い森みてぇなくらいとこのことか?」

一気に質問が来てロゼがおろおろとたじろぐ。その様子を見て代わりにリズが答えた。

「お星様はその夜の間に空に浮かぶものだ。夜っていうのはこういう森みたいな場所のことを言うんじゃなくて、太陽が登っていない時間を指すんだ。」

その説明を聞いても盗賊団の2人はなんのことかさっぱりわからないと言う顔でリズを見つめていた。

「まぁそんな説明はどうだってよくて、多分カンザスはこの世界とは別の世界にある。」

シュルトは興味深げに頷いた。

「なるほどなぁ?お前らはドロシーと同じ世界の人間だって言いてぇわけだ?」

「そうだよー!」

グリモワもなんとなく理解が追いついたのかやっと口を開いた。

「じゃあなんだ?あんたらはその世界とこっちを行ったり来たりしてるのか?」

「いや、帰り方を探してるんだが…」

リズの言葉を遮るようにシュルトが口を挟む。

「できるんじゃねぇか?」

2人は驚いたようにシュルトに目を向けた。

「できるのー!?」

「どうやって?」

シュルトは2人の色違いの靴を指差した。

「その靴から魔力を感じるぜ?なんの魔法かまではわからねぇがな。」

双子はポカンとした様子で自分たちの靴を見た。

「まりょく…?」

シュルトは深く頷いた。

「ああ。そりゃあ間違いなく魔道具だ。」

シュルトはガハハっと豪快に笑った。

「てめぇらいいもん履いてんじゃねぇか!」

双子に近づいてバシバシと肩を叩く。

「いたっ…ちょっとやめろって!」

リズは思ったよりも強い力で叩かれて顔を顰める。

「ねーねー!この靴って何ができるの!?」

ロゼは叩かれても興奮が勝ったのか、キラキラと目を輝かせた。

「そりゃあ向こうの世界とこっちの世界を行き来するとかじゃねぇのか?てめぇらはここじゃねぇ世界から来たんだろ?」

シュルトはニコニコと双子の方に手を置いたまま言った。

「んじゃどうやって使うんだ?その魔道具。」

グリモワが少し離れたところから問いかけてくる。双子は目を見合わせた。

「私たちに聞かれても…。わかるんだったらもう帰ってる。」

「わかんなーい!」

双子はその魔道具の靴の使い方はさっぱりわからない様子だった。

「俺様も残念ながらそれは知らねぇな。」

それを聞いて双子は落胆した様子を見せた。

「知ってる人いないの〜?あの女の子たちにはこの黄色の道を行けばオズって人がいるから言ってみればーって感じに言われたけど…。」

ロゼは不安そうにそこで口を閉ざした。

「そうだな…オズならなんでも知ってそうだしな。」

グリモワがロゼに近寄ってきて目線を合わせる。

「まぁオズのとこに行くのはいいかもしれねぇぞ?」

「ほんと…?」

ロゼはグリモワと目を合わせた。

「ああ。基本オズに聞けばなんとかなるってみんな言ってるぜ?」

それに便乗するようにシュルトはリズの方を抱き寄せた。

「俺様たちもついていってやろうか?」

その言葉にグリモワは驚いたようにバっとシュルトの方を向いた。

「本気か…?ボス。」

「俺様には時間だけは余るほどあるからな。」

ロゼはその言葉にキラッと目を輝かせた。

「ほんとに…!?オズって人のとこ連れていってくれる!?」

ロゼを宥めるようにリズがロゼの肩にポンと手を置いた。

「私たちからなんか奪おうって話じゃないだろうな?」

リズは疑いの目を向ける。

「まさか!俺様は富豪どもからものを盗ってやるのが好きなんだ。そんな普通の奴らからは盗らねぇよ。盗っても面白くねぇからな!」

シュルトはまた豪快にガハハと笑って見せた。

「いいじゃんリズ!一緒に来てもらおうよー!」

リズは少し考えた後ロゼの目を見て口を開いた。

「ロゼがそこまで言うなら許可してあげてもいい。だけど、なんか盗もうとしたらすぐ離れる。」

リズはロゼに言い聞かせるように言った。

「はーい!」

それにロゼは元気よく手をあげて答えてグリモワの手を取った。

「じゃあいこー!!」

「わかったわかった!行くからあんま引っ張んなって…。」

グリモワはなかなか年下に振り回される経験がないのかタジタジだ。その2人を見つめながらシュルトとリズもついていく。そして4人で森の中に入っていった。



その少し奥の方で、一匹のライオンが聞き耳を立てていた。

第6話「双子の靴」を読んでいただきありがとうございました。次のお話も数日以内に公開予定です。そちらも読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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