トウモロコシ畑のカカシ
「誰がドロシーを殺したか?」第5話「トウモロコシ畑のカカシ」です。公開が遅くなってしまいましたが、読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
<オズの国>
「広い畑だね〜。」
「トウモロコシ畑か?」
ロゼとリズは黄色の道に沿って歩きながら先ほどの牧場を離れ、2人の周りにはトウモロコシ畑が広がっていた。
「この黄色の道でいいんだよね?」
「あの女の子たちが嘘ついてなきゃこの道でいいはずだ。」
「嘘つくような子には見えなかったけどなぁ〜。」
「そうか?随分警戒心が強いように見えたが。」
2人はそんなことを話しながらゆっくりとトウモロコシ畑を横目に、黄色の道を歩いていく。
「ドロシーって子が僕達と同じカンザスから来たかもって子なんだっけ?」
「あの女の子たちはそう言ってたけど、本当かはわかんねぇぞ?」
「またそういうこという〜!あの女の子たちいい子っぽかったよ?」
ロゼが口を尖らせて言った。
「そんなこと言われたって…」
リズが反論しようと口を開いたその時、トウモロコシ畑の方からリズの声を遮るようにリズよりも低い声が聞こえた。
「ドロシーに会いたいの?」
その聞いたことのない声に2人ともあたりを見渡して、声の主を探す。
「今のだぁれ?」
「私は知らないけど…。」
見渡してもあたりに人気はなく、不思議に思いながら一度立ち止まった。
「ここにいるよ。俺はカカシだから、わかりにくいよね。」
ロゼとリズの少し後ろのトウモロコシ畑の間からカカシが顔を出した。
「うおっ…カカシって普通しゃべるか?」
リズは振り返ってカカシを見ると、驚いて一歩後ろに後退り、怪訝そうに眉を顰めた。
「見てよリズ!カカシがしゃべってる!」
ロゼはカカシがしゃべっているのを見て興奮したようにリズの方を掴んで強く揺さぶっている。
「わかった…っ!わかったから離せって!」
リズはロゼにされるがままになりながら訴えた。
「え?ああ、ごめんごめん。」
それを聞いてリズはパッと肩から手を離して揺さぶるのをやめた。
「仲がいいんだね。兄弟?」
それを見ていたカカシが微笑ましそうに尋ねる。
「双子だよー!僕がロゼ!女の子〜!」
「私はリズだ。男だよ。」
それを聞いてカカシは不思議そうに2人を交互に見やった。
「ロゼが女の子?」
ロゼはシースルーマッシュの男の子のような髪型をしていて、半ズボンにワイシャツといった男の子のような格好をしているのだ。
「なんで?僕女の子だよー!」
女だと証明するようにその場でくるりと一回転するが男の子のようにしか見えない。
「まぁ見た目は関係ないしね。俺もカカシだし。」
そういってカカシも自分の姿を見せるようにトウモロコシ畑から体を出した。
「よく間違えられるから気にしなくていい。」
そういってリズは自分の腰を覆うほどの綺麗な長髪を見せた。
「綺麗な髪の毛だね。」
カカシはリズの方を向いて言った。
「ありがとう。私たちのことは置いておいて、お前はドロシーってやつのこと知ってるのか?」
その言葉にカカシは一瞬固まって、すぐにそっぽを向いた。
「…知らないかな。ごめんね、もう戻るよ。カラスが来ちゃうと嫌だし。」
そういってさろうとするカカシをロゼが呼び止めた。
「待ってよー!さっきドロシーに会いたいのっていってたじゃん。ほんとに知らないの〜?」
その声にカカシは一瞬止まったがすぐにトウモロコシ畑の中に消えていってしまった。
「ありゃりゃ、いっちゃった…。」
ロゼはしょんぼりと肩を落とした。
「なんか知ってそうだったけどな。まぁ言いたくねぇんじゃねぇの?」
リズはロゼを励ますように肩にポンっと手を置いて言った。
「そういうもん?」
「そういうもんだろ。ほら、とりあえず先進むぞ?」
リズはロゼの肩に置いていた手を離し、黄色の道を先に進んでいく。
「はぁい…。またねー!カカシさぁん!」
ロゼはカカシが去っていった方向を向いて大きく右手を振ってからリズを追いかけるように早足で黄色い道を進んでいく。
「にしてもあのカカシ…私らに声をかける時すげー怯えてたよな。」
リズが考え込みながら言う。
「そうだっけ?あんま見てないや。てかリズモアのカカシのこと気になってるんじゃんかぁ〜!」
ロゼはバシッとリズの背中を一回叩いた。
「いった!!何すんだよ…。」
リズは叩かれた背中をさすって、庇いながらカカシがいた方向を見やる。
「やっぱあのカカシなんか知ってるよなぁ…。」
リズは一度そこで立ち止まった。
「探してみる?」
「畑の中をか?」
「そりゃそうでしょ。さっきカカシさん、畑の中入ってった!」
そういってロゼは走ってトウモロコシ畑に突っ込んで行こうとしたが、牧場のファームハウスでの出来事が脳裏によぎったのか、畑に入る直前で立ち止まって、リズの方を振り返った。
「えっと…、リズは探す?カカシさんのこと。」
「探す。早くここがどこか知りてぇし、カンザス帰りてぇじゃん?」
それを聞いてロゼはパッと表情を明るくし、トウモロコシ畑の方に向き直った。
「じゃあ僕も探してくる!」
そう言うが早いか、ロゼは先ほどカカシが去っていったであろう方向にトウモロコシ畑の中を駆けていった。
「はいはい。見つけたら言えよー?」
そういってリズもゆっくりとトウモロコシ畑の中に入っていく。2人はしばらく手分けをして別々に先ほどのカカシを探し回った。
「なんだこれ?」
リズはしばらくトウモロコシ畑を歩き回っていると、深い赤色と白色のシュシュを見つけて拾った。
「変な色のつきかただな…?」
そのシュシュはまるで赤い絵の具でもこぼしたかのように半分ほどだけが深い赤色に染まっていて、ところどころその深い赤色の飛沫が飛んでいた。
「まぁ持っておくか。誰か落とした奴がいたら渡せばいいし。」
リズはそう思ってそのシュシュを自分の右ポケットにしまった。ちょうどしまい終えた時にロゼとリズが探し回っていた声が後ろから飛んできた。
「リズ…だよね?俺からいなくなっておいて悪いんだけど、女の子の髪飾り知らないかな?落としちゃったみたいで…。」
カカシは申し訳なさそうに、だが十分な距離をとって訪ねてきた。
「女の髪飾り?どんなのだ。」
(シュシュのことか?でもこいつが身につけるとは思えねぇが…。)
「なんか、女の子が髪を束ねる時に使うらしいんだけど…、見てないかな?」
「お前が身につけるのか?」
カカシはその問いかけに全力で首を振った。
「まさか!俺が身につけるわけじゃないんだけど、ドロシーが…、」
それを聞いてリズはニヤリと口角を上げ、カカシの言葉を遮るように口を開いた。
「へぇ〜?ドロシーがつけるのか。でもさっきおまえ、ドロシーってやつのことは知らねぇっつってたよな?」
カカシは焦ったように、視線を忙しなく左右に動かす。
「それは…えっと…。知り合いがドロシーと仲が良くてたまたまその、ドロシーの髪飾りを預かってたってだけで…。俺自身は会ったことがないというか…、ね?」
カカシは妙に饒舌に前のめりになってリズに訴え出した。
「ふーん?じゃあその知り合いってのは誰だ?私、ドロシーってやつにも、そいつにも会いたいんだけど。」
リズはカカシに一歩詰め寄った。
「いやそれは言えないっていうか…個人情報だしね?」
カカシは一歩後ずさって言う。
「じゃああのシュシュについてた赤いシミってなんなの?」
その問いかけにカカシは体を硬直させた。
「なん…、え?なんでそんなの知ってるの…?あの日、俺たちのこと見てたとか…、」
「あの日?」
カカシはハッと我に帰ったようにリズと目を合わせ、足早にトウモロコシ畑の奥へ、奥へと去っていってしまった。
「おいっ!待てって!」
リズの呼び止める声も虚しく、カカシの姿はトウモロコシ畑の奥へと消えていってしまった。
「はぁ…?なんなんだよ、もうちょいでなんか言いそうだったのに。」
リズは不貞腐れて地面を何度か蹴った。
その後またカカシを探したが、見つかることなくロゼと合流してしまった。
「カカシさんいなぁい…。どこいったんだろ?」
ロゼはリズを見つけると、パタパタと駆け寄ってきてしょんぼりとした声でそういった。
「一回カカシと話した。」
そう言いながらリズは自分の右ポケットから先ほど拾った深い赤と白色のしゅしゅを取り出してロゼに見せた。
「ほんと!?カカシさんどこにいたの?僕も話たぁい!!」
ロゼは駄々をこねるようにリズの肩を強く掴んで前後に揺さぶる。
「だぁからっ!それやめろって!」
「あぁ、ごめんじゃん。」
そういってロゼはリズの肩から手を離した。
「このシュシュ見てみろ。元々白だったっぽいんだけどさ、なんか半分くらい真っ赤になってんの。」
そう言われてロゼはリズが手に持っているシュシュをじーっと見つめる。
「ほんとだ〜。真っ赤っかになってるね。」
「カカシはこれを落としたからって探してて、私に声をかけたらしい。」
「あれ?探してたなら返してあげなかったの?」
ロゼが不思議そうにリズの手からそのシュシュを取って腕につけた。
「それがさ、返す前にカカシの方からまた消えちまって。」
「え〜?あのカカシさんってせっかちだね!」
ロゼは無邪気にシュシュを嵌めた腕を掲げながらクルクルと回っている。
「そう言うわけじゃねぇ気がするけど…。まぁいいや。この畑でようぜ?」
「だねー。そろそろカカシさん探すの飽きてきた!」
「飽きてきたって…。はぁ、いいわ。さっさと出て道進まねぇと。」
2人はトウモロコシ畑から出て黄色い道に戻った。
「ここ夜とかお昼ってないのかなぁ〜?」
トウモロコシ畑から出ると、ふとロゼが空を見上げながら言った。
「確かに。太陽とかここきてから見てねぇな。まじでここってどこなんだ…?」
その言葉にロゼは少し考え込むフリをして思いっきりぴょんっと飛び跳ねた。
「知らなーい!わかんなぁーい!」
「はいはい…。」
そうして2人はしばらく黄色い道に沿って、まっすぐ歩いていった。
その頃カカシはまだトウモロコシ畑の中を、落としてしまったというドロシーの髪飾りを探していた。
「どうしよう…無くしたなんていったらライオンくんたちに怒られちゃう…。あれはみんなで分け合ったドロシーの遺品…ドロシーの血がついているのに。みんなで、約束したのに。」
カカシは、そのドロシーの髪飾りを探しながらそうブツブツ呟いていた。
読んでいただきありがとうございました。また続きは数日以内に公開予定です。そちらも読んでいただけると嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。




