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奇怪な骨

『誰がドロシーを殺したか?』の第2話「奇怪な骨」です。1話を読んでからこちらを読むことをおすすめします。

<オズの国>

 

盗賊団の根城である洞窟は、昼間の騒がしさが嘘のようにしんと静まり返っていた。この時間、新入りはボスの部屋の前で見張をしなければならない。新入りであるグリモワは一人でボスのドアの前で見張りについていた。年のためグリモワは短剣を2本携帯していた。

「はぁ…今何時だよ…?まだ交代こねぇのか?」

グリモワのほかにも3人の新入りがいる。グリモワとその3人で、1日につき2人ずつ交代で見張りを行っている。今日はグリモワともう一人の新入りのオーガストのペアで3時間交代の計6時間の予定だった。だが3時間経ってもオーガストが持ち場に現れることはなかった。

「寝過ごしてんのか?はぁ。徹夜とか最悪だ…」

呼びに行こうにも見張りの仕事を放棄するわけにもいかず、グリモワは朝まで一人で見張りを終えることとなった。

「やっと朝かよ…。」

グリモワは、ボスのシュルトの部屋から物音が聞こえ始めて朝だと気付いたようだ。グリモワはいつも通りシュルトが自分から部屋を出てくるまで見張りをしながらまった。だがシュルトが出てくるのを待っていると、グリモワと同じ新入りのルーカスが焦燥に駆られたようにグリモワにつかみかかった。

「うおっ…なんだよ朝っぱらから…」

浅く荒い息を吐きながらルーカスが震える手でグリモワの腕に縋り付く。

「オーガストが…!!オーガストが死んじまった!!!」

ルーカスが鬼気迫る勢いでグリモワに訴えかける。その気迫にグリモワのたじろいだ。

「夢じゃねぇのか?寝ぼけてるとか…」

「寝ぼけてねぇって…!てめぇも部屋見てみろ!!っ…オーガストが!」

その時、騒ぎを聞きつけたのかボスが部屋から不機嫌な顔で出てきた。そのほかの団員もざわつき始めている。

「てめぇら朝っぱらからなに騒いでんだ?俺様の部屋の前で…」

まだ眠いのかあくびをしながらシュルトは聞いた。

「ボス!オーガストが死んじまったんです…!死んじまったっつーかありゃ…いなくなった?つーか…とにかくきて欲しいんす!」

「はぁ?夢でも見てたんだろ。それよりこんな朝っぱらから俺様の部屋の前で騒いでんじゃ…」

信じようとしないシュルトにルーカスが必死にシュルトの言葉を遮って伝える。

「夢じゃねぇんです…!!信じてくだせぇ!ボス、オーガストのとこに来てください…!」

その気迫にシュルトも少しは話を聞く気になったのか一度行ってみることにした。

「わかったわかった…いくからちょっと静かにしろ。」

「ありがとうございます、ボス!こっちっす!」


ルーカスはシュルトが承諾してくれたとわかると早速オーガストが昨夜眠りについていた見張り用の仮眠室に案内した。

「この仮眠室っす…オーガストだと思うんすけど血がすごくて…。」

「わかった。んじゃ入るぞ。」

シュルトはそう告げると、躊躇いもなくドアノブを回してドアを開け放つ。

「おっと…こりゃあ思ったより酷いな…。」

シュルトは思っていたよりも酷い部屋の惨状を見て驚いたように一歩下がった。

「うわ…んだよこれ?」

シュルトの後ろから覗いたグリモワも驚いたのかすぐに顔を背けた。

「もうオーガストの原型もねぇじゃねぇかよ…?」

部屋からは鼻がひしゃげるほどの鉄と腐敗した肉の匂いがひどく充満していて、壁や天井にはところどころ血が染みていた。床には大きな血溜まりがある。その血溜まりの真ん中にミンチようにされたオーガストと、人間なのか怪しい形をした骨たちが転がっていた。

グリモワが骨を見てふと疑問を口にした。

「これ本当に人間の死体か?…その骨指が4本しかないように見えるんですけど。」

シュルトが躊躇いなく部屋に足を踏み入れて一つの骨を手に取った。それはおそらく足の骨だ。だが骨の状態は綺麗なのにも関わらず、指が4本しかなかった。

「オーガストは人だよな?」

「そうとしか見えなかったっすけど…。こりゃあ豚の骨に似てるな。」

「お前、豚も捕まえてきてたのか?」

「いや昨日のノウサギだけっすよ?」

シュルトとグリモワは互いになぜこんなとこに豚の骨があるのか頭を悩ませていた。

「よく平気っすね…俺ちょっと気持ち悪くなってきたかも…。」

後ろにいたルーカスが弱々しく呟く。

「おっと悪い、大丈夫か?」

グリモワが振り返って顔色を悪くしたルーカスを支えてやる。

「ルーカス。てめぇは俺様の部屋で休んでろ。あとほかの奴らに朝飯は勝手に食ってろって伝えておけ。」

「すんませんボス…俺だって盗賊団の一員なのに…。」

「気にすんな。今のテメェの仕事はその顔色を戻すことだな!」

シュルトはルーカスを安心させるようにニヤリと口角を上げた。

 「ボス…。すんません、俺は失礼するっす…。」

そうしてルーカスはトボトボと部屋を後にした。


残ったシュルトとグリモワはオーガストと思われる死体を調べてみることにした。

「ボス、これどうするんすか?」

グリモワがいくつかの骨を手に取りながらシュルトの隣に並ぶように立った。

「なんでこんなとこに豚の骨があるんすかね?」

「俺様に聞くなよ。」

「はーい、すんませんしたー。」

「んで?これどうするよ?」

「いや俺に言われても…」

グリモワは困ったようにシュルトを見やる。

「んじゃ片付けといてくれ。俺様は飯食いに行くわ。」

「え、これ俺一人で片付けるんすか?」

「あたりめぇだろ?お前も一応新入りなんだから。それに俺様は腹減ったからな。」

そう言ってグリモワの背中をバシバシ叩いてキッチンの方に去っていった。

「一人で片付けるって…んな無茶な…。」

そう言いつつも椅子に登り、天井を雑巾で拭いていく。そして壁を拭いて床に落ちている骨を片付け始めた。骨を拾っていると、その中に小さな丸い目玉が混ざっていた。

「うわきっしょ…なんだこれ?…目?」

その目玉の瞳孔の中には丸々と豚のようなものが描かれていた。

「…捨てとくか。」

グリモワはその目に戦慄し、ゴミの袋に投げ込んだ。

「終わったか?」

シュルトがフランクフルトを食べながら顔を出した。

「そんなん食ってねぇで手伝ってくださいよ…何時間片付けてると思ってるんすか?」

「まだ3時間くらいだろ?余裕だっての。ゴミは適当に食わせとけよ〜。」

そう言ってどこかにふらふらと去っていった。

「はぁ…ゴミ処理も俺がやるのかよ。」

文句を言いつつもしっかりとゴミをまとめ、焼却炉に放り込んだ。

「終わったすよ、ボス。」

そうしチェシュルトのいるキッチンに顔を出すと、ウイスキーを持ったまま寝落ちているボスが目に入った。

「はぁ…?いいや、俺も飯食うか。」

グリモワはシュルトを起こすことなく、棚からバゲットを取り出してバターを塗って美味しそうに頬張った。




<カンザス州の農村>

ロゼとリズは家から離れ、農村の隣にある森の中の小屋に来ていた。二人とも小屋につくや否や座り込んで話さない。道中も会話はなかった。やがて日が落ちる頃になるとロゼの腹がぐうぅっと音を鳴らした。

「お腹すいた?」

リズがロゼの方を向き直り、掠れた声で問う。

「…ちょっとだけ。」

ロゼは顔を伏せたまま小さな声で答える。

「なんか狩りに行く?」

リズが立ち上がりながら言った。

「ごめん、ちょっとあんまり動きたくないや…。」

ロゼは相変わらず俯いたままだ。リズはいつも快活で元気なロゼが沈鬱している様子にどうしたらいいかわからなくなる。ロゼの元気がなくなるのは風邪の時くらいなもので珍しいことだった。だが流石にあんなものを見たばかりのロゼに元気を出せなどと言えるわけのなく、一人で狩りに出ることにした。

「じゃあ私が獲ってくるから待ってろ。すぐ戻るよ。」

しゃがんで目線を合わせてロゼにそう告げて壁にかけてあった長銃をもち、外に出た。その様子をロゼは何も言わずに、俯きながらも目で追っていた。

そうして、森の中に狩りに出かけたリズは、農村の豚舎から逃げ出したであろう丸々と豚がゆっくり歩いているところを見つけた。静かに茂みに隠れ、茂みの隙間から銃口をその豚に向ける。豚が歩みを止めたところで照準を合わせて撃発した。その弾丸は見事に豚の心臓を撃ち抜き、豚はそのままどすんと倒れた。リズは周りをキョロキョロ見て、他に何もいないか確認したあと仕留めた豚に近づいた。そして持ってきた解体用のナイフでその場で解体していく。そしてロゼと食べる部分だけを手早く袋に入れて持って来た道を戻っていった。

「ロゼー。帰ったよ。」

リズは豚の肉が入った袋を外に置いて、一度小屋に入りロゼの様子を確認する。

「思ったより早かったね、おかえり。」

ロゼは顔を上げてリズと目を合わせ、小さな声で迎え入れた。

「ただいま。もうちょっと待ってられるか?すぐ飯作ってくるから。」

「うん。待ってる。ありがと、リズ。」

ロゼは先ほどよりも気分がマシになったようで少し微笑んで答えた。リズはその様子に少し安堵し、もう一度外に出て小屋から少し離れたひらけた場所で解体しておいた豚の肉を持ってきた。リズはロゼの好物であるハンバーグを作ることにした。肉から骨を外してナイフで肉を叩き、ミンチにしていく。調味料は持ち合わせていなかったので、ミンチにした肉をそのまま丸めて石に乗せた。その後落ちていた木の枝と葉を集めて、小屋にあったマッチで火を起こす。ある程度火が大きくなったら、いい感じの形の石を熱して肉を焼く。そしてその間に血で汚れた自分の体を小屋の裏にある池で洗った。火の元へ戻るといい感じに石が熱々になり、肉が焼けていた。適当な大きな葉を水で洗い、焼いた肉を乗せて小屋の中にいるロゼに持っていく。

「できたよ。ロゼ。調味料とかなかったから味付けはしてないけど食えるはずだ。」

ロゼは椅子に座ってぼーっとしていた。リズの声を聞くとゆっくりリズの方を向いて目を合わせる。

「ありがと。いただきます。」

ロゼはそのハンバーグを受け取るとゆっくり食べ始めた。

読んでいただきありがとうございました。また数日後の更新になるかと思いますが、よろしくお願いします。ゆっくりと更新していく予定です。

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