誰がドロシーを殺したか?
初めまして。でうすと申します。初の執筆ですので暖かく見守っていただけたら嬉しいです。「オズの魔法使い」を元にした殺人ミステリー小説ですので、殺人表現などご理解の上読み進めていただけたらなと思います。毎話5000字から1万字程度のサクッと読める小説を目指しています。
<オズの国>
「さぁ、ドロシー。あなたが履いているその銀の靴のかかとを3回合わせてごらんなさい。靴の魔法で帰れるはずだわ。」
南の良い魔女グリンダがドロシーに言った。
「わかったわ!ありがとう、南の魔女さん。これで帰れるのね…!」
ドロシーは胸に期待を膨らませ、銀の靴のかかとを合わせようとした。かかしもブリキの木こりもライオンも皆笑顔でドロシーに別れを告げている。
ここは「オズの国」魔女や魔法使いが行き交う不思議な世界。そこに別世界の住人、ドロシーが迷い込んでいた。「オズの国」の住人と協力し、やっとの思いでドロシーは別世界に帰る方法を見つけた。
「みんな、ありがとう。またいつか会いま______」
ドロシーが銀の靴のかかとを合わせる音がなる直前、ドロシーの胸を後ろから一発の弾丸が貫通した。その弾丸はドロシーの心臓を貫通していた。気づけばドロシーは正面から床に倒れ込んでいた。あたりに真っ赤な液体が広がる。
「ドロシー!?」
一番にライオンが声を上げ、床に横たわっているドロシーに駆け寄る。それに続いてかかしとブリキの木こりも慌てて駆け寄る。
「ドロシー…!!どうしたんですか!?なんで…」
ブリキの木こりがまるで顔を青ざめるかのように声を窄めながら言う。かかしは声も出せずに呆然とドロシーを一歩後ろから見つめて座り込んでいる。どれだけ体をお揺らしても、大きな声で呼びかけても、ドロシーはまるで人形のように真っ暗な目で、ぴくりとも動かなかった。
<カンザス州の農村>
ある大きな森の中。リズとロゼという双子の年若い猟師が獲物を狙って息を潜めていた。リズが茂みの奥に見える大きな雄鹿にライフルの照準を定め、発砲する。その弾丸は見事に心臓を撃ち抜いた。
「仕留めた?」
「仕留めたよ。今日の夜ご飯は鹿肉だね」
ひょっこりと後ろから顔を出したロゼが聞く。それにリズは自慢げにこたえる。
「やった!はやく捌いてかあさんに見せに行こ!」
ロゼが嬉々として駆け出す。それに続くようにリズも歩き出す。
「そうだね。はやくかあさんに見せよう。褒めてくれるかなぁ…」
「褒めてくれるって!僕が綺麗に捌いてあげる!」
双子は2人で鹿を縛り上げて小屋に連れて帰る。するとロゼが鹿を綺麗に部位ごとに捌いてみせた。
「どう?ねぇ見てよリズー!」
血まみれの格好のままロゼはリズに抱きつく。
「わかったからちょっと離れろ。私すごく汚れたんだけど。」
「いいじゃん別にー。洗えばいいって」
「そういう問題じゃないんだよ。血は洗っても落ちにくいの。ちゃんと覚えとけよ。」
「はぁい…」
リズはすぐさま風呂に向かって血を落とした。ロゼは濡れたタオルで血を拭き取って捌いた鹿でステーキを3枚焼いた。
「リズ〜、かあさ〜ん、もうステーキ焼けるよー!」
ちょうど風呂から出たリズはそこまで長くないシースルーマッシュの髪を丁寧に拭きながら、リビングに向かう前にかあさんを探すことにした。いつも寝室で編み物をしているので寝室を覗いたが、誰もいなかった。
「かあさーん?」
呼びかけても返事がなかったので洗濯物でも回収しに行ったのかと思って裏庭に出ようと裏口でサンダルを履いた。裏口の錆びたドアを開けようとすると、ロゼが後ろの廊下から拗ねた様子で駆けてきた。
「ねぇ、ご飯できてるんだけどー。かあさんどこ行ったの?」
「今探してんだよ。いつもの部屋にいなかったから洗濯でも回収しに行ってんじゃねぇかって。」
「部屋にいなかったの?珍しいね。じゃあご飯よそっておくからちゃんとかあさん連れてきてね〜?」
「わかってるよ。」
ロゼは踵を返してリビングのの方に足早に戻って行った。
リズはロゼを相変わらず忙しのないやつだなと思いながら、キィキィと錆びた音のする裏口のドアを開けた。リズは晴天の中、どうせかあさんはまた鼻歌でも歌いながら洗濯物を取り込んでいるんだろう、と思って裏庭に足を踏み入れた。裏庭に出て太陽の光に目が慣れていくと、そこには誰もいなかった。リズはかあさんが珍しく森の方にでも入って行ったのかと思い探しに行くかと足を進めようとしたその時、洗濯かごが置かれているすぐ隣の芝に人が横たわっているのを見つけた。その横たわっている人にはシーツがかかっており、それがかあさんであると気がつくのに数秒かかった。
「…は?……なに?かあさん?」
リズが近づいて横たわったかあさんの顔を覗くと、生気のない真っ白な色をしていた。目は輝きを失っており、ぴくりとも動かなかった。そしてリズがシーツを捲ってみると両足首と両手首、そして首に縄で締められたような痕があった。服装は朝にロゼとリズが見たそのままでリズはかあさん死んだとすぐには理解ができなかった。幸い他に怪我をしている様子はなかったが、リズはかあさんを見つめたままその場を動くことができなかった。リズは怖くなってその死体から跳ねるように離れた。
「なに…?かあさん、なにしてんの…?」
呼吸が浅くなり、汗が噴き出てくる。頭の方から血の気が引いていく感覚だけがはっきりしていた。やがてリズは足がもつれてそのまましゃがみ込んだ。声を発することもできず死体を見つめたまま動けなかった。
ロゼは鼻歌を歌いながらかあさんとリズを待つ間に鹿肉をふんだんに使ったカレーをよそっていた。そして食事の準備が終わり、しばらく待っていたが戻ってこない二人を流石に不審に思ったロゼは裏庭につながっている裏口に向かった。そして裏口のドアノブに手をかけながらドアの向こう側にいるはずのリズに話しかけた。
「ねぇ、流石に遅くな〜い?」
そう言いながらドアノブを回した。そして裏庭の光景が目に飛び込んできた。
「え、リズ何してるの〜?」
初めはただリズが固まっているだけに見えたが、ロゼはリズの隣まで足を進めるとリズと同じものを見て、足が止まった。数十秒固まって、ロゼはそれが母さんであると理解すると顔を背けて壁に手をついてしゃがみ込んだ。
「っ…おぇ。っけっほけほ…っはぁ。」
リズは理解が追いつかずに固まったまま、ロゼは吐き気を催し顔を背けた。双子はしばらくそのまま各々状況を理解するのに必死だった。
数十分経ち、死んでしまったはずのかあさんの死体に何者かにどこからか刃で捌かれるように血飛沫をあげてバラバラになっていく。
「ひっ…。なに…?やだ…ほんとなんなんだよ…」
リズはそれを見てかあさんから急いで這うように離れた。
「……にげよ?リズ、怖いよ…。なんなの…。」
ロゼはかあさんが死んでしまったショックよりも目の前で起きたことの恐怖に駆られ、リズの腕を力無く掴んで泣きそうになった。
「かあさんは…?」
リズがバラバラになっていく母さんを見つめながらそういうと、ロゼは震える手でリズの腕を引きながら言った。
「…危険じゃない…?こんなの絶対危険じゃん…!ねぇ逃げようよ…リズ…。」
それにリズは黙り込んだ。そしてロゼに寄りかかるようにして立ち上がった。
「…行こう。」
リズがロゼの腰に手を回して支えるようにして立ち上がらせると、二人はよろよろとバラバラになっていくかあさんに背を向け、森の方へと逃げていく。
双子が離れた後、やがてかあさんバラバラなり、原型を留めていなかった。そして奇妙なことにカリカリに揚げられたように美味しそうな湯気が立ち昇っていた。しばらくすると誰かに食べられたかのように骨だけになってしまった。
<オズの国>
「やるじゃねぇか新入りぃ!」
ある盗賊団のボスが新入りの背中をバシバシ叩く。
「いてぇです…ボス。叩きすぎだろ…」
「いいじゃねぇか!てめぇが初めて獲物を一人で仕留めたんだぜ?」
「獲物っつってもただのノウサギっすよ?運が良かっただけだろ」
「それでも罠を仕掛けたのはてめぇだ。これぁな、グリモワの手柄だ!」
盗賊団のボスは豪快に笑いながらウイスキーを瓶のままラッパ飲みしている。
「ボス…そんな飲み方いいんすか?姉さんに取り上げられるんじゃねぇっすか?」
「んなの見つかんなけりゃいいんだよ。」
酒と男の匂いが充満している物騒な空間がこの盗賊団の根城だった。この盗賊団の根城であるこの洞窟の入り口はラピスラズリが壁に埋め込まれており、とても静かで厳かな雰囲気を感じる。少し奥に進んでみると昼時でも太陽の光は全く入らず、夜は月明かりも入らないほどの暗闇に包まれている。蝋燭の火がなければ足元すらも見えない。この盗賊団にとってこの洞窟は他とない人目を避けるのには都合のいい根城として長年住み着いていた。
そして盗賊団のボスである、シュルトはこの辺りでは知らない人はいないほどの名の知れた悪人だ。
「このノウサギどうするんすか?」
盗賊団の新入り、グリモワが両手足と首を縄で括られて絶命しているノウサギを持ち上げた。
「食っちまうか?揚げて食うと美味いだろ。」
「そっすね。んじゃ捌いて揚げてきまーす。」
グリモワはだるそうにノウサギを持ったまま、ゆったりとした足取りで部屋から出ていった。シュルトはそれを黙って見送ると、ソファからベッドに移動してどかっと横になった。天井に向かって手をかかげると、グリモワが初仕事で西の魔女の家から盗んできた大きななルビーのはめられた金色の腕輪が光る。シュルトはそれを満足げに眺めていた。どうやらグリモワはシュルトのお気に入りらしい。
「ボス〜、できたっすよー。…またその腕輪見てるんすか?気恥ずかしいんでやめてほしいんすけど。」
いつの間にか時間が経っていたらしく、皿に揚げたノウサギの肉を乗せてグリモワがノックもなく部屋に入ってきた。
「もうできたのか?早いじゃねぇか。さすが俺様の新入りだな!」
シュルトは豪快に跳ね起きて、ガハハと笑いながら胡座をかいて座った。
「そっすねー。んじゃこれここ置くっすよ?」
グリモワは慣れたように軽くあしらうと揚げたノウサギの乗った皿をやたらと高そうな綺麗な模様の入った木製のテーブルの上に置いた。
この先の物語も数日以内に投稿しようかと思っていますので、そちらも読んでいただけますと嬉しいです。




