表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の老騎士、定年退職して裏路地で屋台を始める  作者: 犬斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/16

第3話 達人の指導

 私はつい先日、四十五年間勤め上げた騎士団を定年退職した。

 一般騎士の階級ではあるが、退職金も支払われている。

 これも私が訴えた待遇の一つだ。

 とはいえ、自分のために訴えたわけではない。

 それに一般騎士ということで、貰える金額は最低ラインだった。


 ただ、それはあくまでも私の場合であり、定年退職するほど永き年数を勤めれば、通常は必ず管理職に上がる。

 私以外の騎士が定年退職する場合は、満足いく金額が支給されるだろう。


「いただけるだけありがたい。これを資金の一部にできる」


 引退したら、一つだけやってみたいことがあった。

 それは食堂だ。

 騎士を引退したら自分の店を持ちたいと思っていた。

 

 騎士一筋だった私の唯一の趣味は料理だ。

 無事に帰還し、自宅で自分のために食事を作る。

 これからは、その料理を人に味わってもらう。

 それが第二の人生の夢だ。


 それに、私が住むアルジェの街は、ロルト王国の第三都市という大都市でありながら、山と海に囲まれその恵みを享受する。

 食材が豊富で、グルメの街としても有名だ。


「さあ、行ってくるか」


 これから不動産屋を回って物件探しだ。

 年甲斐にもなく胸が踊る。

 第二の人生に希望を抱きながら家を出た。


 ***


 広大なアルジェの街には、いくつもの繁華街がある。

 少し離れた地区へ行くつもりなので、近道のために裏路地へ入った。


「や、やめてください!」


 路地の市場通りに入ると叫び声が聞こえた。

 この市場は、ここ最近急激に治安が悪化している。

 騎士団も見回りしているが、常に来られるわけではない。


「てめー! 分かってんのか! 殺すぞ!」

「や、やめてください……」


 屋台で野菜を売る年配の男性に、若い男が怒鳴っていた。

 老人は恐怖で萎縮している。

 若い男は屋台を何度も蹴ったようで、壁板が何枚か割れていた。


「やめないか」


 私は男の腕を掴んだ。


「んだ! このジジイ! 殺すぞ!」


 男は私の腕を振り払い、即座に身構えた。

 どうやら戦い慣れしているようだ。

 男は即座にナイフを抜いた。


「どうしたんすか!」

「あ? 揉め事か!?」

「何だこのジジイ」


 路地から数人の男たちが姿を見せた。

 仲間だろう。


「このジジイがいきなり腕を掴んできたんだよ」

「おいおい、暴力はいかんよ?」

「帰って茶でも飲んでろって、ジジイ」

「余計な首を突っ込みやがって。マジで殺すぞ?」


 最初の男を含めて全部で四人。

 一人はすでにナイフを抜いている。

 ナイフ使いは厄介だ。

 至近距離なら最強の武器と言える。

 達人であればの話だが。


「ナイフをしまいなさい。今ならそう大きな罪にはならない」


 男たちは目を見開き、私の顔を見つめた。


「「「「ぎゃはははは!」」」」


 四人がバカにした笑い声を上げる。


「罪ってなんなんだよ! バカか、ジジイ! 怖いのか? あ? 怖いんだろ!」


 男が私に向かってナイフを大げさに振る。

 威嚇のつもりだろう。


 だが、私はその手をあえて掴み、背負いながら男を背中から石畳に叩きつける。

 同時に肘からボキッと鈍い音が聞こえた。

 曲がらないはずの方向に、関節が折れ曲がっている。


「ぎゃああああ!」


 私は肘の関節をへし折った。


「騎士に刃物を向けたのだ。死んでもおかしくないのだぞ?」

「て、てめえ!」


 残りの三人が剣を抜いた。

 今の私は丸腰だ。

 しかし、この程度なら全く問題ない。

 剣の抜き方で、すでに力量を判別している。


 私は左右の手を振り上げ、二人の手首に手刀を叩き込んだ。

 二人の男は同時に剣を地面に落とす。


「握りが甘い。柄はしっかりと握りなさい」

「「ぐああああ!」」


 腕を押さえながら、地面にうずくまる二人の男。


「こ、このジジイが!」


 最後の一人が叫びながら、私に向かって剣を振り上げた。


「もっと脇を締めなさい」


 振り下ろされる剣よりも速く、私は男の喉に手刀を振り抜いた。

 抜剣術の応用だ。


「ぐぼぉぉっ!」


 男は泡を吹いてその場に倒れた。


「現行犯で拘束す――」


 自然と出た言葉だが、自分の発言の誤りに気づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ