表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の老騎士、定年退職して裏路地で屋台を始める  作者: 犬斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/17

第12話 串焼きルマート

 私は六百万リアを現金で支払った。

 貯金は大きく減ったが、一人で暮らしてきたし、それほど金を使わない生活だったため問題ない。


 仮に屋台の収益がなくとも、しばらくはやっていける資金がある。

 とはいえ、そうなったら私の老後は終わりだ。

 必死に頑張るしかない。


 私は屋台の改修を開始した。

 元々野菜の販売店だったため、キッチンを設置し、カウンター席を増設。

 キッチンなどの専門的な部分は業者に依頼したが、それ以外は自分で行った。


 慣れない建築作業は大変だったが、自分の店になるということで充実感を持って作業ができた。


「ふう。剣と違って金槌はいいものだな。物が残るのだから」


 私は剣しか振ってこなかった。

 人を斬ることが仕事だ。

 それは守ることでもあったが、破壊することでもあった。

 もちろん自分の剣に誇りを持っているし、後悔など微塵もない。

 だが、作るという行為はとても楽しかった。


「これからは料理を作り、お客さんに喜んでもらう。楽しみだ。はは」


 ***


 作業開始から約二週間が経過し、ついに屋台が完成した。


「ルマート様! 看板をかけてください!」


 手伝いに来てくれたルディが、店の看板を手渡してくれた。

 私が自分で彫った木彫りの看板だ。


『串焼きルマート』


 看板を屋台の壁に吊るす。

 文字は不格好だし、細かく見ると歪んでいる。

 それでも心を込めて彫った看板を見ると、込み上げるものがあった。


「私の……店だ」


 不格好な看板が、さらに歪んで見える。

 年を取ると涙もろくて仕方がない。

 だが、騎士時代からの夢が叶ったのだ。


 五十歳を超えて引退が現実のものとして迫った時に、私は自分自身の人生を振り返った。


 騎士団の改革という目標を実現し、後世に道を残すことができたと自負している。

 また、次世代の騎士団を率いる四騎士(クトゥルテス)を育てた。

 彼らのおかげで、騎士を目指す者は年々増えている。

 一昔前は、騎士に未来はないとまで言われていたが、よくここまで持ち直したものだ。


 騎士として私はやりきった。

 だから第二の人生は、自分のやりたい道へ進んでみたい。


「好奇心と探究心か……。はは」


 私は自分自身の言葉を思い出した。

 いくつになっても挑戦はできる。


「ルマート様、おめでとうございます! いよいよ開店ですね!」

「ルディ、わざわざ来てくれてありがとう」

「とんでもないです!」


 私の最後の弟子であるルディ。

 若き天才剣士が満面の笑みを見せてくれた。

 将軍という役職で忙しい中、騎士団を退団した私のために、こうして会いに来てくれるなんて感謝しかない。


「師のお店なんですから当然です。他のお三方が残念がってましたよ」

「みんなにいつでも来てほしいと伝えてもらえるかな」

「はい!」

「さて、せっかく来たんだ。ルディ、食べていきなさい」

「え? よろしいのですか?」

「もちろんだ。フヴィオさんが新鮮な野菜をたくさんくださったからね。野菜も焼くよ。素焼きでも旨いんだぞ」

「楽しみです!」


 さっそく焼くと、旨そうに串焼きを頬張るルディ。


「こ、これは……」


 突然、ルディの表情が曇った。

 もしかして、不味かったのだろうか。

 それとも、何か調理でミスをしたのかもしれない。


「ルマート様、大変申し訳ないのですが……」

「ど、どうした?」

「あと、五本食べてもいいですか?」


 バツの悪そうな笑みを浮かべるルディ。


「あっはっは! もちろんだ。若者はたくさん食べなさい」

「ありがとうございます! サーシャさんに自慢します!」


 遠慮なく食べるルディを見て、嬉しさが込み上げる。


「この道を選んでよかった」


 私が騎士団に残した未来は明るい。

 思い残すことなく、次の道へ進むことができる。


 第二の人生の始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ