食卓と家族
襖を開けると、両親が揃っていた。
上座には父である涼風陣一が、その左側に母である涼風楓が座って、話していた。
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう、神楽」
「おはよう、神楽ちゃん。今日は葵くんが来るのよね?お母様、お菓子作ろうかしら」
微笑みながら挨拶を返してくれるお父様と、久しぶりに来る葵にわくわくしているお母様。
お父様は王家が使用する魔法薬を調合し、王宮に届ける仕事をしながら、都での困りごとを陛下の勅命で承っている。
お母様はお父様と結婚するまでは王国近衛師団の治癒部で働いていた。
元々男爵家の令嬢だったのだけれど、実家では自分で稼ぐのがモットーだったらしく、おそろしく魔女の素質があったお母様は治癒部で働いていたらしい。
私がお母様の前の定位置に座るといつも通り銘々膳に食事が運ばれてきた。
真っ白の炊きたてのご飯に、前菜、お味噌汁、そして塩鮭のみりん漬け焼き。
お父様が食べ始めたのを見て私たちも食事に手を付ける。
わ、塩鮭のみりん漬け焼きは身がほろほろとしていて美味しい。
あっという間にぺろりと平らげて、私は手を合わせて「ご馳走様でした」とつぶやく。
「では、私は葵を迎える準備がありますので先に失礼します!」
「いってらっしゃい、怪我には気をつけるんだよ」
「分かりましたわ、お父様。あとで葵を連れてきますね」
襖を閉めて、廊下を強かに走る。後ろから伊織の声が聞こえるけど聞かないふりをする。だって神楽、子どもだもの。
私は一回部屋に戻って、ずっと使っている木刀と杖を取って窓から外に出る。
ちなみにここから外に出るのを知っているのは伊織と小夜だけ。
小夜はしぶしぶ了解してくれているけれど初めてバレた時は「危ないでしょう!」と怒られた。
伊織は、すごく面白がっていた。「令嬢ですよね?やんちゃがすぎるでしょうよ」って。
やっぱり、わたしのこと馬鹿にしてる節あるよね??
いや今更か、と考えることを放棄し、暇だったから木刀をくるくると体に纏わせるように回す。
木刀の手持ち部分につけている天然の桜石の結晶がキラキラと太陽の光に反射して桃色の光を淡く通す。
桜石とは魔力含有量が高い魔法石だ。前、アサナギの山に私と葵で遊びに行った時に見つけて持って帰ってきたものだ。
木刀を回し続けていると後ろに人影を感じた。木刀を落として後ろを勢いよく振り返る。
「葵!いらっしゃい!」
「おう、久しぶりだな。神楽」




