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魔法に夢中な少女の幸せな朝

 小さな窓から差す柔らかな朝日が私の頬を照らし、また新しい日が始まる。

「ふわぁ、あ、また私、変なところで寝たわね」

 魔法薬物調合台の前で私、涼風神楽(すずかぜ かぐら)は体を起こした。

 あくびを噛み殺して窓を開けると、ここ不知火王国(しらぬいおうこく)特種のエレメンタルバードが

 私に朝を告げるように私の肩に乗った。

「おはよう、ピピ!」

 そういうとピピは嬉しそうに鳴いて私に頬ずりをした。

 エレメンタルバードはこの世界の魔法属性の炎、水、電気、風、地、光、闇にそって7種存在し、

 主人の得意な魔法属性によってエレメンタルバードの属性も変化する。私は炎属性の魔法を得意とするし、なにより炎の体質なので、ピピも炎属性だ。

 この世界には、魔法を使うことが出来る()()を持つ人間と持たない人間が存在する。

 今現在、世界人口の約3割が魔力を保持し、主に貴族や王族から魔法が発現することが多い。

 例に漏れず私も伯爵家の一人娘。優しくて私に魔法について教えてくれるお父様と、名高い魔女である

 美しく芯の強いお母様と、いつも私の魔法の練習に付き合ってくれる暖かい使用人たちと暮らしている。

 だけれど魔力を持つ人間の中にも、体質的に属性が決まる人間がごく少数だが、存在する。

 7種類の魔法属性には一つ一つに、司る神様がいて、その神様に愛された存在だ。これは貴族や王族ということは関係なく、産まれてくる前に授かるものだという。

 私も伯爵家の令嬢だが、炎の体質をもって産まれたときには、魔女への道は確定していたようなものだった。

 そして私は、魔法に触れながら育ち、見事に魔法にハマった。

 どうしてこの薬は調合でこの作用になるのか、どうしてこの魔法は幼心を思い出さねばならないのか、

 分からないことは沢山あったけれど、分からないことを考えることを齢10歳の私は楽しんでいる。

 その理由に私の幼馴染の存在があった。

 私の住む地域は、不知火王国の都であるハクユウから山を2つほど超えた涼風領・アサナギという自然豊かな場所だ。

 そして、そのすぐ隣の領地には子爵家である氷室領があり、その氷室家の嫡男である氷室葵(ひむろ あおい)が私のライバルで親友で幼馴染だ。

 天色のストレートな短髪に橙色の瞳。初めて葵とあった3つの頃の私が女の子だと見間違えてしまったほどの整った顔。

 今日は、私の家に葵が遊びに来るので長く伸した赤い髪を高い位置で束ねて、薬品の空き瓶がたくさん置かれている流し台で顔を軽く洗い、白い寝間着用の着物を脱いで、黒と赤の袴を着る。

 朝食のために下階に降りるのはまだ早いし、使用人たちも忙しくしているだろうから、私は昨日失敗した魔法薬を調合する。

 昨日失敗したのは仙薬、ポーションともいうのだろうか。

 戦場で役に立つような代物ではないが、切り傷が塞がる程度の薬だ。

 昨日の失敗は魔法陣を少し歪に描いてしまったから、だと思っている。爆発したし。

 材料をあらかた混ぜ終わって、それを持って庭に出るために窓から降りる。

 2階にある自室から出るくらいはジャンプして木に飛び乗れば、そこから降りられる。

 庭の魔法陣が書けそうな空き空間を見つけて、慎重に魔法陣を描く。

 魔法陣の真ん中に容器に入れた薬になるものを置く。そして私は魔法陣に手をかざして自分に活を入れる。

「よし、できた。次はないわよ、神楽…薰き染めし焔──仙薬を精錬せよ」

 魔法陣の線を描いたところで私の象徴である炎が燃え上がる。

 魔力を魔法陣に向ける。そして、出来上がりを知らせるように魔法陣の線の上で燃えていた炎が消える。

「できた、わね。爆発もしてない。じゃあ、これはあとで葵に渡してみようかな」

「お嬢様、朝食の時間ですよ」

「あ、小夜!おはよう!」

 外で調合をしていたことは使用人にはバレバレだったようだ。

 柊小夜(ひいらぎさよ)は、私の専属侍女で物腰の柔らかい優しい侍女だ。

 優しい目つきに、私よりも少し高い背、そして綺麗な長い黒髪を緩やかに束ねている。

 そして使用人用の橙色の着物を綺麗に着こなしている。

「お嬢、昨日の爆発こりてませんね…今日は葵様が来るというのに…」

「う、うるさいわよ伊織!今日は爆発させてないもの!」

 不敵に私に笑うのは、私のお目付け役の鬼灯伊織(ほおずき いおり)

 私より1つ上で小さい頃から連れ回している使用人だ。

 スラっと私より半尺(15センチ)ほど大きい背で、スタイルが良く顔も整っているので侍女たちに人気だ。

 だが、長い付き合いだからか私に対しては生意気だ。お父様には畏まっているのに、私には生意気。

 私も私で、まあいっか、と思ってしまって使用人より友達っていう意識のほうが強いから舐められるのよね…

 そんなことをもんもんと考えながら、家族の待つ広間の襖を開けた。

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