神楽の前世と、甘い氷菓子。
見世物小屋に行った日から2週間が経った。
きっとまだ踊り子の彼女はあそこで舞っているのでしょうね。綺麗だったなあ。
そう思いながら私は藍苺ときび砂糖を混ぜる。
藍苺とは市場で売っていたもので南の国のユルノヴァン王国から入ってきた、別名ブルーベリーという果物だそうだ。
魔術師のツテで聞いてみると、魔力回復に良いそうなので暑い日にぴったりのお菓子を作ろうと思ったのだ。
今日は葵も早く帰ってくるし、マスターも早帰りと言っていたから早く作らなくちゃいけないわね。
鍋にブルーベリーときび砂糖を混ぜていたものを入れて少し弱い火にかける。
「薫り立つは不滅の焔──熱を帯びよ」
そして少しだけ取り分けて、残りの分は更に少しの間だけ煮る。
そして蜜柑の果汁を少しだけ加えて、また少しだけ煮る。
熱いうちはサラサラしているけれど、時間が経てば少し固まるらしいので瓶に詰めて冷ます。
その間に水を飲料用の水を汲んできて拳くらいの大きさの氷にする。
「薫り立つは不滅の焔──個体にせよ。ふう、やっぱり私には炎属性の魔法が合うわね、水属性の魔法や結界術はどうにも繊細で難しいし」
屋敷に1人だと独り言が捗る。うーん、昔から一人遊びは苦手だったんだけどな。
はじめの方に取り分けておいたブルーベリーを少し水属性の冷気で冷やして、風属性の魔法を使って氷を器にゴリゴリと削りいれる。
「手で削るよりも絶対に風属性の魔法を使ったほうがふわふわの氷が出来るのよねえ」
そう言いながら3つの器に盛ったふわふわの氷の上に冷やしたブルーベリーと瓶に詰めていた異国の料理というジャムを綺麗に乗せる。
そして今日は暑いから塩を少しだけパラパラと落とすとホノお手製ブルーベリーかき氷の完成。
「ふふふ、甘いブルーベリーに塩って意外と合うのよね」
そう言いながら水属性の冷気で冷やしていると、屋敷の扉が開いた音がした。
「ただいま、帰ったよホノ〜」
「ただいま」
暑そうな格好で外に行っていたらしい2人は汗だくで帰ってきた。
魔術師は体内に魔力を溜め込んでいるから代謝がいい人が多くて汗っかきな人も多いのよね。私もそう。
「おかえりなさい!かき氷食べる?」
「おお、今噂の藍苺かい?同僚が甘かったと言っていたよ」
「暑いせいで魔力がもろに減った…俺も食べる」
「ふふ、分かったわ。匙を持ってくるわね」
幸せに氷菓子を啄んだこの日の夜、私たちに転機が訪れる。




