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鬼追師の姫緒外伝 悪夢の降る町  作者: カンキリ


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終幕!この町のために!

「馬鹿みたい。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのかしらん」

 レンレンが改めて雷神の御符と向き合った。

「どんなに使いづらいとは言え、所詮アンタは符術のために作られた御符。もしも――、もしも使えないとしたら役立たずはアンタの方じゃないのよん!」

 そう言ってズイと一歩前に進み出る。

「たとい、ほんとに使えない御符だったとしても、いえ、そうならば尚の事」

 そう言ってレンレンがアイパッチに手をかけた。

「私が使ってあげるわよ。なぜならば――。なぜならば、私の『この眼』は――。我が邪眼は天より授かりし鬼才!故に、我!天才なり!天才超級符術師ネモ・レンレン!!それが私!だから『私で無ければ駄目』だからよ!」

 レンレンがアイパッチをむしり取ると狂気の光を孕む硝子の虹彩が出現した!

「我に『(つか)えろ』雷神の御符!」

 雷神の御符から、絹の糸よりも細く、そして輝く一筋の光が天空目がけて登って行く。

 そして――。

 轟音とともに世界が真っ白に輝いた。

 やがて、ゆっくりと輝きが消えていき、辺りはまた闇に包まれる。

 空にはタルトが浮かび、闇は相変わらず溶け出して地上にしたたり落ちていた。

 ただ、轟音の余韻だけが地鳴りのように――。

 余韻?

 大きくなっていく――。

 余韻が――だんだんと大きくなっていく。

 もはや、余韻ではない!

 やがてそれは地鳴りとなる!

 巨大な和太鼓を乱れ打つような荒々しい鼓動が、大地を揺るがし出す!

 その鼓動とともに奴らは海からやって来た!

 始めそれは、沖に湧き立つ白波かと思われた。

 しかし、その白波は、うねり、逆巻きながら何時までも消えること無く、真っ直ぐ竜宮町目がけてやって来る!

 津波か?

 いや、それは――それこそは!水平線を埋め尽くし、水面を滑るように飛んでくる、数千匹の白い巨大な龍の群れだった!

 群れは、競うように、争うように、我先に竜宮町へと押し寄せて、海岸から町並みへと突き進む!

 龍たちには実態が無いらしく、建造物や人などにぶつかると、その直後、大きな水しぶきが、ぶつかった物から立ち上がったが、龍たちは何事も無かったかのように通り抜けて行く。

 しかし、ひとたび妖怪を見つけると、突き出た顎門あぎとを大きく開いて真っ赤な口蓋を晒し、すくい上げるようにして数十匹を一度にくわえ込んで、そのまま空へと上昇しながら喰ってしまうのだった!

 町の上空を無数の龍が舞う!

 そして、獲物を見つけて舞い降りる!

 妖怪達は逃げ惑い、人々はただ呆然と事の成り行きを見守るしかなかった。

「タルトや!タルト!妖怪の姫よ!」

 空に乱れ飛ぶ龍たちの間を、ゴキブリスタイルの生川が、かい潜るように上空のタルトへ向かって、茶色い羽を震わせて飛んでいく。

「妖怪の姫よ!なんとかするでち!なんとかするでち!」

 必死にかい潜っていた生川の両足を、龍のアゴの先端が捉えた!

「ぎゃー!なぜでち!なぜでち!」

 生川は足を食い千切られ、バランスを狂わされて落ちていく!

「ワタチはニンゲンでチ!ワタチはニンゲン――」

 落ちていく生川に龍たちが群がる。

 最初に襲ってきた奴からは、間一髪逃げ出したが腕を喰い千切られた。

 次ぎに襲ってきた奴からも命からがら逃げたしたが、胸を喰い千切られた。

 遂には頭を食われ――バラバラに引き裂かれ、ついにはたいらげられてしまったのだった。



「レンレンはどこ?」

 歩夢が辺りを見回して風小に尋ねた。

 御符が発動して真っ白い輝きに包まれた後――。

 自分の前に立っていたハズのレンレンの姿が消えていた。

「行きましょうか?」

 風小がそう言って悪戯っぽく微笑んだ。

「どこへ?」

 歩夢がそう尋ねると、風小は黙って空を指差す。

 突然、歩夢の周りに疾風が起こった!

 いや――。

 疾風は起こったきり、途切れることなく続いている!

 歩夢は、自分が今、何か物凄く速いものに乗っていて、その速度の風を受けているのだと言う事に気がついた。

 目の前には風小の背中があり、風小の頭には、堕ちないように彼女の右手で支えられたハリガネがへばりついている。

 重力の感じられるほうに目を向けると、遥か下のほうに豊玉の旅館の周りを龍が飛び回っているのが見えた。

 自分の内モモに当たる冷たい感覚は何だろう?

 そして、この周りにあるごつごつと白く輝くタイルのようなものは?

 その時理解した!自分は龍の背に座って上昇しているのだ!

「歩夢さん!私のおヘソの辺りに手を回して、きゅーと捕まっててくださいマセね!」

 風小が言うと、歩夢は言われたとおり、風小の腰に手をまわし、背中に頬をつけてぎゅっとなるまで力を込めた。

「この龍!乗れるの!」

 歩夢が風切り音に負けないように大声で風小にたずねる。

「コツがありますのデスよ!」

 風小がそう言って楽しそうに笑うと、歩夢もつられるように笑った。

「ネモは?!」

 思い出したように歩夢が叫ぶ。

「あそこデスよ!」

 風小は上空の暗闇の中に浮かんでいるタルトを指差す。

 そのタルトに向かって、一際大きな白い龍がぐんぐん上昇しているのが見えた。

 その龍の頭上に立ち、腕を組み胸を張るのは。

 龍にも負けない、白い輝きのチャイナドレスに身を包んだ女性!

「ネモ!」

 レンレンの乗っている龍は歩夢達からかなり離れており、歩夢の声が聞こえるわけが無かったが、歩夢には、レンレンが歩夢の呼びかけに答えて微笑んだように見えた。


「面白いわねん。アンタ」

 タルトに向かってレンレンが口を開いた。

「気に入ったわよん」

 不敵な笑いとともに、レレンレンのガラスの光彩が金色に輝き出す。


「始まりますデスよ!歩夢さん!」

 そう言って風小がハリガネを『かぶった』ままの頭を歩夢の方に巡らせると、歩夢と目が合ったハリガネが、迷惑そうな顔をして「にゃあ」と鳴いた。

「はじまる?」

 訝しげに歩夢が尋ね返す。

「レンレンさんは、自分が操る御符に、その場にある霊力――波動を集中させることによってより強力な呪術を錬金する事が出来るのです!それこそが、レンレンさんの瞳の持つ最大の能力なのデスよ!レンレンさんの瞳が『賢者のひとみ』と呼ばれるゆえんなのデス!」

「賢者の眸!」

「ああ、でもでも――」

 風小がじれったそうに身をよじった。

「?」

「ここの場には、『雷神の御符』を充分に発動させるだけの霊力が見当たりませんのデス!これではあの強力な人形の結界を破れかどうか――」

「大丈夫だよ!」

 歩夢が間髪入れず風小に言い返す。

「だってネモだもん!」

 歩夢がそう言うと、一瞬、当惑でただ目を見開いていた風小がにやりと笑った。

「そうでしたねぇ」

 そして、レンレンを乗せて登っていく龍を目で追いながら続ける。

「レンレンさんでしたね」


 レンレンは龍の頭上で、組んでいた腕を広げると天を仰いで叫んだ!

「目覚めよ!町を見立てし守護石たちよ!その力!雷神の御符のもとに開放せよ!」

 町が唸りを上げた!

 地形のあちこちに埋められた、数百――あるいは数千の荒石たちが、まるで、雨粒が水面に落ちるように、光の波紋を広げながらポツポツと、そしてゆっくりと、ゆっくりと輝き出し、それにあわせるように共鳴を開始する!

 町が、震える。

 そして、光が踊り出す!

 共鳴し、輝きと点滅を繰り返し、波紋を広げていく荒石たち!

 石たちの輝きと共鳴の波紋は、加速しながら町全体を包んでいく!

 すると、光は流れを作り出した!

 流れは『ものわけさん』のある山へと向かい、そこで七色の炎のように空に向かって立ち上がり、波のように山肌を滑走する輝くラインとなって町の隅々に流れて行き、地上を埋め尽くしていた闇を祓って行った。

「あしはらえ。よしはらえ。」

 レンレンの瞳の輝きが増して行く。

「満ちたる荒石、守護の力、雷神の御符が統べる」

「あそぼう」

 タルトがそう言って微笑むと、レンレンは『べー』っと紅い舌を出して見せた。

「逝ッチャえ!」

 レンレンの言葉とともに竜宮町を見立てていた荒石が一斉に上空の闇に向かって光を放った。

 闇にぶつかった光たちは、大きく膨れ上がり、闇は、次々に光によって溶かされて行く!

「あそぼう」

 満ちていて行く光の中に溶けながら。

「あそぼ 」

 切なげに――タルトの声がしていたが。

「あ――   」

 やがて。

「      」

何も聞こえなくなった。



 蛍のように。粉雪のように。

 タルトから開放された霊狩蟲たちが漂う――。

 竜宮町に空と星が戻っていた。

 レンレンはものわけさんの祠の前で空を見ている。

「わたしは――」

 雷神の御符と向かい合った時に知った自分の本心。

「私はネモ――」

 誰でもないと名乗りながら、彼女は何者でも無くなることが怖かったのだ。

 自分と言う符術師が有ったことを覚えていて欲しかったのだ。

 霊狩蟲が飛び交う。

 蛍のように。粉雪のように。

「ネモー!」

 声がした。

 懐かしい声。

 駆けて来る。

 懐かしい顔が駆けてくる。

「ネモ!」

 歩夢はレンレンの前まで来ると、興奮したように話し出した。

「俺、見たぜ!ネモが龍に乗ってるの!俺も龍に乗ったんだぜ!」

「歩夢」

 突然レンレンに自分の名前を呼ばれて、歩夢はうろたえる。

「な、なんだ?」

「歩夢。私を見て――。私はここにいる?」

 初めはどきまぎしていた歩夢だったが。

 やがて、真っ直ぐにレンレンと向かい合い。微笑み、口を開いた。

「ネモ――。ネモの目、すっげぇかっこいい!それに綺麗だ!」

 言われて、レンレンは自分がアイパッチを外したままだった事に気づいた。

「そう――。歩夢には、私が見えるのね」

 レンレンが歩夢の両肩に手を添える。

「うん!ならば、私はここに居る。そして――」

 レンレンがゆっくりと歩夢に顔を近づけて行く。

「受け取って。これは――。これは、私のいた『(あかし)』」

 そう言って、そっと歩夢の唇に唇を重ねた。

「!」


(わすれないで)

  (わたしのこと)

(私が此処に居たことを)

 

周りに飛び交う霊狩蟲たちが、そんなことを言っていた。

次回、

『大団円!!』

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