23、自信と安心感
それからも、私は
穂乃果さんと一緒に平和に暮らしていた
家の中ではメイド服ばかりだけど
どこかに出かける時は
穂乃果さんが買ってくれた服を着ている
その服を着ているとなんだか
自信がつくような気がしたから
それは、きっと
穂乃果さんが言ってくれた
私に合ってるという言葉のおかげ
毎日、私に力をくれる言葉
穂乃果さんは、そんな言葉を
たくさん私に言ってくれる
「最初の頃より笑顔が増えたわね」
ある日、穂乃果さんが突然言った
「そうですか?」
私がそう答えると
穂乃果さんは、頷いた
「えぇ、自信がついてる気がする」
「それは、きっと穂乃果さんのおかげです」
「そうなの?」
「はい、穂乃果さんの言葉で
自信がついてます」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね
でも、私にそんな力があるの?」
「はい!」
「うふふ、そんな勢いよく言うのね」
「あ、ごめんなさい」
「いいわよ、ななちゃんの力に
なれてるなら嬉しいわ」
こうして、穂乃果さんと話す時間も楽しい
ここに来てから私はよく話すようになった
昔の自分が見たら驚くんだろうな
こんなに、笑って話して
毎日が輝いていた
新しいことに出会い
新しい物に出会い
そして、何より
新しい自分に出会ったことが嬉しかった
こんなふうに過ごせているのも
全て穂乃果さんのおかげ
私を引っ張り出してくれた
もっと話していたい
もっと色んなことを知りたい
そう思っていた
けど、そんな時間は
長くは続く訳もなく
穂乃果さんのお母様の容態が急変し
付きっきりの生活になった
私は、邪魔をしてはいけないと思い
家事を引き受けた
そして、穂乃果さんは
お母様のいる部屋に篭もりっぱなし
ご飯もまともに食べていないみたいだった
ここしばらく
穂乃果さんの姿を見ていない
ある日、食器などが洗われていて
食事はちゃんとしているんだと知った
それから、しばらく
そんな生活が続いたあと
少し落ち着いてきたらしく
ちょくちょく部屋から出てくるようになった
穂乃果さんの表情は
いつも、疲れと不安が出ていた
何度か話しかけようと思ったが
なんと声をかければいいのか
今は、かけてもいいのか分からなかった
そんな中私の心の中には
少し不満があった
どうして私を頼ってくれないんだろうと
話しかけていいのかという思いもあるが
それよりも、私は頼りないのかという
疑問の方が強かった
「あの、穂乃果さん」
「どうしたの?」
「私って頼りないですか?」
私がそう聞くと
「え?」と穂乃果さんは、ぽかんとしていた
「私は、介護のことは正直分からないです
けど、できることなら何でもします
だから、頼って欲しいです」
穂乃果さんは、しばらく黙っていた
その瞬間我に返った
また、一人で色々考えて
行動してしまった
こんなふうに余計なことをしてしまうから
友達がいなくなったのに
1人になったのに
また、また、今度は
穂乃果さんに嫌われるのか
そう思った時
「頼りないからじゃないのよ」
と穂乃果さんが言った
私は、声が出なかった
「ごめんなさい、誤解させちゃったのね
頼りないじゃなくて
ただ、これは私がやることだから
ななちゃんに迷惑かけたくなかったのよ」
私は、ずっと黙っていた
「ちゃんと言ってなかったわね
ななちゃんが家事をやってくれて
すごく助かってるわよ」
まだ、声が出なかった
しばらく沈黙が続いた
「あらら、ななちゃんったら
泣くことないじゃない」
突然穂乃果さんが言った言葉に
私は、自分が涙を流していることに
気がついた
泣きたいわけじゃない
なのに、涙が出る
悲しいわけじゃない
嬉しいのに
涙が出ているのに
心は苦しくない
何度涙を拭っても
拭っても
出てくる涙
私は、何度も謝りながら涙を拭った
そんな私を見て
穂乃果さんは、手を広げた
私は、考えるよりも先に
体が穂乃果さんの胸に向かっていた
穂乃果さんは、暖かい
誰よりも暖かい
心臓の音までもが優しい
私を包み込む腕も全部が優しい
体の力が抜けて座り込んでしまった
けど、私はそんなことに気づかないほど
この人と一緒に入れて良かったと思っていた
出会ってからずっと思っていること
今、ここで言葉にしたいのに
言葉にできない気がする
だって、また涙が溢れちゃいそうだから
また、何も言えなくなっちゃう
私は、ただ
穂乃果さんの胸にうずくまっていた
顔もあげずに
穂乃果さんの顔も見ずに
ずっとうずくまっている
穂乃果さんも何も言わずに
頭を撫でてくれた
声を出していないのに
話していないのに
ずっとここにいてくれる
そんな安心感をくれた
どのくらい経ったのだろうか
落ち着いてきた頃
私の目は腫れていた
私は、こんなみっともない姿を
見せたくなかった
穂乃果さんは、何も言わずに
キッチンに行った
そして、冷たいタオルを持ってきてくれた
この人は、どこまでも優しい
心配になるほどお人好しだ
今まで色々な迷惑をかけたのに
文句1つ言わずに助けてくれる
そして、最後には
さっきみたいに
そばで安心感と大丈夫をくれる
これからは、私もそうありたいと思った
いつか、穂乃果さんに同じことが
できるようになる日が来るように頑張る
そう誓った
その時の私は、この誓いを守ることが
できないことを知らなかった
この平和な生活は
音もなく突然終わりを迎えた




