21、あなたと過ごす時間
鮭のムニエルで距離が縮まってから
今では、2人で料理をするようになった
穂乃果さんにも少し余裕が出てきたみたいで
顔色が少しづつ明るくなっていった
そんな、穂乃果さんが笑うと
あの時よりも、輝いていた
今日は、いつもより早めに頼まれていた
家事が終わって
何をしようかと悩んでいた
漫画を読んでもいいが
最近、ずっと読んでる気がする
なら、テレビでも見る?
いや、今見たい番組はない
じゃあ、何をしようかと考えていると
「ねぇ、今手空いてる?」
と穂乃果さんに聞かれた
私が頷くと
「じゃあ、お出かけしない?
お昼はどこかでランチしてカフェ行ったり
お買い物するの」
「え、でも、お母様は?」
「今は、寝てるから平気よ
たまにこうやって出かけるの」
「そうなんですね」
「嫌だったかしら?」
「いえ、行きたいです」
「なら、行きましょう!」
こうして、穂乃果さんとお出かけを
することになった
これは、気になっていることを
聞くチャンスなのでは!
私は、穂乃果さんのお母さんのこと
そして、凛さんのことが気になっていた
準備を整え家を出て
最寄り駅に向かった
駅には、飲食店も服屋など
色々なものが揃っている
アウトドアパークになっていた
平日なのに奥様方で賑わっていた
まずは、お昼ご飯を食べることにした
穂乃果さんに何個か候補をあげてもらった
どれもオシャレなお店ばかりだった
私は、迷った結果
穂乃果さんの一番おすすめのお店に
行くことにした
メニューを開くとどれもオシャレで
美味しそうな料理が書かれていた
いつも、こんなお店に来てるのかな
私には、縁のなかったお店だったから
緊張しているのに
穂乃果さんは、そんな素振りを全く見せない
「やっぱり、すごいな穂乃果さんは」
そう思ったら穂乃果さんに
「どうして?」と聞かれた
無意識に声に出てしまったようで
不思議そうに私を見る
穂乃果さんになんと言えばいいか
あたふたしていた
それでも、気になるって顔をしている
穂乃果さんを見て
「い、いつもこんな感じのお店に
来るんですか?」
と聞いた
「よく来るわけじゃないけど
ここのパスタが美味しくてね」
と小さく笑って返してくれた
その顔を見て私の緊張は
少し和らいだ気がして
そこからは、自然と話せた
「穂乃果さんは、いつもどれを注文
するんですか?」
「私はね、このパスタと
あとはちょっとしたもの」
「ちょっとしたもの?」
「そう」
「あの、穂乃果さんのおすすめを
頼んでください」
「え?」
「私気になります食べてみたいです」
そう私が言うと
また、小さく笑ってから
いいわよと言い
すぐに店員さんを呼んでいた
注文をしている穂乃果さんを見て
ふと、気になり
注文が終わった時に
「よく食べるんですね」
と聞いた
すると、穂乃果さんは恥ずかしそうに
「そうなの、私大食いなの」
と言った
意外な一面を知れて
嬉しい気持ちと
私も食べることは好きだったから
同じ仲間のように感じた
テーブルいっぱいに並べられた
料理の写真を撮り
まずは、ボンゴレ・ビアンコを1口食べた
ちょうどいい塩加減で
あさりのダシが強調され
にんにくでパンチが効いていて美味しい
穂乃果さんと一緒に過ごすようになって
優しい味の料理を知った
愛情のこもった手作り料理
今までは、作り置きばかりだった
ひとりでレンジで温めて食べる
もちろん愛情なんてない
ただ、死なないために
生きるために食べるだけ
きっと、あの時の私は
こんなに素敵な食事があるなんて
思いもしなかっただろう
誰かと一緒に食べることも
そう考えながら1口1口
ゆっくりと味を噛み締めながら食べた
何口食べても変わらない美味しさ
もっと食べたいと思える味
フォークを持つ手が止まらなかった
その時
「ななちゃんが来てくれてよかった」
と呟いた
私が顔を上げると
穂乃果さんと目が合った
そして、互いに目を逸らした
咄嗟に出てしまった行動とはいえ
気まずい雰囲気になると思い
視線を戻すと
またしても、穂乃果さんと目が合った
けど、今度は互いに見つめあった
しばらく見つめあって
不意に穂乃果さんが小さく笑った
それにつられて私も笑った
「何よ、この時間」
「分かりません」
「私の声聞こえちゃった?」
「はい」
「私って独り言大きいのね
あ、さっき言ったのは本心よ」
「ありがとうございます
私も穂乃果さんに会えて良かったです」
「嬉しいわ」
「私、穂乃果さんに会ってから
優しくて素敵を沢山知れました」
「あら、そうなの?
鮭のムニエルとか作れるから
てっきりこういうお店とか料理に
慣れてるのかと」
「えっと、ほとんど来たことないんです
オシャレなお店とか」
「あら、そうだったの!?
ごめんなさい、変に
緊張させちゃったかしら?」
「最初は、緊張しました
けど、穂乃果さんの素敵な笑顔で
ほぐれました」
「あらあら、私を口説いてる?」
「いや、えっとそういう訳では」
「あはは、ななちゃんは可愛いわね
でもね、私手強いよ」
「そうなんですか?」
「ええ、この人って決めたら
その人以外から口説かれても動かないわ」
「強いですね」
「でも、もう1回ななちゃんに口説かれたら
私落ちちゃうわ」
「じゃあ、不意打ちで」
「ななちゃんって意外とやり手?」
「彼氏はできたことないです」
「え!嘘!?
でも、ななちゃんに口説かれたら
ほとんどの男性落ちちゃうんじゃない?
ななちゃん顔も可愛いもの」
「そんなに褒めないでください」
「照れてるわね〜」
まだ、お買い物もしていないのに
この時間だけで最高に楽しい
そう思えた瞬間だった




