18、知らない天井
彼女と別れたあと
すぐに雇い主の女性が来た
穂乃果さんと言うらしい
穂乃果さんは、中を案内してくれた
キッチンにリビングに洗面所
全ての部屋を見た
その時、私は
やっぱりメイドが必要なほど広い家では無い
と思っていた
映画やアニメなどでメイドが出てくる話は
大体が御屋敷
でも、この家は、普通の家と同じくらいか
少し大きいくらい
メイドを雇っている
本当の理由は分からないけど
野党ほどのお金があるのなら
そういう専門のところに依頼をすればいい話
そんなことをぐるぐると考えていると
「それで、どうだった?」
と穂乃果さんが聞いてきた
私は、突然の事で少し困っていた
そんな私を見て穂乃果さんは
「正直な気持ちを言って」
と笑顔で言った
私は、その言葉を聞いて
正直に思ったことを言った
すると
「そうよね、よく言われる」
「では、なぜ?」
「家の広さじゃなくてね
お母さんのお世話もあって」
「……介護ですか?」
「そう、最初はひとりで頑張ってたんだけど
だんだん疲れてきちゃって
家事が雑になってきて」
介護は、大変だと聞いたことがある
でも、私の予想以上なのかもと思った
私は、介護をしたことがないから
知識は、無いに等しい
だから、下手なことは言えない
それでも、ひとつ聞きたかった
「他人の私に任せていいんですか?」
「どうして?」
「私、介護の知識ないですし
家事だってあまりやった事なくて
だから、逆に足を引っ張ってしまうんじゃ」
「ふふふ、大丈夫よ」
「どうしてですか?」
「介護は、私が担当だから心配しないで
家事もお掃除と簡単なお料理ってできる?」
「あ、はい一応」
「なら、完璧ね」
「そ、そうなんですか?」
「どうしてメイドとして人を雇っているか
話したことあったかな?」
「いえ、聞いたことないです」
「私ね、お話し相手が欲しいの」
「お話し相手?」
「そう、1人で過ごしてると寂しくてね
介護と家事の両立でさらに気持ちが
落ち込んで」
そう話す穂乃果さんの顔が
徐々に暗くなっていくのを感じた
「介護をしていると日に日に
お母さんが弱っているのを感じて
いつかは、本当に1人になっちゃうんだって
思ったら辛くなって
だから、雇うことにしたの」
「そうだったんですね」
「でもね、最初はメイドとして
じゃなかったの」
「そうなんですか?」
「えぇ、最初は私と一緒に手芸を
やってくれる人を募集したの」
「手芸ですか」
「私の趣味なのよ」
「素敵な趣味ですね」
「うふふ、ありがとう」
穂乃果さんの顔に笑顔が出てきたのが見えた
「どうして、メイドという形で?」
「ここに来てくれてた人達が
家事とか手伝ってくれて
そのお礼に手作りお菓子を上げてたの」
「素敵ですね」
「そんなある日、その中の一人にね
言い方悪いかもだけどメイドって書いて
募集すれば人が来るんじゃないかって言われて」
「その人たちは」
「みんな、若くはなかったから
来るのが大変になっちゃって」
「そうだったんですね」
「だから、試しに言われた通りに書いて募集
してみたの」
「それで、どうだったんですか?」
「そしたら、たくさん応募があって
1人だけ選ばせてもらった
でも、すぐ辞めちゃって」
「なぜ」
「渡せるお金が少なかったみたい」
その言葉を聞いた時
そっか、応募してきた人たちは
お金が欲しいから応募したんだと思った
だから、金額が少なくて辞めた
「だから、お金をたくさん渡せない代わりに
衣食住を保証することにしたの」
「それで、どうだったんですか?」
「応募は、1人だけだったわ
あなたも会ったかしら?凛さんに」
「凛さんですか?」
「えぇ、会ってない?
今日で辞めちゃうから挨拶すると
思ってたのに」
今日で辞めちゃう
その言葉を聞いて私はハッとした
あの人だ、朝会った人
「白髪の人ですよね」
「そうよ、良かった会ったのね」
「はい、ご丁寧に部屋を案内してくれました」
「それは、良かったわ」
「凛さんっていうんですね」
「そうよ、私はりっちゃんって呼んでたわ」
「いい名前ですね」
「ほんとよねぇ」
ほんとに、いい名前だ
あんなに名前と合ってる人を
あまり見た事がない
物静かだけど凛としている
「あの子、物静かでしょ」
「そうですね」
「本人もね最初に言ってきたの
会話が得意じゃないのでって」
「そうなんですね」
「でも、私は気にしないと伝えたわ
彼女は、ありがとうございますと
一言返したわ
その時の、りっちゃんの顔は
どこかほっとしていたわ」
あの時も、コートを拾ってくれた時も
少し悲しそうな顔をしていた
でも、別れ際の時は笑顔になっていた
「りっちゃんは、感情がわかりやすいわね」
「え?」
「ほら、言葉で伝えられなくても
表情には出てるじゃない
本人は、無意識みたいだけど」
確かに、穂乃果さんに言われるまで
気づかなかったけど
表情は豊かな人だった
穂乃果さんは、人のことを
よく見ているみたいだ
私も見習いたい
談笑をしながら
仕事内容や一日の流れを教えてもらった
「今日は、休んで
明日から、お願いできる?」
「はい」
「それなら良かったわよろしくね」
「よろしくお願いいたします」
穂乃果さんと別れて
部屋に戻った
ここは、夜になるとすごく静か
そんな中、慣れない天井を眺めながら
自分に出来るのかという不安と
少しの楽しみを抱えながら
私は、眠りについた




