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最終話 糸が解けた未来は波瀾万丈?

 アカシア事件の裁判が終わり、約一年が経った。この短くも長い期間で様々な変化や出来事が起こった。

 まず、ヴァールハイト家の当主が変わった。シュヴァルツになったのだ。認知症のせいでボケてきたからと本人が他家の者たちに説明していたが、果たしてどうだろうか。ディランの話によると、彼の父が他国から戻ってきてから数週間も顔を合わせて貰えなかったらしく、許可が降りて部屋を訪ねた頃にはベッドから動けない状態になっていたらしい。常にぼんやりしているのだとか。シュヴァルツが何もしていないことを祈るが、何かしていたとしても証拠は出てこないだろう。確かなのは、もうディランを守るために手を汚さなくて済むということだ。

 そしてシュヴァルツは、ディランと共に魔道具を完成させ、安い値段で販売することを大陸中へ宣言した。

 さらに、アメトリア王国国王は彼らの宣言の数時間後に、彼らの活動を応援することを宣言した。魔物共生部門も新たに設けるとも言っていた。

 最初は非難と混乱があったが、アカシアとジャスパーの話が既に広まっていたこと、ヴァールハイト家とビオスソニオ家、魔導士会が魔道具の効果を保証したこともあってか、アメトリア王国に続き、ニフリート王国、ベリル共和国、エグマリヌ公国、そしてなんと、オブシディアン帝国まで賛同することとなった。恥ずかしながら、ルミナスがドラゴンを二度も(見た感じは)乗りこなしていたことも、ちょっとはいい影響を与えたらしかった。

 要するに、反発勢力はあれど、大陸のほぼ全体が魔物との共生を目指して動き出しているのである。

 そして今日は――


「あ! ルミナス様! おはようございます!」

「遅かったな」

「おはようございます。晴れてよかったですね」

「花瓶の花を変えておきました」

「今日の紅茶は東方のキーマンですよ!」

「久しぶりね、みんな」


 椅子から立ち上がり、一斉にかけられる声にクスリと笑みをこぼして答える。

 ここはアメトリア王国の王宮に構えられたある一室。五カ国の連合組織「大陸魔物共生機関」の会議室である。本国を起点にすれば残り四カ国にとっては距離に差がでないため、ここに置かれることとなった。

 上層部メンバーはこの六人だが、全体の人員は何千にも及び、半数が闇属性もしくは光属性を使うことができる。魔物との和解、攻撃を受けた際の回復時など、活動をサポートしやすいからだ。

 ちなみに、ここにいるほとんどのメンバーには副業がある。


「そういえばセオドア様、聞きましたわ。初めて出版された書籍が、もう重版されたそうではありませんか。私も読んでみたのですが、すっかりはまってしまいましたわ」


 椅子へ腰掛け、セオドアへと振り向く。彼は照れ臭そうに頬を掻いた。


「ありがとうございます。自分でもここまで読んでくださるとは思っていなかったので……本当に、ありがたい限りです」


 そう嬉しそうに微笑んだ彼は、どこか誇らしげで。

 彼はペンネームを使わず、本名で出していた。そのため、ごく稀に家へとファンが顔を見に来ることがあるらしい。

 ちなみに、題名は『闇を切り開く光芒の薔薇』で、ある女性の成長する過程が「僕」目線で語られる物語だった。なんと、その女性にはモデルがいるという。彼女へ淡い恋慕のようなものを「僕」は寄せていたが、作者であるセオドアはどうなのだろうか。


「モデルがいると聞いたのだけれど、誰かお聞きしてもいいですか?」

「えっ? あぁ……」


 セオドアは口元に手を当て、真剣な眼差しを机へと向けた。

 そして、顔を上げて怪しげに微笑した。


「秘密です」

「そ、そう」


(うぅ、残念だわ。でも、本人が言うのなら仕方がないわ。もしかしたら、まだ成就していない可能性もあるし……私はいつでも知る準備はできていますからね!)


 だから心配しないで、という視線をセオドアへと送り、コクリと頷いた。彼の微笑がなぜか苦笑へと変わる。

 その時、誰かがルミナスの肩を叩いた。ノアの顔がこれでもかと言うほど輝いているということは――


「アモーレね?」

「キュイッ」


 窓の外へと目をやると、赤い花弁がチラリと見えた。聞こえてきたのは元気な声。いったい、どこまで成長を続けるつもりだろうか。


「彼女も連れてきたのね」

「はい。このあと一緒に植物園をまわる予定です。彼女と一緒に行くと、植物目線で新しいことを知ることができるので」

「流石は名植物研究家ね。卒業したばかりなのに、論文や著書が既に百を超えたみたいだけれど、それも彼女のおかげかしら?」

「そうなんです。本当、彼女は素晴らしいパートナーですよ」


 そう言って彼は窓から伸ばされたツタを優しく撫でた。

 彼は今年学園を卒業した。そしてこれからはラント家の仕事を手伝いながら、植物の研究を趣味で行い、機関のベリル共和国配属部を率いることとなる。本人はどれもやりがいを感じており、楽しそうに励んでいるが、いつか体を壊しそうで心配である。他のメンバー共に気にかけていくつもりだ。


「そういえば、最近やっとお家が完成したんでしょう? もう見に行ったのかしら?」


 ディランへと顔を向けて話しかけると、彼はいつの間に用意したのかケーキを頬張りながら首を振った。ルミナスを含む他のメンバーの前にも置かれている。

 これから彼は、アメトリア王国で暮らすつもりらしい。


「いや、まだだ。お前と共に見に行きたいと思ってな」

「私と?」

「ああ」

「なら、皆さんで行きませんか?」


 ニコリと笑顔を浮かべたセレナを、ディランが眉間に皺を寄せて見た。睨んではいないが、「何言ってんだこいつ」とでも言いたげだ。

 ちなみに、セレナは今、魔導師会にも所属している。そして、アメトリア王国配属部の副部長を務めている。部長はルミナスである。

 なお、ディランはオブシディアン帝国配属部の副部長であり、部長は別の人物だが、何故か会議には彼が来ている。

 「好きにしろ」とそっぽを向いてしまったディランに微笑ましい目を向けた。


「ああ、そうですわ。カイル様」

「なんでしょう?」


 輸入品らしきクッキー缶やお菓子の箱を机の上に乗せていたカイルが、手を止めてこちらを見やる。

 彼はサンターニャ家の跡継ぎとして場数を踏みつつ、流通や土地に関する経験と知識を活かして魔道具を着々と広げていってくれている。本人曰く「草鞋はいくつあってもいい」らしい。

 ちなみに、彼はコミュニケーション能力が高く、顔も広いため、一番問題なく和解が進んでいっている。


「先日エグマリヌ公国の海域で急激な嵐が発生したと聞きましたわ。幸い人的被害はなかったと聞きましたが、大丈夫でしたか?」

「えぇ、うちもなんとか……ただ、少し変な噂が――」

「おはようございます」


 扉を開けて入ってきたのはダンだった。王子らしいフォーマルな服に身を包んだ彼は、書類を抱えた執事たちを連れていた。


「おはようございま、どぅっ」


 慣れた手つきでルミナスの手を取り、キスを落とすダン。


「今日も会えて幸せです」


 本当に幸せそうに(だがやはりどこか意地悪げに)微笑むものだから、何も言えずに固まってしまう。


「うっ」


 すると、誰かが自身を引き寄せた。


「おはようございます、殿下」

「はい、おはようございます、セレナさん」


 背中側から圧を感じる。自身を挟んで見つめあわないでほしい。気まずいではないか。


「お菓子いるか?」

「いただくわ」


 ディランから差し出された棒付きドーナツへと手を伸ばす。

 しかし、受け取る間際に二人は離れた。

 疲れたとため息を吐きながら椅子へと座り直す。


「そういえば、明日は学園の入学式なんです。ルミナス様をご招待したいのですが、いかがでしょうか?」

「念のため開けておきましたわ。ラルフ様から聞きましたの」

「よかった。彼もきっと喜びます」


 二人して微笑み合う。

 ラルフはなんと、ダンとたったの三歳しか歳が違わなかった。歳の割に幼かったのは、ほぼ人間のいない環境で数年間育ったかららしい。ジャスパーは基本的に魔物の姿でいたようだ。

 それでも、彼は王宮で空白の時を取り戻すように多くを学ぶ努力をし、学園へ入学するだけの知識、所作、マナーを身につけた。たまに耳と尻尾が出てしまうようだが、それは愛嬌である。ジャスパーも王宮に住んでおり、機関の一員として働いてくれている。彼もまた、人間との生活に馴染むために努力を続けている。

 二人の成長を嬉しく思っていると、ダンがパチンと手を叩いた。


「そうだ。皆様も来られますか? 久しぶりの学園は懐かしくて楽しいと思いますよ」

「いいですね」

「久しぶりに学食が食べたいです!」

「植物の様子も確認していいですか?」

「もちろんです」

「じゃー決定ですねぇ!」


 ディランもケーキを口に含みながらコクコクと頷いた。


「では、仕事を終わらせて入学式の予定でも考えましょうか」

「そうですわね」


 みんなして頷き、執事から配られた書類へと目をやった。

 と、その時、慌ただしい足音の後、誰かが扉をノックした。会議が開始してからここへ誰かが来ることは、余程のことでない限りない。どこか不穏な空気を察知しながら扉へと向かうダンの背後を見やる。


「し、失礼いたします」

「何があったんですか?」


 入ってきたのは、いつも玄関口辺りで待機している衛兵の一人だった。額にも首にも汗粒が浮かんでいる。


「その、聞いたことのない国名の王子が、花束と指輪を手に押しかけてきました!」

「陛下にはお伝えしましたか?」

「別のものを向かわせております。王子と主張する以上、迂闊に手を出すことができなくて困っているのです。勢いも妄言も強烈で、みな、手を焼いています」

「妄言ですか。彼はなん」


 扉の奥、廊下の方から騒がしい声が聞こえてき、ダンは口を閉じた。そっと腰に下げていた剣に手をかける。

 ルミナスたちも立ち上がり、閉じられた扉の先を見据えていると――


「私の花嫁はどこだ!!」

「ん?」


 珍妙な叫び声が聞こえてきた。これが衛兵の言っていた妄言だろうか。

 ルミナスたちは互いに怪訝な表情で見つめ合う。

 すると、扉が(恐らく)声の主によって開け放たれた。


(あら?)


 入ってきたのは、朝の木漏れ日を閉じ込めたような美しい金髪を靡かせ、白い質の良さそうなタキシードに身を包んだ青年だった。

 彼の大海原のように澄んだ瞳が瞬時にルミナスを拾い上げた。


「見つけ――ウッ?!」


 パァッと顔を輝かせ、ルミナスへと駆け寄ろうとした青年へと、殿下が見事なラリアットをキメた。


「で、殿下!」

「すみません。賊でも入ったのかと思って、つい、手が出てしまいました」


 あちゃー、と頭に手をやっているが、この男、まったく悪びれる様子がない。目が据わっているのだ。

 ふと、青年が立ち上がり、ビシリと指を立てた。


「私は賊ではないぞ!」

「来訪を予告する手紙もなく、衛兵を押しやり、許可なく入室されていますが、お友達だったでしょうか? 僕の記憶にはないのですが」


 要するに「初対面かつマナーもなっていないのに何を言っているんだ図々しい」ということである。

 冷えた目で微笑まれ、青年は一瞬怯んだ。


「す、すまない。予言通りのお嬢様がいるとわかり、つい、我を失ってしまった」


 青年はペコリとお辞儀をしたが、ダンは眉間に軽く皺を寄せながら微笑んでいる。

 ふと、カイルがあっと声を出した。


「噂の人物って、この人のことだったんですね」

「噂?」

「大陸外の国との取引は、ちょっと特殊なんです。常に霧が立ち込めている海の上に建てられた城に、取引したい商品を置いておき、数日後見に来ると、他国の品が代わりに置かれているんですよ。ちなみに、霧の向こうに行こうにも、抜けたと思ったら最初の地点に戻ってしまうんで、誰も霧の先は知りません」

「私はその霧の先から来たのだよ」


 青年が声高らかにルミナスとカイルへと近寄った。


「どういうことですか?」


 すかさずダンが質問を投げかける。


「霧の先に行けないのは私の国も同じだ。でも、ある日、私が神殿へ訪れた日のことだ。一筋の神々しい光が差し、聖書に文字が浮かび上がったのだよ!」


(そ、それって……いや、いやいや。決めつけるのはまだ早いわよね)


 悪い予感がしてならないのはルミナスだけではないようで、あの日神殿にいたメンバーはみな、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべていた。セレナに至っては不快感と殺気を余すことなく放っている。彼女が青年へ噛み付かないよう、そっと彼女の手を握ってやる。

 青年は鈍感なのか、周囲を気にせず話を続けていた。

 どうやら、聖書には文章だけでなくなんらかの紋章も浮かんだらしく、「この本を持って入れば先へ進めるだろう」という文章が横に添えられていたらしい。


「そして、私がここへ来たのは神の予言、いや、お導きがあったからさ。海を渡り、着いた国から中心へと向かった先でそびえ立つ白亜の王城。そこで、私の運命の乙女が待っていると――ね」


(う、うさんくさい!)


「黒檀のような髪に、白い肌に映える血のように赤く艶やかな唇、月を落とし込んだかのような黄色い瞳。間違いない」

「へっ」


 青年は恭しく跪き、ルミナスの手を取った。


「貴女が、神が仰られた運命の乙女、私の花嫁となる方で――」

「人違いかと」

「アウチッ」


 セレナの手刀が青年の手首へと容赦なく落とされた。ゴン、と鈍い音を立てて彼の手が離される。

 ダンの手がルミナスをそっと引き寄せた。


「そうです。人違いだと思いますよ。あと、国際問題になりかねないのでお帰りください」

「だが、神が」

「神は死んだも同然なのでお帰りください」

「ちゃんと証拠もあるぞ!」


 青年は懐から本を取り出した。どこかで見たことがあるようなデザインだ。


「拝見しても?」

「あぁ、もちろん!」


 ダンは本を受け取り、中を開いた。他のメンバーも集まって中を覗き込む。

 すると、あるページから光りが微かに漏れ出てきた。


「……最悪だわ」


 かつて見た執筆で、文字が刻まれた。


『こんなこともあろうかと、別の世界と海で繋がっている設定にしておいたんだ。君たちの世界に直接干渉はできなくなったけど、これからも楽しませてもらうから、末永くよろしく』


「フンッ!」

「あっ」


 セレナによって本に斧が振り落とされた。そのまま魔法と斧の両使いで粉砕していく。


(あらあら)


 その様子を眺めていると、青年が飛んできた。


「何をする!」

「ちょっとトラウマが再発して、つい」

「"つい"じゃないだろう! つ、」


 青年の肩に、ディランがそっと手を置いた。


「この世界にお前の言う神は必要ないということだ。わかったら、魔物の餌にされる前に国へ帰るんだな」

「船は任してください!」

「い、いやしかしだな、私は彼女に惚れ――というか君はなんなんだ! さっきからずっと彼女の体に触れているではないか! 婚約者でもないのに馴れ馴れしい!」


「ええ。婚約者ですから」


 バキリと骨が折れる音と共に、青年の叫び声が響いたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 夕焼け空にルミナスのため息が溶けていく。


「突然あんな嘘を仰られるものですから、私、肝が冷えましたわ」

「でも、そのおかげでなんとか帰っていただけましたよ」

「それは、そう……ですけれど」


 しどろもどろになりながら、唇を尖らせる。


「それに、嘘かどうかはルミナス様次第ですよ」

「えっ」


 ふふ、と愉しげに見つめられ、ルミナスは思わず彼から顔を逸らした。

 一年前、同じ場所でルミナスはダンに婚約を申し込まれた。しかし、自分の気持ちも、王妃が務まるのかもわからず、「待ってほしい」と言ったのだ。


「それとも、僕は振られてしまったのでしょうか?」

「そんなことは……」

「ふふ。その言葉は、僕に期待を与えてしまいますよ。例え嘘だとわかっていても、喜んでしまったのに」


 彼の指摘に言葉を詰まらせた。

 数年の前の自身なら、自分の気持ちに関係なく断っていただろう。自分は公爵家の一人娘で、婿養子を迎え、支えるつもりでいたのだから。だが、その必要はなくなった。

 数ヶ月前に、弟ができたのだ。

 つまり、ルミナスは他家へ嫁ぐことが一応は可能になった。父へ直接交渉すれば、父が許可するかは置いておき、ルミナスの意思に関係なく婚約することはできる。


(そうしないのは、彼が、きっと――)


「ルミナス様。髪に羽が着いていますよ」

「えっ? どこでしょうか?」

「ジッとしていてください」

「!」


 ダンが距離を詰め、まるで抱きしめるかのようにルミナスの頭へと腕を回した。羽を取るだけ。そうわかっているのに、体が強張ってしまう。


「取れましたよ」


 耳元で囁かれ、ゾクゾクとした甘美な刺激が爪先まで走った。

――と、その時、ガタガタと何かが落ちる音がした。


「ル、ルミナス……」

「お、お父様……」


 動かないダンの腕から外を覗くと、父がこの世の終わりが来たかのような真っ白な顔をして、こちらを見つめていた。

 そして突然、フラリと倒れた。母がさっと体を支える。


「かわいい娘が……悪、殿下に唆され……うぐっ」

「あなた! しっかりなさって!」


 と、言っているが、肩の震えを抑えきれていない。母は何が起こったのかわかっているようだ。

 恥ずかしくてたまらない気持ちを抑え、どうにか説明をしようと頭を回す。すると、何かが二人の間を引き裂いた。


「何をしていらっしゃるんです? あと、プロポーズなんていつの間にしていたんですか?」

「状況を切り抜けるための嘘とは言わせないぞ」

「さぁ、どうでしょう」


 ダンを引っ張ったのはディランだった。セレナが庇うようにルミナスを正面から抱きしめる。

 少し遅れてセオドアとノアがやってきた。


「今日は最後まで慌しかったですね」

「公爵様はアモーレに運んでもらっています」

「ありがとう」


 何やら拗ねた様子のディランと、愉快そうな微笑みを浮かべているダンをよそに、四人でねぎらいの言葉をかけ合う。

 その時、またもや衛兵が駆けてきた。セレナがすかさず斧を構える。


「今度は『黄薔薇の乙女を出せ』と主張する者が現れました!」

「嘘でしょ……」


 ルミナスは顔に手をやり、ため息をついた。


「きゃっ!」

「あっ、おい!」

「ルミナス様!」


 突然、ダンがルミナスを抱き上げた。そのままバルコニーの端へと足をかける。


「同じ方法で退散してもらいましょう。またうるさそうですし」

「そうですわね」


 下を見れば、似たような見た目の人物が衛兵に掴みかかっていた。

 この後もしばらくは、あの人に振り回されそうだ。


「嘘もつき続ければ本当になると言いますが……どうなるか楽しみです」


 ――あと、このいたずらな王子様にも。


 怪しげに細められた甘い瞳に、背中がゾクリと痺れた。

 これは、新たな戦いに対する武者振るいなのか、本当に彼に対して……いや、今は武者振るいということにさせてもらおう。

 でないと、落ちないために彼の首へと回した自身の腕が、ひどく恥ずかしく感じられるから。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

続編まで読んでいただけて、本当に嬉しいです。

ルミナスたちの物語はこれにて完結となります。

読んでくださった方、ブクマやいいね評価を着けてくださった方、ありがとうございました。続けていく上で、非常に強い心の支えになりました。

アカシアとジャスパーの過去編を経て、この小説は完結となります。最後までお付き合いいただける方は、またよろしくお願いいたします(*´꒳`*)。

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