43.5話 白い光の中で (ダン)
自分は何処にいるのだろう。どうして頭が割れるように痛いんだろう。
眠りにつく時のように意識が朦朧として、心地よくて、目を閉じてしまいそうになる。
でも、そうしてはいけない。そんな気がして体を動かそうとする。しかし、何故だろう。力が全く入らない。
「ん……」
ふと、揺らめく視線の先に自身の手が見えた。
赤く濡れた、汚れた手。
(そうか、僕は、この手で彼女を……)
そう認識すれば、再び強い痛みが頭の中で波打った。
必死に床を握るように掴み、痛みに耐える。
(消えた……?)
瞬きをすれば、ただの手に戻っていた。見た目だけだが。力なく体が床へと崩れ落ちる。
僕は、大罪を犯した。それも、何度も、何度も。
理由も方法もわからない。だが、彼女を、いや、この国の人々を斬り殺したのは紛れもない事実だった。得体の知れない鎧達を従えて、まるで世界を滅亡させるかのように。
例え今この手が血濡れていなくとも、この感覚は消えない。この手で、目で、耳で、ハッキリと覚えているのだ。
誰かが自身に囁く。知らないはずなのに、懐かしい声で。
――これで最後にしてあげる
――もう一度だけこの世界をリセットしたら、全て自由にしてあげるよ
――大丈夫。記憶は消えて新しくなるけれど、辛い記憶もなくなるよ。この苦痛もなくなるよ
自身を包む光は温かく、微睡みのように穏やかだ。きっと、このまま身を任せれば、幸せなのだろう。そう感じてしまうほどに。
(なのに、どうして僕は、この痛みに抗おうとしているんだろう)
嗚呼、愛しさを感じる、優しい声が――




