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挿話3 得意不得意

「脇が開いていますよ、ルミナス様」

「闇魔法をもっと足にかけろ」

「オートリカバーが解けてます!」

「うぅ……!」


 鍛錬場に、剣と剣が擦り合う音が響き、黒と白の光が火花のように散っていく。


(一度に三つのことをするのは、なんて難しいのかしら!)


「少し疲労が見えますね。休憩にしませんか?」

「そうだな。魔力が切れても困る」

「ではお茶を入れてきますね!」

「わ、わかったわ……」


 ルミナスは膝に手をついた。自分から望んだとはいえ、警備隊並みのハードさに音をあげそうになる。


「はぁ……」

 息を整えていると、セレナと共に紅茶を持ってきてくれたノアが、小さくため息をついた。


「どうしたの、ノア様?」

「えっ。あ、聞こえていましたか?」

「少しね。何か悩みごとでもあるのかと思って、声をかけてみたのよ」

「いえ、そんな大それたことではないので……」


 ノアはキュッと唇を締め、視線を外へ逸らした。

 ほんの少し迷いを見せた後、口を開く。


「その……俺、神殿に仕えているくせに、光魔法があまりできないんです」

「なんだそんなことか」

「ノア様にとってはそんなことじゃないのよ。なら、セレナさんやダンに教えてもらったらどうかしら? 私が教えられたらいいんだけど、ご存知の通り私も光魔法ができないから。壊滅的にね」

「僕は構いませんよ」

「私も大丈夫です」

「えぇと……じゃあ、お願いします」


 ノアはペコリとお辞儀をした。セレナとダンは頷いて答える。


「どうせなら、みんなで教え合わない? その方がお互いのためになると思うのよ」

「いいですね」

「ですね!」


 ルミナスの側に寄ってくるセレナとダン。得意魔法に偏りができるじゃないか。


「(そういえば)ノア様とカイル様は何が得意なの?」

「俺は……強いて言えば、水属性と木属性ですかね。植物を育てている内にできるようになりました」

「ノア様らしいわ。その力を使って、神殿や国をより美しくできそうね」

「なるほど……俺は植物の世話が好きなので、いいかもしれません」


 ノアはふむ、と頷いた。

 美しい外観の維持も、神殿に仕える者の立派な仕事だ。彼にこの考えがなかったことが驚きである。


「カイル様は?」

「オレは火属性です。派手で好きなんですよねぇ。あ! もちろん、水属性も得意な方ですよ。海が近いですから」


 ふふーんとカイルは胸を張って言った。ルミナスの背後から鼻で笑う声がする。言わずもがなディランである。


「どうせ、苦手なものはないと言うんだろう?」

「いや、あるぜ?」


 ケロっとした表情をするカイル。ルミナスもディランも彼の言葉を信じられず、二人して首を捻った。何を言うつもりだろう。


「大規模な魔法しか使えないことだな」

「大雑把なだけじゃなくて?」

「あはは、まぁそんな感じです。実は、武術の方が得意だったりするんですよ」

「へぇ。それは興味がありますね」

 ルミナスの隣からダンが話に乗ってきた。

「エグマリヌ公国では、どのような武術が主流なんでしょうか?」

「水中でも使いやすい槍だな。ま、オレは拳術の方が好きだけど」


 カイルが槍を使う姿は見たことがない。拳術もだ。少し見てみたい気がする。


「ダンとルミナス様は剣術、ディランは……あんま決まってないか」

「ああ。基本的には闇魔法でどうにかするからな」

「でも、剣と両用することがありますよね?」

「ああ。魔力は有限だからな、頼り切るわけにはいかない」


 ディランの言う通り、使える魔力には上限がある。故に、警備兵や騎士達は武器を所持しているのだ。


「そういえば、ダン。お前には少し変な癖があるな」

「変な癖ですか?」


 ディランが目をやったのは、ダンの腰に下げられた、何の変哲もない量産型の剣。

 彼が指導する人物はほとんどルミナスとセレナだけなのに、よく見ているようだ。だからこそ、強いのかもしれない。

 ディランはピッと指を差した。


「魔法を使う際、たまに手を柄にかけるだろう?」


 それは何故だと聞くディランに、ダンは困り笑顔で答える。


「それは気付きませんでした。もしかしたら、緊張しているからかもしれませんね」

「緊張か……時間のロスになりかねないから、直した方がいい」

「ありがとうございます。ところで、皆さんは何をお使いになられているんですか?」

「私は斧です!」


 セレナは、柱に立てかけてあった斧を片手でひょいと持ち上げた。細腕の彼女こそ剣がいいのではないかと思うのだが、手に馴染んでおり、本人は気に入っている様子。


「斧ですか……! これはまたすごいものを」


 ノアは斧をじっと観察している。


「木を倒す時に使ったりしない?」

「普通貴族は自ら木を倒したりしませんよ」

 すかさずダンの突っ込みが入り、ルミナスは彼の二の腕をツンと突いた。

 その様子を見てノアがクスリと笑う。


「ダンの言う通り、使われている所を見たことはあっても、使ったことはありません。俺が普段使うのは弓です」

「ノア様の弓捌きは、見ていて興味深かったですよ」

「あら、見たことがあるの?」

「はい。たまたまかもしれませんが、毎回矢を選んでいるように見えました」


 ダンがノアに視線を移す。ルミナスはノアとセオドアが戦う姿を見たことがない。そのため、彼等がどのように戦うのか非常に気になるところだ。


「実は、矢に毒を仕込んでいるんです」

「ほう?」

 ディランがズイッと前に出てくる。

「部屋に置いてきたので、ここにはないんですけど、痺れ薬や睡眠薬を含む様々な毒を用意しているんです。よければ、また持って来ましょうか?」

「ああ」


(本当、貴方は戦いに目がないわね)


 それとも、強くなることに目がないのだろうか。

 かくいうルミナスも、ノアがどのような毒を作っているのか興味はある。植物好きで、研究熱心な彼のことだ。きっと、驚くようなものを見せてくれるのだろう。


「よーし! みんなで教えあって、もっと強くなりましょうね!」


 ね、ルミナス様。とセレナは斧を空へと掲げた。そのままうっかり落としてしまわないか心配である。


「そんなに強くなって、警備隊にでも入るつもり?」

「それもいいかもしれませんね! ルミナス様のため、あっ、国のために頑張っちゃいますよ」

「お願いだから、斧を振り回さないでちょうだい」


 ぶんぶんと斧を振るセレナを、他の生徒達が引いた目で見ている。だから余計に目をつけられるのだ。

 ループ前はもっと平和的な子だったのに、何が彼女を変えてしまったのだろうか。

 意気揚々と合同練習の日を話し合うセレナを見て、ルミナスは頭に手をやったのだった。

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[気になる点] 「お願いだから、斧を振り回さないでちょうだい」  ぶんぶんと釜を振るセレナを、他の生徒達が引いた目で見ている。 斧が釜になってます。 斧も危ないですが釜振り回すのも絵面が色んな意…
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