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魔剣の呪いがスパルタって!  作者: 軒下水滴
ガイアス編
29/31

28.ペルジュ王の帰還

ペルジュ王国 クレフの村:


 食料確保のため、クレフの村近くで狩りに出た。

 巨大牛カウカウを4人の男女が狩っているのが見える。

 4人の男女は体力をかなりかなり消耗している様子だった。

(こりゃあ狩り失敗かな?)

 助けを要求されたら、すぐ駆けつけられるよう様子を伺う。


「あれ!?マティルダさんじゃないですかー?無事だったんですねー」

 4人の内のひとりがマティルダさんだった。

「あ!」

 マティルダさんがおれに気付いたようだ。

「みんな、あそこの男性に向かってカウカウを誘導してください」

「「「おう」」」


 カウカウと4人がこちらに向かってなだれ込んでくる。

「なんすか?MPKですか?」

 おれは明莉の前に立ちふさがり、腰と右腕を落とす。

「《モーニングエレクションアッパー》」

 カウカウが宙を舞った。


「タクマ君、ペルジュ王国に来てたのね。エリクサーありがとう。5本全部使っちゃった。ごめんね。一生かけて代金の一部でも返すから」

「いえ、無事でいてくれたならそれでいいです」

「そちらの方は?」

「おれの従妹です」

「従妹の佐藤明莉です」

「申し遅れました。私はマティルダ、タクマ君とはアースロード王国の冒険者ギルドで一緒でした」


「カウカウ倒してくれて、ありがとう」

「マティルダさん、おれのところにカウカウ誘導しましたよね」

「え!なんのこと?」

(マティルダさんってこういう性格だったんだ!?)


「マティルダさん、冒険者稼業に戻ったんですか?」

「ええっと、ある貴人の護衛を…タクマ君から頂いたエリクサーでその方達の命が救われたわ」



クレフの村。

 ちょっと待っていって貰える?タクマ君のことを話してくるから」

 マティルダさんが村の奥のほうに駆けていき、やがて戻ってきた。


「ぜひ、タクマ君に会って、お礼をいいたいっていっているの。よかったら会ってくれる?」

 マティルダさんに連れられて、一軒の家に入った。


「タクマ殿をお連れしました」

「おお、入って頂きなさい」


 ドアを開けると、正面に3人の貴人らしき人が椅子から立ち上がってこちらに頭を下げている。

 慌てておれ達も会釈を返す。

 お互いの顔が上がった瞬間

「アカリ、生きていたんですね」

「フレンダ、生きていたのね」

 明莉が3人の内の1人に駆け寄り抱き合った。

「心配したのよ」

「私だって」



「たしか君はアカリだったか?」

「はい、よくご無事で、国王様」

 この人はペルジュ王国国王らしい。

 国王がアカリと無事を確認し合う。

「そちらの御仁がエリクサーの本当の持ち主のタクマ殿か?」

「佐藤琢磨です。エリクサーはマティルダさんに上げたものですから、もう私のものではありません」

「それでもあなたには感謝してもしきれないほど感謝している」

「なんがあったかお聞きしてもよろしいですか?」

 それから敗戦してから今に至るまでの経緯を聞き、今後どうするかを相談した。


………

……


 この3人は、ペルジュ王国の国王と王妃、それに王女のフレンダ。

 3人はおれがマティルダさんに預けたエリクサーで命を救われたらしい。

 これからの展望を聞いてみる。


「王都を奪還すると、なんとか成るんですか?」

 おれが国王に聞いてみる。

「逆にいうと、王都を奪還するまでの道のりが一番険しい」

「王都を奪還しても兵士や役人が居ないと保持するのも難しいですよね」

「うむ、その通りなんじゃが」

「では、王と私でゆっくり王都に向かいましょう」

「それはどういうことですかな?」



「まず国王が王城奪回を宣言し、ゆっくり王都に向かいます。その途中で元ペルジュ王国の兵士や役人を拾って行きます。

ペルジュ王国国王の兵が必ず王都を奪回するという確信があれば、多くの人材が戻って来るでしょう」

「その奪回が出来るかどうか?」

「私に任せてください」

「エリクサーを惜しげもなく提供してくれるタクマ殿なら、何かやってくれそうな予感がするな。よし、お任せしよう」

「では、早速、国王帰還の宣言をお願いします」


………

……


「う~ん、王軍が大きくなると、全員を守るのも一苦労だな」

『マスター、アトラスから持ってきた剣を与えてみるのはいかがですか?』

「闘気や魔力の練り方や使い方を自動補正してくれる剣か!何本くらい持っているんだ?」

『私は100本くらいです。マスターは?』

「リハク師匠の物置から頂いてきたのが10本くらい、その他に依頼や盗賊などで40本くらい。

で、この世界の人がそれらの剣を使った場合、どれくらい強くなるの?それと精霊の力との弊害は?」

『ピンキリですが、ピンで100倍、キリで2倍といったところですか。

精霊の力との弊害ですが、そもそも闘気や魔力に比べそれほど大きいわけではありません。

むしろ精霊の力で覚えた魔法などは、そのまま意識せずに魔力に変換されて放出されます』

「50倍って、心身共にヤバいよね。精神ぶっ飛んだり、筋肉繊維プチプチいったり!?」

『はい、楽しみです』

「却下、何倍までなら耐えられそう?」

『この世界の強者と呼ばれる人でも15倍っていったところでしょうか?』

 と、いうことで、13倍~15倍までの武器を見繕ってみた。

『斧が多いですね』

「うん、盗賊結構討伐したから」

 まとめると

  片手剣が4本

  両手剣が1本

  槍が2本

  斧が23本

  弓が1張

 となった。


……


「マティルダさん、明莉、ちょっと相談が」

「なになに従兄(おにい)ちゃん、私にしか頼めないこと?」

「そういわれれば、そうかな。

実は軍が大きくなると、おれ1人で全員を守るのが難しいんだよね。なので2人にちょっと強くなってもらいたいと思っているんだ」

「強くって、具体的にはどのようにして?」

「うん、ちょっとこれを見て」

 おれは2本の剣を出した。


「これは、おれが前に居た世界で調達した剣。

闘気と魔力の練り方や使い方を30倍くらいに自動補正してくれる。闘気ってのは力の源で、魔力は魔法の力の源って感じかな。

で、これを使って強くなって欲しいんだけど」

「え、この剣を使わせてくれるの?」

 明莉が嬉々とした表情で聞いてきた。

「うん、ただこの剣を使うと身体と心が壊れちゃうんだよねー」

「「怖っー」」

「その壊れた身体と心を、おれの魔法とこの飴で直していくとより強くなれるんだ」

「私達に、どこぞの野菜星人と同じことをやらせようとしているの?」

 明莉が聞いてきた。

「そういうこと」


「ん~、ちょっとその剣振るわせて」

 そういうと明莉が剣を1本持って立ち上がった。

「この剣ちょっと重いよ」

「ふん」

 剣を振るう。

「シュッ」

 凄い速度で剣が振り下ろされた。

「痛ったー」

 明莉が自分の体を抱きしめるようにして蹲った。

《パーフェクトヒール(完全回復)》」

「あ、痛みが消えた」

「これを、痛くなくなるまで繰り返すんだ」

「「…」」


「えっと、じゃあ魔法を使うとどうなるの?」

 マティルダさんが、おれに聞いてきた。

 おれと明莉がマティルダさんを見る。

「え、私に実際やってみろと言うこと?」

 マティルダさんがもう1本の剣を取った。

「《精霊の力を我に》《ファイアボール《火球》》」

「ゴー ドッゴーン」

 巨大な火の玉が飛んで行った。

 マティルダさんの目が虚ろだ。

「マティルダさんこれを舐めてください」

 と、マリアナさんがくれた飴をマティルダさんの口に差し入れた。

 おれの《スピリットヒール(癒し)》では、壊れた心を完全修復出来ないのだ。

「うう、最悪な気分です」



「と、まあこんな感じです」

「「さらっていわないで」」

 明莉とマティルダさんに怒られた。

「短時間で強くなる方法がそれしかないんじゃ仕方ないわね」

 渋々ながら、承諾してもらった。


 剣術の稽古はおれの《ヒール》が必要なため、おれが見守ることにした。

 魔法の稽古は2人でやることになった。なんでも顔が呆けた状態で、おれに、口の中に飴を入れられるのが、耐えられないらしい。

 女の子どうしでやるので、近づくなといわれた。


 あとは、13倍~15倍の武器を誰に渡すかだな。


「マティルダさん、ここの指揮官って会えますか?

効果は薄いんですが、強くなれる武器が他にもあるので、出来るだけ兵士に渡したいと思います」



「ここで指揮官の真似をしている、元騎士団のケイスです」

「冒険者をしているタクマです」

「タクマ殿の活躍はお聞きしております。我がペルジュ王国へのお力添えありがとうございます」

「さっそくですが、ここに持つだけで強くなれる武器があります」

 といい、武器の持つ効果を説明する。



「試してみてもよろしいですか」

「ええ、どうそ」

 15倍の剣を選ぶ。

「ふん」

 ケイスが剣を振るう。

「シュッ」

 凄い速度で剣が振り下ろされた。

「うおー」

「体に痛みはないですか?」

「ええ、大丈夫です…今のは私が振るった剣ですよね。馬鹿げた効果です」

「ふん」「ふん」「ふん」

 嬉しそうに何度も剣を振るっている。


「で、この武器を使って、軍を強化すればいいんですね」

 素人が口を出すといいあまり結果が出ないので、武器の配分を全てケイスさんに任せた。


 数日後、斧をもった異様な軍団の姿があった。彼らは縦横無尽に駆け回り、敵軍に多大なダメージを与えまくった。


 ペルジュ王国王軍の進行が止まらない。

 どんどん数が増え、今では2万人に膨れ上がっている。

 おれは中央で国王の護衛をする。

 前方にはマティルダさんを、後方には明莉を配し、何かあってもおれが駆けつけるまで粘ってもらうようお願いした。


………

……


 王都の門前。

「これより王都へ入る。住民や住民の物に手を出したものは処罰する。敵はバグナール帝国の兵、皆のもの王都を取り戻すのじゃ。突撃せよ!」

 斧軍団が王都の門にせまる。敵の矢は斧で防がれ、魔法は斧の一振りで無効化される。

「門をぶち壊せー」

 二十数人の斧軍団が一斉に王都の門に斬りかかる。

「ドッコーン バキッ ボコッ」

 ものの数秒で王都の門が壊された。

「進めー」

 斧軍団の勢いが止まらない。

「バジル軍団長、敵兵はほとんど抵抗してきません」

 実際には抵抗空しく、瞬殺されているだけだった。

「それはいいことだ。ならそのまま敵を蹴散らせー」



 王城の前に来た。

「城内のバグナール帝国軍に告ぐ、城を明け渡すのなら命までは取らない。抵抗するなら容赦はしない。太陽が真上にくるまで決断せよ」


………

……


 20人足らずの変わった服の兵士が出てきた。

「私はイスカンド帝国の遠征軍副隊長ダドリーだ!ここを通りたければ、我々を倒していくんだな」


 イスカンド帝国軍とペルジュ王国斧軍団の戦いが始まった。


 遠征軍副隊長ダドリーの前に斧軍団長バジルが立ち塞がった。

「私は斧軍団長バジル、お相手致す」

 ダドリーとバジルの戦いが始まる。


「《精霊の力を我に》《ヘルファイア(業火)》」

 ダドリーが魔法を放つ。

 バジルが斧を振るって業火を消す。

「馬鹿な?こんな雑兵の一振りで、私の業火が消されるなんて…」


 今度はバジルが魔法を放ちながら、おもいっきり斧を振る。

「《ウィンド()》」

「ゴーーー」

 暴風がイスカンドを襲う。ダドリーが城壁近くまで吹っ飛ばされた。

 


「あれ?今あの人、詠唱して無かったよね。スパルタン」

『はい、そうですね。マスター』

「今のって、魔法?それともただの腕力?」

『魔法と腕力、両方の効果が重なったものだと思われます』

「斧軍団やるね」



 バジルの斧攻撃が半端ない。一撃一撃が重いのだ!

 ダドリーが攻撃に転じられない。有効な攻撃が出来なかった場合、逆に斧で吹っ飛ばされる可能性が大きいのだ。

 ダドリーがバジルの攻撃を躱す。

 ダドリーがこの一瞬に賭け、バジルの懐に飛び込もうとした瞬間。

「ドッコーン」

 何かが剣にあたった。ダドリーのすぐ後ろに迫っていた城壁に、バジルが振り下ろした斧が当たって、粉砕した岩がダドリーの剣に当たったのである。

 その衝撃でよろめいたダドリーの頭の上に、今度は城壁の大きな破片が落ちてきた。


 この勝負はダドリーの気絶で幕を閉じた。



 ダドリーが気絶した頃、斧軍団とイスカンド帝国軍の戦いも終わりを迎えようとしていた。


 斧軍団は、イスカンド帝国軍の放つ魔法を斧の一振りで消してしまい、剣を交えれば斧でその剣を折ってしまうのである。


「スパルタン、あの斧って、アトラスの盗賊達が持ってた、効果小の斧だよね?」

『はい、マスター。効果()の斧です』

「あれを持っていた盗賊達って凄く弱くなかった?」

『マスターは自分の強さを自覚してください』


 結局戦いは、斧軍団の圧勝で終わった。



「よし、城門を壊せー。弓と攻撃魔法で、城壁の上に居る兵士を排除せよ。城門を突き破れー」

「ドッコーン バキッ ボコッ」

 ここでも斧軍団が大活躍だった。


「王室までの路を確保しろ」

 剣を持った兵士達が城の中に突入する。マティルダさんも飛び込んだ。


……


 数十分後、城の中から一人の兵士が飛び出してきた。

「敵兵は逃走しました。敵兵は逃走しましたー」


「「「「「うぉー」」」」」

 雄叫びが上がる。


 兵士達は泣きながら抱き合い、喜びを表していた。

 国王は目に涙を浮かべ、静かに何度もうなずいていた。


王城奪回から6日目:


王都:


「だいぶ街も活気が出てきたね」

「はい、従兄(おにい)ちゃん、ペルジュ王国自慢のパンだよ」

 パンを受け取る。

「この世界に来て、こんな美味しそうなパンに出会ったのは初めてだよ」

「食べて食べて」

「パク」

「うん、ほんのりとミルクの香がする。美味しいよ」

「でしょう、紬が再現させたの!」

「そうなんだ!?しっかりした娘なんだろうな?」

「そう思うでしょう、でも現実はすごく大人しくて引っ込み思案な娘なの。無事で居ればいいんだけど…」

「明日からまた探しに行こう」

「うん」




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