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魔剣の呪いがスパルタって!  作者: 軒下水滴
ガイアス編
28/31

27.アカリ

ペルジュ王国:


 後藤隼人が女を物色しながら街道を歩いている。

 バグナール帝国を脱走した後、毎日のように女を漁っていた。

 顔なじみの娘を見つけた。


「佐藤明莉か、久しぶりだなー」

「くっ、後藤隼人!」

 佐藤明莉は咄嗟に逃げようとした。

「逃がさねえよ」

 後藤隼人が佐藤明莉の進行方向に回り込む。


 佐藤明莉が剣を抜く。

 右手を切り落とされてから、左手の片手剣になった。

 片手だとどうしても剣のスピードが遅くなるため、極限まで剣を軽くした。

 突きを多用した戦い方に変えた。

 受けに回ると剣が弾かれるので、常に攻めることを心がけた。

 使えるものは何でも使うことにした。

 ただ、精霊の力が落ちてた。


「おい、明莉、お前はおれには適わない。降伏しておれの物になれ」

「死んでも嫌よ」

「ならもう片方の腕も切り取って、抵抗できなくしてから可愛がってやる」


「《精霊の力を我に》《ボッグ(泥沼)》」

 佐藤明莉が泥沼魔法を発動する。

 泥沼化が完了する前に、後藤が地面を蹴って飛び退いた。

 彼の着地点を予想して再度

「《精霊の力を我に》《ボッグ(泥沼)》」

 泥沼化が完了している。これで彼は泥沼にはまるはず!

 だが、後藤は足が沈む前に高速で足を動かし、こちらに向かって走って来た。


 交差した瞬間、とっさに右手の剣で突きを繰り出す。躱される。

 そのまま速度を落とさずに通り過ぎ、50メートルの距離で立ち止まった。

 「《精霊の力を我に》《ヘルファイア(業火)》」

 「《精霊の力を我に》《バリ…(障…)》」

 魔法を予想してバリアで防御しようとするも、間に合わない。

「キャー」

 精霊の力が落ちているため、致命傷に成りかねないような損傷を負う。

 全身が焼け爛れ激痛が走る。目が開かない。

「うぅぅ…」


「やっぱ、お前はいらねーや」

 後藤が振り上げた剣を振り下ろす。

「ギャー」

 佐藤明莉の右腕が斬り飛ばされた。

 後藤が剣を振り上げる。

「お前はこんな何処かも分からない世界で、誰にも知られずに死ぬんだよ。じゃあな」

 剣が振り下ろされた。


「《バリア(防壁)》」

「カキン」

 後藤が振り下ろした剣が弾かれた。


「《パーフェクトヒール(完全回復)》」

 明莉の火傷がみるみるうちに治り、左右の腕が生えていく。

(全身の痛みが消えていく。両手がむず痒い)

 明莉が目が開いた。



「大丈夫ですか?ペルジュ王国の方ですよね…?え、お前、明莉か?」

「…え、従兄(おにい)ちゃん?

うわーん~~~うわーん~~~従兄(おにい)ちゃ~ん」



「なんだてめー」

 感動の再会を無視して、後藤が斬りかかってきた。

 おれが明莉に覆い被さるよう明莉を抱きしめ、後藤の剣を背中で受ける。

「ドシッ」

 切りつけてもビクともしない。

「なんだ!くそっ」

「ドシッ」「ドシッ」「ドシッ」

「なぜ斬れねー」

「お前が弱いからだろう?」

「おれが弱い!?ふざけるな、おれは無敵だ、誰よりも強えーんだよ」


「明莉、痛いところない?」

「あれ?ぜんぜん痛くない。腕も元に戻ってる。服が焼け焦げている…キャーーー」

 際どいところを残し、服のほとんどが焼け焦げてボロボロに破けていた。

「とりあえず、これ着て」

 おれは格納魔法で、ゴードンさんから貰ったマントを取り出し渡して上げた。

 明莉がマントを羽織る。

「ちょっと従兄(おにい)ちゃん、これ短いんですけど」

 見ると上半身用の短いマントだった。

 

「無視すんじゃーねー。誰なんだてめーは?」

 後藤が喚く。

「あー、うちのお爺ちゃんとお祖母ちゃんには3人の子供が居て、

長男が大地叔父さんで、次男がうちの父親で、その妹が明莉の母親で、

おれと明莉はいとこ同士という関係になる」

「馬鹿みてーに長い説明の割には、自分の名前も名乗ってねーじゃねーか」

「ああ、佐藤琢磨だ!よく覚えておけこのクソ野郎!」

「そうか、おれはごと「バゴッ」」

 おれの拳が後藤の口にめり込んだ。前歯の数本が飛んで行く。

「興味ねー」


 後藤が後ずさりながら距離をとる。

「てめーぶっ殺してやる。《精霊の力を我に》《ヘルファイア(業火)》」

 業火魔法を放ってきた。

 おれは頭上を手のひらで払い、業火を消す。

「き、消えた?」

「《精霊の力を我に》《ヘルファイア(業火)》」

 再度業火魔法を放ってきた。

 おれは頭上を手のひらで払い、再度業火を消す。。

 得体の知れないものでも見たような、怯えた顔でおれを見つめる。

 ゆっくりと後藤に歩み寄る。

「うわー」

 後藤が叫びながら剣を振り下ろす。

「バキッ」

 左手でその剣を掴み、砕く。

 そのまま左手で後藤の胸倉を掴み、体を持ち上げた。

「うわーーー」

 慌てて後藤がおれの顔面を殴るが、おれはそれを無視する。


 後藤の顔面を殴る。

「ひぃ」

 殴る。殴る。殴る。

「ひぃ、いたっ、いでっ」

 何度も何度も殴り続ける。



「かん、べん、して、くだ、さい、さ、とう、さん、…」

 後藤の意識が途切れた。顔面が血に染まり崩壊していた。

 おれが手を離すと後藤がその場で崩れ落ちていった。

『精霊の力が抜けていきす。敗北して心の折れた者には興味がなくなるのでしょう』

(精霊も結構冷たいんだな)



「本当に従兄(おにい)ちゃんなの?」

「ああ、異世界に飛ばされてしまってね。明莉も異世界に飛ばされたってとこか?」

「うん、従兄(おにい)ちゃんが行方不明になってから1年くらい後に」

「大騒ぎになったろう?」

「うん、従兄(おにい)ちゃんが行方不明になった後、従兄(おにい)ちゃんの部屋から凄い内容のエロ本が見つかって、悲しんでいいやら呆れていいやらで、叔母さんも複雑な顔をしていた」

「…だよねーあれ見たらそうなるよねー」

「大丈夫、私ならあの性癖も耐えてみせるから」

「…いや、そもそも興味本位なだけで、性癖じゃないからね」

「こんなマント着せといて、いい訳しなくても大丈夫」


「明莉は何処で、転移に巻き込まれたんだ?」

「駅のホームで電車を待ってたら。従兄(おにい)ちゃんは?」

「おれはコンビニ帰りに」

 その後、おれ達はこの世界に転移した経緯や、どう過ごしてきたかなどをしばらく語り合った。


……


従兄(おにい)ちゃん、マティルダさんって人を探しにここに来たんだ!?」

「明莉はその友利紬って友達とペルジュ王国のお姫様を探すのか?」

「うん、紬は一緒に逃げたんだけど途中で逸れてしまって」


「この国は今どういう状況なんだ?」

「バグナール帝国から来た人達は暴走気味で、旧ペルジュ王国の人達は政権奪回に向けて戦ってるって感じ」

「じゃあペルジュ王国の人達を助けようか」

従兄(おにい)ちゃんがいれば無敵ね。頼りにしてるわ」


………

……




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