19.日常
侯爵家:
「タクマ君、私達がハリセンでバルサン侯爵を叩いているのを、ロートレック公爵様にバレてしまった!」
グラッセ伯爵が困った顔をして語りかけてきた。
「そうですか。それでどのようなお話に?」
「そのハリセンを持って、会いに来るようにと」
「いつですか?」
「すぐにでも。ギルドの依頼もあるだろうがすまん、一緒に来てくれないか」
「はい、わかりました」
「依頼で得られたであろう報酬は、かわりに私が払おう」
………
……
…
2日かけてロートレック公爵邸に到着した。
「お待ちしておりましたグラッセ伯爵。どうそこちらに」
執事さんが迎えてくれた。
豪華な扉のある部屋の前に来た。
「ロートレック公爵様、グラッセ伯爵様をお連れしました」
「そうか、入ってもらえ」
「失礼します」
グラッセ伯爵に連れられ、おれも部屋に入る。
「グラッセ伯爵と冒険者タクマ、ロートレック公爵様のお呼び出しを受け、参上いたしました」
グラッセ伯爵が挨拶する。おれも真似て頭を下げる。
「うむ、堅苦しい話は無しだ。君が冒険者タクマか!?なんでも最近、ハリセンなるものを使かって、面白いことをやっているらしいな?」
「は、包み隠さず申し上げます。私とこれなるタクマは、そのハリセンを使いバルサン侯爵様を叩きまくっております」
とグラッセ伯爵がおれを庇うように応える。
「クククク、ワハハハ、それは愉快だな。わしも参加したいくらいじゃ。してそのハリセンなるものの効果だが、詳しく教えてはくれないか?」
「タクマ君、説明をお願いします」
「はい。お初にお目にかかります。冒険者のタクマです。私の持つハリセンで叩かれると、叩かれる以前の半日分の記憶を無くします。記憶を無くす以外の副作用はありません」
「そうか、今そのハリセンはあるのか?あるなら出してみてくれ」
「はい、これにございます」
と、ハリセンを出して見せる。収納魔法については特に聞かれなかった。事前に教えてもらっていたのだろう。
「うむ面白い形をしている。叩かれて無くした記憶は、復活することはないのか?」
「はい、いまのところそのような事例はありません」
「君には、前に国宝級のお宝を頂いている手前、頼みづらいんじゃが、それをわしに譲ってはくれないだろうか?いや代金は支払おう」
「差し上げてもよろしいのですが、何に使うかお聞きしてもよろしいですか?」
「うむ、ただでくれるというのであれば、絶対口外しないことを条件に話してやろう」
「お約束いたします」
「実はな…妻に浮気がバレた時に、これで妻の記憶を消し飛ばそうと考えている」
(クズですか!)
「おお、公爵様、それは素晴らしいお考えで」
(あんたもか!)
「わかりました。だたし、記憶が消えるのは半日前までです。何日も前の記憶は消せませんので」
そういって、手に持っていたハリセンを渡す。
「ありがとう、君には本当に感謝している。そうそう、グラッセ伯爵の爵位が侯爵に上がることが決まった。君の献上したエリクサーのおかげだ」
どうやら国王にはエリクサーのほうを渡したらしい。
「私が侯爵ですか!ありがとうございますロートレック公爵様。ありがとうタクマ君」
「タクマ、君には色々話を聞きたいと思っていたよ。よかったら話を聞かせてくれ」
そうして、日本のことや、おれがこの世界にきた経緯などを話した。
……
…
「タクマよ、なかなか興味深い話であった。もしわしにも手伝えることがあったらいってくれ、力になろう」
「ありがとうございます。今一番欲しいのは、自分の世界に帰る方法についての情報です。何か情報が入りましたら教えて頂けるようお願いします」
…
「ロートレック公爵様、それでは我々はこれでお暇致します」
「うむ、ご苦労であった」
…
グラッセ伯爵とおれが部屋を出て行こうとしたところ。
「そうそうタクマよ。わしもバルサン侯爵退治に連れて行ってはくれないか?」
爆弾を落としてきた。この人本気なの?
おれとグラッセ伯爵の目が合った。
「ロートレック公爵様、いづれ私の方からお声をおかけしますのでお待ちください」
とグラッセ伯爵がフォローしてくれた。
そのままグラッセ伯爵について公爵邸を出た。
………
……
…
ペルジュ王国:
騎士団の訓練場。佐藤明莉と友利紬がペルジュ王国の騎士を相手に戦闘訓練を行っていた。
対戦相手の剣がアカリの胴を捕えた。
「ウッ、参りました」
今日はここまで
「「「「「お疲れさまでした」」」」」
「紬、剣の腕、上達した?」
「私は魔法のほうが適性があるみたいです。明莉ちゃんは?」
「私は剣が好きかな」
……
…
夕食時。
「紬、このパン硬いね」
「酵母使ってないのかも知れませんね」
「紬は酵母作り方知っている?」
「なんとなくですけど」
「作ってみようか!」
部屋に帰って、早速作ってみることにした。
「アカリ、ユイ、何をやっているんです?」
明莉の部屋に訪ねてきたフレンダ王女が興味深げに尋ねてきた。
「私達の世界のパンを作ろうと思っているの。紬が作り方覚えているんだって」
ということで、パン作りが始まった。
…
「まずは、酵母作りから始めます」
「綺麗な瓶にリンゴを切って沈めます。そしてその瓶を暗く冷えたところに入れ軽く発酵するまで1、2日待ちます」
……
…
2日後。
「瓶を普通の温度に戻し、発酵が進むまで5、6日待ちます」
……
…
6日後。
「これがリンゴ酵母です」
リンゴから泡が出ている。
「酵母も出来たので、今日いよいよパンを作って食べようと思います。
まず、オーブンを作らないといけないので、庭に出ましょう」
…
「耐火煉瓦貰ってきたから、これで作ります。2回建ての構造に組み立てればOKです」
アカリ、ユイ、フレンダの3人でオーブンを作る。
「次にバターです。低温殺菌した牛乳を瓶に入れて30分振ります」
…
30分後
「この固形物がバターです。
次は本命の生地作ります。小麦粉に酵母などを練って、丸まったらバターを加えてまた練ります。
その後この生地が2倍くらいに膨らむまで待ちます」
…
30分後
「生地が膨らんだので、ガス抜きをして適当な大きさにちぎります。
その後、濡れタオルをかけ、生地を少し休ませます」
…
12分後
「オーブンを少し温めます。この中に入れて、生地が一回り大きくなるまで待ちます」
…
10分後
「では焼きます。オーブンの温度を190度くらいまで上げてください」
「紬、190度っていわれても分かんないよ」
「そうですね、じゃあ今回は適当にお願いします」
…
15分後
「焼きあがりました」
「「いい匂ーい」」
「「「いただきまーす」」」
「美味しーい、何この香りと柔らかさは!」
フレンダが驚きの表情で食べている。
「これこれ、この味よ」
明莉が懐かしむようにパンを噛み締めている。
「初めてにしては中々の味です」
紬は改善点を考えていた。
「ユイ、これ王室の料理長に教えてもいいですか?」
「はい、どうぞ」
出来上がったパンを持って、王城の調理場へ向かう。
「料理長、ユイが異世界のパンを作ってくれたから、食べてみますか?」
「あ、これはフレンダ様。異世界のパンですか?それは興味深い」
と渡されたパンを持って嗅いでみる。
「柔らかいですね。それにこの香り。では「もぐもぐ」」
一口食べてみる。一瞬固まったと思ったら次々とパンを口の中に運び込む。
「…おぐもぐ…もぐもぐ…もぐもぐ…」
料理長がなぜか泣き出した。
「「「どうですか?」」」
3人で尋ねてみた。
「すばらしい~」
「でしょう!私も一緒の作ったのよ」
「フレンダ様がですか?それはすごい。是非レシピをお教えください」
翌日から王城の食卓に、柔らかいパンが上ることになった。
ペルジュ王国 その2:
「紬、甘いお菓子が食べたいね」
「シュークリームでも作ってみますか?」
「紬はシュークリームの作り方知っているの?」
「なんとなくです」
「作ってみようか!」
部屋に帰って、早速作ってみることにした。
「アカリ、ユイ、何をやっているんです?」
明莉の部屋に訪ねてきたフレンダ王女が興味深げに尋ねてきた。
「私達の世界の甘いお菓子を作ろうと思っているの。紬が作り方覚えているんだって」
ということで、シュークリーム作りが始まった。
「明莉ちゃん、薄力粉が必要なの。料理長に聞いてくるね」
調理室に行って、料理長にパンを作っても美味しくない小麦粉があるか聞いてみた。
………
……
…
翌日
町に出て、昨日料理長に聞いた小麦粉を見に行く。
「しっとりしているので薄力粉に近い小麦粉かも」
ということで、小麦粉を買って帰った。
「まず生地を作ります」
「「はーい」」
「水と牛乳とバターなどを入れ、温めながらバターを溶かします」
「薄力粉を練りまぜ、その後少しずつ卵を練り混ぜます」
「生地を絞り袋に入れ直径6センチに絞り出します。これを200度のオーブンで25分焼きます」
「紬、200度っていわれても分かんないよ」
「そうですね、じゃあ今回も適当にお願いします」
…
25分後
「これがシュー生地になります」
「ここからカスタードクリーム作りに入ります。
卵黄に砂糖を入れこの泡だて器かでき混ぜた後、薄力粉を練り混ぜます。
次に温めた牛乳を少しずつ加え、いい感じになるまでとろ火でゆっくり混ぜます」
「これがカスタードクリームです。明莉ちゃん、魔法で冷やしてください」
「次にホイップクリームを作ります。
低温殺菌した牛乳を殺菌した瓶に入れて1日置いた物がここにあります。
クリームが分離しているので掬い取ります。これが生クリームです。
生クリームに砂糖をいれ、冷やしながらこの特性泡だて器でかき混ぜます」
「これがホイップクリームです」
「後は、シュー生地にこの出来上がったカスタードクリームとホイップクリームを詰めて出来上がりです」
カスタードクリームとホイップクリームの二層シュークリームを食べてみる。
「「「サクッ」」」
「ユイ、これは神の御業です」
フレンダの顔が蕩けている。
「この世界でこれが食べられるなんて」
明莉が泣いている。
「初めてにしては中々の味です」
紬は改善点を考えていた。
「ユイ、これ王室の料理長に教えてもいいですか?」
「はい、どうぞ」
出来上がったシュークリームを持って、王城の調理場へ向かう。
「料理長、ユイが異世界のお菓子を作ってくれたから、食べてみますか?」
「あ、これはフレンダ様。異世界のお菓子ですか?それは興味深い」
と渡されたシュークリームを持って嗅いでみる。
「すごく甘い香りがします。では「パクッ」」
一口食べてみる。一瞬固まったと思ったら一気にシュークリームを口の中に運び込む。
「パクッ」
料理長の顔が呆けている。
「「「どうですか?」」」
3人で尋ねてみた。
「もう一つ下さい」
「少ししか作ってないのよ」
「是非レシピをお教えください」
翌週、街に王家直営のシュークリーム屋さんが出来た。
………
……
…
アースロード王国:
ついに醤油が出来きた。
せっかくなので、料理に使えるよう、何か美味しい素材が取れる依頼を受けることにした。
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依頼書:
A級 《カウカウの討伐》と肉の取得 報酬60万ダリ/1匹 随時
D級 《アメイチゴの実の採取》 報酬 50ダリ/1個 限定1万個
D級 《ウマイチャボの肉の取得》 報酬 1千ダリ/1羽 随時
D級 《ギンポウ茸の採取》 報酬500ダリ/1個 限定1千個
D級 《用水路の清掃》 6千ダリ/1日 本日限定
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「このウマイチャボの依頼を受けたいんですが」
「はい、ウマイチャボが居るのは、ここから東の草原辺りです。見かけによらず、危険が迫ると空飛ぶので油断しないでください。
卵見つけたらそれも1個50ダリで買い取ります」
(卵が取れることもあるのか!)
今日はチキンかつ丼です。
「ふんふんふん」
「タクマさん、いい匂いですね」
「でしょう。レオノールさん。よし、出来上がり」
…
「「いっただきまーす」」
「タクマさん、美味しいです」
…
「おれらが必死に狩りしているのに、なに横で飯食ってんだ!しかもレオノールまで」
ドビアスさんが呆顔で文句をいってきた。
「おれD級で、もう今依頼は終わったんで」
「狩りは中断。飯にするぞー。おいタクマ、おれ達のも飯をくれ」
「お金はもらいますからね」
…
「お、美味いな。今まで食べたことのない味だ」
「タクマ君の作るものはみんな美味いな」
「ほんと、美味しいわー、タクマ君。肉はジューシーだし、卵はふわふわ」
ドビアスさんとクリストフさんとマティルダさんからお褒めの言葉を貰った。
………
……
…
平穏な日々の終わりが近づく




