17.オリオールの冒険者
「ここがアースロード王国の町か」
バグナール帝国から移動し、アースロード王国のオリオール町にきた。
門番にこの町に来た目的を話す。
「冒険者のタクマです。仕事を探しにきました」
ギルドカードを差し出した。
「拝見します…はい、問題ありません。
両替をご希望でしたら、この先の両替所で両替すると便利です」
とりあえず、持ち金を交換した。お金の単位はダレ、バグナール帝国の通貨とダルとほぼ同じ価値だった。
その後、冒険者ギルドの場所を聞いてそこに向かった。
…
冒険者ギルド:
受付嬢に挨拶をする。
「ペルジュ王国から来たD級冒険者のタクトと申します。今日はどんな依頼があるか確かめにきました」
「依頼書はそこにあります。分からないことがありましたらこちらのほうにお問い合わせください」
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C級 《ジャッカルの討伐》 報酬 2千ダリ/1匹 随時
D級 《アメイチゴの実の採取》 報酬 50ダリ/1個 限定1万個
D級 《フキモドキ草の採取》 報酬 50ダリ/1本 限定1千個
D級 《ギンポウ茸の採取》 報酬500ダリ/1個 限定1千個
D級 《用水路の清掃》 6千ダリ/1日 本日限定
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D級の依頼を上から眺める
「《アメイチゴの実》の採取か」
「その《アメイチゴの実》は南の丘に生えている」
「《フキモドキ草》の採取か」
「その《フキモドキ草》は南の丘に生えている」
「《ギンポウ茸》の採取か」
「その《ギンポウ茸》は南の丘の先にある、林の中に生えている」
「あの~」
「お、悪い悪い、D級冒険者か!その《ギンポウ茸》の生えているところは、今、《ジャッカル》が出現している。気を付けるんだな」
「はい、D級冒険者のタクマといいます。ありがとうございます」
「A級冒険者のドビアスだ!何かあったら訪ねてくるといい」
……
…
《ギンポウ茸》を採取しに南の丘を自転車で走行中していたら、稲のような植物が目に留まった。
「お、もしかしてこれって稲か?こっちは麹病にかかっているのか!これを使えば種麹が作れるかも」
ルンルン気分で爆走したあと、林の中で《ギンポウ茸》を採取。
「40本もあればいいか!」
林から出ると、遠くで数匹の犬型動物がこちらを伺っている。
先頭の1匹が雄叫びを上げると、後ろから20匹のジャッカルが現れた。おれに向かって走ってくる。
100メートルくらいまで接近したところで、おれはジャッカルに向かって斬撃を飛ばした。
ジャッカルが半分くらいに減る。続けざまにもう一回斬撃を飛ばした。すべてのジャッカルが倒れていた。
(これって埋めるべきなのか?)
と悩んでいると。4名のパーティ―が近寄って来た。
「おいおい、この数のジャッカルをタクマひとりで倒したのか?D級の強さじゃねえなー」
A級冒険者のドビアスさんだ!
「まあいい、でこのジャッカルはどうする、C級以上がギルドに耳を持っていけば報酬が貰える。代わりに持って行ってやろうか?手間賃は晩飯でどうだ!」
「分かりました。耳を切り取ればいいんですね?」
「ああ、右耳をこういう風にな」
全てのジャッカル耳を切り取り終える。
「あのー、残った体の方はどうすれば?」
「肉は不味くて食えねーから、埋葬だな」
「分かりました」
「《ホール》」
地面に穴が空きジャッカルが落ちる。
「《フィル》」
空いた穴が埋まる。
「お前、無詠唱で魔法を発動出来るのか!」
ドビアスさんが驚いたように声を発した。
「なんでそんな強いのにD級でやってんだ?」
「冒険者になったばかりなので」
「実際どんくらい強いんだ?」
「たぶん、この世界で一番くらい」
「大きく出たなー」
………
……
…
それから約束通り夕飯を奢ることになった。
ここはエルシーさんという綺麗なおねえさんがホール係をやっている、食堂兼喫茶店の《猫の手》
「じゃあ、改めまして、おれはA級冒険者のドビアスだ。パーティ―《進撃》のリーダー兼盾役をやっている」
「僕はA級冒険者のクリストフ。パーティ―《進撃》で後衛をやっている。よろしくタクマ君」
「私はA級冒険者のマティルダ。パーティ―《進撃》で前衛をやってるわ。タクマ君よろしく」
「私はA級冒険者のレオノールです。パーティ―《進撃》で同じく前衛をやってます。タクマさんよろしく」
「私はD級冒険者のタクトです。今日アースロード王国にやってきました」
「エルシー、酒追加。どんどん持ってきてくれ」
「は~い、ドビアスさん、今伺います」
さっきのジャッカルを倒したときに、いろいろ見せてしまったので、根掘り葉掘り聞かれるはめになった。
…
「そうか、タクマは異世界人だったのか!どうりで強いわけだ」
ドビアスさんが納得している。
「あ、でもなぜか精霊の力は使えませんので」
「え、精霊の力を使わないで、あの強さなのか?」
また根掘り葉掘り聞かれてしまった。
………
……
…
翌日は情報集めに徹した。
ここアースロード王国王都には図書館があり、お金を出せば誰でも本を閲覧出来るらしい。
古い文献を見つけた。
この世界に、何度か異世界人が迷い込んだことがあったらしい。
その異世界は、ひとつは《アース》、もうひとつは《マールス》。
異世界人は自分の世界に帰ることなく、この世界でその生涯を閉じた。
「アースは地球か?ならこの世界におれ以外の地球人がいる可能性があるな」
別の文献をさがしてみる。
この国の何処かに、神隠しの洞窟があるという。
何百年も前に、海の底に沈んだらしい。
「この国の何処かねー、海の近くにあるのか」
……
…
その後《猫の手》でお茶を楽しむ。
…
「ヒイッ」
突然、軽い悲鳴が聞こえたので後ろを振り返る。
煌びやかな馬車から降りる青年と、従者のごとく付き添う2人の男が見えた。
みんなそそくさと、その男達の視線から逃れるように離れていく。
(何んか面倒くさそうな予感がするなー)
3人が《猫の手》に入って来た。
「おい貴様、なぜここに居る?侯爵様がおいでなのだぞ」
(え、どういうこと?)
「おい、聞こえないのか?侯爵様がおいでなのだぞ、目障りだ、どこかに行け」
(あ、ここから消えろということか)
エルシーさんの方をチラリと見る。
エルシーさんが首を小さく横に振る。
(行かないでくれというふうにも見えるが?)
「私は今お茶を飲んでいる途中です。もし目障りと思うのなら、店に入らなければいいでしょう?」
「貴様、この方が誰だか分かって言っているのか?このお方はバルサン侯爵様であらせられる。無礼は許さぬ」
「無礼も何も、権利を主張しているだけです」
「貴様ら庶民が、貴族に口答えしていいなどといった権利はない」
「え、そうなんだ!?知らなかった」
「グラッセ卿は領民の躾もできないのか?今度会ったらおれが指導してやる」
おれはまたエルシーさんの方をチラリと見る。
またエルシーさんが首を小さく横に振りながら何かをつぶやいてる。
(貴族に逆らうなといっているのだろうか?)
「分かりました。出て行きます」
出て行こうとしたおれに従者の一人が突然殴りかかってきた。
「ガツ」
従者が殴った手を反対の手で押さえてうずくまった。骨でも折れたのだろうか?。
「歯向かうか!」
もう一人の従者が剣を抜き、斬りかかってきた。
真剣白刃取りの要領で剣を挟み、そのまま折った。
剣を折られた男は、今度は殴りかかってきた。
「ガツ」
前に殴って来た男と同じように、殴った手を反対の手で押さえてうずくまった。
「逆族だー、貴族に襲いかかってきた、誰かこいつを捕まえろー」
バルサン侯爵様が騒ぎ出す。
「エルシーさん、ちょっとトイレ借りるね。「ガチャ」」
おれはトイレに入るとハリセンを取り出た。
(公然と侯爵をぶっ叩くのはマズイか)
仮面とマントも取り出し、身につける。
「ガチャ」
「忘れてください!」
おれはバルサン侯爵様に向かってそういい、そのままバルサン侯爵様の頭をハリセンでぶっ叩いた。
「スパン」
バルサン侯爵様が眠るように倒れていく。
「スパン」「スパン」
ついでに従者2人の頭もハリセンで叩いておく。
「え、タクマさん、バルサン公爵様を叩いたのですか?」
「いえ、ここに居るのは謎の仮面タックンです、タクマではありません」
「…」
「こいつらのここ半日の記憶は消えたはずなので安心してください」
「記憶をですか!?ありがとうタクマさん」
「いえ、謎の仮面タックンです」
「このバルサン侯爵、最近ちょくちょく来て、お客さんを追い出しちゃうの。たぶん私狙い」
誰かが駆けてきた。ドビアスさんだった。
「おい、なんかあったのかって?あれここに倒れているのはバルサン侯爵か?」
「で、お前はタクマか?」
「いえ、謎の仮面タックンです」
「…」
「私が説明します」
エルシーがおれの代わりに事の経緯を話してくれた。
「私はこいつらを馬車に戻してきますね」
というと、3人の男を引きづって馬車の中に放り込んだ。
子供がジッーとこっちを見ている。
「この暑いのにマント着ている人がいる。前にお母さんがいっていた、突然前を捲って追いかけてくるから気を付けろって。あれは変態っていうんだ」
「いや、それってコートでやるもんだよね。これマントだし。それにちゃんと中に服着ているってからちゃんと見て?」
とマントの前を開こうとした。
「キャー」
この日が変態仮面タックンのデビューの日となった。
ここの領主グラッセ伯爵様と隣の領主バルサン侯爵様は仲が悪く、バルサン侯爵はちょくちょくこの町に嫌がらせにくるらしい。
グラッセ伯爵が慕っているロートレック公爵様と、バルサン侯爵が慕っているガイアール公爵様が対立しているみたいだ。
迷惑な話だ。
………
……
…
ある日:
「おい貴様、なぜここに居る?侯爵様がおいでなのだぞ」
「忘れてください!」
「スパン」「スパン」「スパン」
…
数日後:
「おい貴様、なぜここに居る?侯爵様がおいでなのだぞ」
「忘れてください!」
「スパン」「スパン」「スパン」
…
また数日後:
「おい貴様、なぜここに居る?侯爵様がおいでなのだぞ」
「忘れてください!」
「スパン」「スパン」「スパン」
バルサン侯爵がハリセンで叩かれる光景は、この町の風物詩となった。




