雌蝙蝠8.ハッカを試し尽くすヴァンパイア
家に帰ると、ハッカの入った布袋をキッチンの隅に置いた。
「何から始めればいいかな?」
「迷ったらとりあえず食べるよねww」
ウチは、葉っぱを1枚口に入れた。
「スースーする!口臭に効きそうw」
「オレは慎重派だから、まずは香りを嗅いでみる」
「どう?」
「嗅いだだけでもスースーしてくる…もんだら匂いが強くなった気がする」
「確かに、噛んでるうちに強い清涼感になったかも」
「次はどうする?」
「石ですり潰したらどうかな?それを体に貼ったら、さらなる清涼感を得られそうw」
「外から石を持ってくるから、エリカは深皿を用意して」
「ありがとう。皿ならウチの方が詳しいからね」
焼物の深皿を出すと、アキメネスが持ってきた石でハッカをすり潰した。
「ある程度の量をすり潰すと香りが一気にくるね!」
「作ってるだけで、部屋の消臭にもなりそう」
「そろそろいいかな。腕に塗って!」
「分かった」
ペーストになったハッカを腕に塗ると、心地よい清涼感が得られた。
「風に当たってみたら、より強くなりそう」
「確かに」
換気の為に開けている窓からはそこそこの風が吹いている。窓に近づくと、予想通り清涼感が増した。
「ちょっと寒くなってきたかも…」
「オレまで塗ってなくてよかった。閉めるよ」
窓を閉めてキッチンへ戻ると、風の影響でハッカが少し床に落ちてしまった。
「もったいなかったね…」
「隅に寄せたら、虫除けになるかもしれないよ!試しにこのまま置いてみよう」
「アキメネス、天才だね!その発想はなかった」
「でしょ。褒めてww」
「川でペーストを落としてからね」
「うん」
少し生意気な口を聞くのも、ウチに心を開いている証拠だと思った。
川で腕に塗ったハッカを落とそうと水に突っ込むと、より清涼感が増した。
「水の冷たさと相まって、さらに寒いかも…」
「暑い時には最高だね!今は冷たいだろうけど」
「このくらいでいいかな」
「オレが布で拭いてあげる」
水気を彼に拭いてもらっても、なお余韻が残る。効果は抜群のようだ。
「約束通り、褒めてあげる」
「わ、顔まわりがスースーする!やめてww」
ほっぺに手を当てたり、髪をクシャクシャになでたりすると清涼感が彼にも移ったようで、川の水で拭おうとしていた。
「褒め方が豪快すぎない?」
「いいんだよ。ウチのやり方だからww」
「じゃあ、オレも次はそうするよ」
妖しげな笑みを浮かべた彼を見て、しまったと思った。
家に戻り、残りのハッカを少しずつ乾燥させる事にした。
天日干しにすると日持ちしたり、他の用途にも使える。
「こうやって干してるだけでもいい香りがするね!」
「上手くできたら、皆に配ろうよ」
「そうだね。これなら食べられなくても使えるし、喜ばれそう」
その後、第1弾の干しハッカができたので、加工して使う事にした。
「まずは、石で粉末にしよう」
「できた!次は?」
「外で焚き火にくべよう。この煙で虫除けになりそう」
燻製の煙で空気が満たされると、虫だけではなく邪気も払われるような気がする。
「灰ができたから、取ってくれる?」
「いいけど、何に使うの?」
「歯磨き粉だよ!」
「へぇ、それにもなるんだ」
木灰と塩をハッカの乾燥粉末に混ぜると即席歯磨き粉の完成だ。食事後に効果を試す事にして、別のものを作る。
「今度は何を作るの?」
「ハッカ油だよ。野生動物から作ったラードがあるから、それに乾燥させた葉っぱを漬け込むんだ!」
「これは時間がかかるね」
「そうだよ。漬け込むだけじゃなく、太陽の熱でじっくり温めないと成分が出ないんだよ」
「できるのが楽しみだね!」
ラードの入った壺に葉っぱを入れて、日が当たる所に置いた。
「お疲れさま。お茶にしようか」
「うん!」
「ハーブティーを作るよ!」
「分かった!鍋に湯を沸かせばいいんだね」
「ありがとう。気が利くね」
火を起こして、鍋に水と乾燥させた葉っぱを入れて煮出す。コトコト煮込むと、良い香りが鼻をくすぐった。木のマグカップに注いで飲んでみる。
「美味しい♡」
「疲れが取れる気がするね!」
「色々作って試したから、すごく充実した時間を過ごせたね」
休憩後は、自家製歯磨き粉の効果を確かめる為、敢えてにんにくたっぷりの野生動物ステーキを作った。近所から鹿肉・ウサギ肉・イノシシ肉をいただいたので、ジビエの食べ比べができる贅沢バージョンだ。
「すごく野性味を感じるね」
「食べ比べは滅多にできないから、思う存分かぶりつくんだよww」
「いただきま~す!」
「これは美味しい♡歯ごたえはあるけど、新鮮だから臭みが全くない!」
「にんにくのパンチがすごいけど、どれを食べてもそれぞれの美味しさがあって、癖になる味!」
「年1回のご褒美で食べたいな」
「本当それ!」
美味しくいただいた所で、肝心の歯磨き粉を試す。少量も指に取り、口内に擦り込む。
「しょっぱいけど、爽やかな香りがするね」
「直接擦り込んでいるから、明らかに汚れや臭いが取れる気がする!」
水ですすぐと、違いは明らかだった。
「大分スッキリしたね!」
「前世の歯磨き粉って、ありがたい存在だったなって今なら分かる」
「これは、定期的に作りたいね」
夜は水浴びした後に、ハッカ油を染み込ませた布で体を拭く。香りや清涼感、油の保湿効果がある為、積極的に肌のケアに努めた。
「ただの水浴びより、臭いが取れるし肌も潤うから一石二鳥だね!」
「オレも美容男子になれそうw」
「子供のうちからケアできてうらやましいな…」
「いつ始めても遅くないと思うし、エリカはにんにく臭さえなければ、モテると思うよ!肉をたくさん食べてもスタイルがいいもんね」
「そうかな。ウチがモテモテになったら、嫉妬してくれる?」
「ちょっとめんどくさいから、そこは減点だねww」
「えー、嘘でしょ?」
「…別にモテなくてもいいのに」
「今、何て言った?」
「…秘密」
この頃は家中が爽やかな香りに包まれているので、ミモザを呼べる日も近いと感じていた…。
蝙蝠9へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑧私はチョコミン党です。エリカ達に勧めたらどんな反応をするか気になります!




