雌蝙蝠7.彼との同居が楽しいヴァンパイア
アキメネスと同居を始めてから1ヶ月が経った。
朝は先に起きた方が朝食を作る。2人がほぼ同時に起きる事もあるので、その時は並んで作っている。
「アキメネス、おはよう」
「おそいよエリカ。ご飯が冷めちゃうよ」
「ごめん、ヴァンパイアは低血圧だから(?)朝が苦手なんだ」
「人みたいな言い訳しないで」
「ごめんww」
こんな感じで、彼の方が先に起きてご飯を作ってくれてる日が多い。
それでも彼はウチに恩があるからか、決して文句は言わない。ありがたいけど申し訳ないような気持ちだ。
朝食を食べた後は一緒に家事をしたり、会話や一緒に遊んだりして過ごしている。
「どっちが速いか競争しよう!よーいどん!」
「不意打ちはだめだよ。出遅れた…」
「だって、エリカは速いじゃん。今もすぐ、オレに追いついたし」
「人外ですからw」
「悔しい〜!」
夜はなるべく水浴びをするよう心掛けている。いつかミモザに会えた時に、少しでもにんにく臭を抑えたいからだ。
水浴びして部屋に戻ると、アキメネスから尋ねられた。
「昔は『風呂嫌いのエリカ』って呼ばれたんでしょ?」
「そうみたいだけど、その記憶がないんだよね。今は定期的に入らない方が気持ち悪く感じてるよ」
「ミモザさんが聞いたらびっくりしそうだね」
「転生してから初めてミモザに会った時に、普通に水浴びしてたら彼女にすごく驚かれたw」
そんな他愛もない話をしてから眠りにつく。ベッドは1つしかないので、2人で一緒に寝ている。彼はまだ少年だから、ウチの事はただの命の恩人くらいにしか思ってないだろう。ウチもまた、保護者として責任を感じていたから家族愛としての感情が強い。
時々、眠れない日がある。そういう日は決まってアキメネスが来たばかりの頃を思い出すのだ。
(子供なのに、この環境によくなじんでくれたな…)
初めて彼が来てから数日後、アリウムが様子を見に来た。
「エリカはいつその子を産んだの?」
「隠し子じゃなくて、捨て子を保護しただけ」
「アキメネスです。お兄さんは?」
「ボクはアリウムだよ。エリカの友達のミモザって言うヴァンパイアの番なんだ」
「ミモザさんはどんなヴァンパイアですか?」
「至って普通の…いや、にんにく好きのボクに(本能で)惚れたヴァンパイアかな」
「ここのヴァンパイア達は皆、変わってるんだねw」
「他のヴァンパイアは普通だから安心して」
「そうなんだ。オレってにんにく臭いかな?エリカほどは食べてないと思うけど」
「ボクから言わせれば、エリカと変わらないかも。もはや、家自体にしみ込んでるよねww」
「この子が来てから、こまめに換気するようにしたのに」
「たまにボク達の家まで匂いが来るなと思ってたら、これが原因か」
「これでも、食べる量を控えてるのに!?」
「こもってた匂いが解放されたからじゃない?ヴァンパイア達は大丈夫なの?」
「少なくともミモザは辛そう。鼻が他のヴァンパイアより利くみたい」
「申し訳ない…」
アリウムみたいに、しばらくはにんにく断ちしようと心に決めた…。
アキメネスを連れて、ルドベキアさんの畑に向かった。
彼を紹介するのと、にんにくを控える事を伝える為だ。
「お久しぶりです、ルドベキアさん!」
「エリカか。しばらく見ないと思ったら、坊主がいるな」
「はじめまして、ルドベキアさん。オレはアキメネスです」
「アキメネスよ、お前もエリカのような大のにんにく好きか?」
「オレはそれほどでもないです。ただ、親に捨てられていた所を拾ってくれたんです。今も彼女の家でお世話になっています」
「悔しいな。俺には家の場所を教えないのに、坊主は連れて帰るのか」
「ウチの家に迷い込んで来たのよ。ほっとけないでしょ!」
「なるほど。それなら話は別だな。ところで、今日もにんにくを持っていくだろ?土を耕してくれたらいつもの倍やるからさ」
「その話だけど、これからはにんにくを控えようと思うの」
「もしや、坊主とちちくりあってるのか?」
「違うわよ!アキメネスはまだ少年だし、家族よ。にんにくが苦手な友達に会いたいから控えるの」
「勘違いしてすまねえ。俺とアリウムしか知り合いがいねぇのかと思ってたからな」
「週1で通い詰めていたらそう思われるよね。でも、畑の手伝いはするわ!アキメネスもいるのだから」
「そりゃ助かる。細っこいが手伝えるか?」
「保護されてからは栄養を摂ってるので、大丈夫です!」
「そうか。よろしく頼む」
「頑張ります!」
ルドベキアさんに続いて鍬で土を耕す。アキメネスも、負けじと鍬を振るっているようで安心した。
「エリカはさすがの腕前だ。アキメネスも、初めてにしては筋がいい」
「ありがとうございます」
「ウチの子は何でもできるのよ!」
休憩を挟みながらも無事に手伝いを終えた。
「疲れただろう。ここまで耕せば十分だ。ありがとう」
「達成感でいっぱいです!」
「ウチも久しぶりに手伝ったけど、やっぱり楽しいわね♪」
「にんにくの代わりにハッカでも持ってけ。消臭に役立つはずだ」
そう言うと、ルドベキアさんは布袋いっぱいにハッカを詰めて持ってきた。
「ありがとう、助かるわ」
「これで、友達に自信を持って会えるぞ!」
「オレもエリカが喜んでくれるなら嬉しいです!ありがとうございます」
「坊主、頑張れよ」
「…はい」
「また手伝いに来るわ」
「いつでも待ってるぞ」
何やら2人が小声で話していたが、気にせずその場を後にする。ハッカをどう使おうか考えながら歩いた…。
蝙蝠8へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑦私もエリカと同じく朝早く起きるのが苦手です。ヴァンパイアって、夜勤に向いてそうなイメージがあります。労働人口不足解消に一役買ってくれそうですw




