雌蝙蝠3.名無しのヴァンパイア
「あんた、昼間から水浴び?根っからの風呂嫌いはどうしちゃったのよ」
「え、そうなのですか?というか、あなたは誰ですか?」
「本当にどうした!?友達じゃん!あたしはミモザよ」
「ミモザさん…全然思い出せない」
「さん付けなんかやめてよ。他人行儀過ぎて寒気がする」
「分かった。でも、私自身は誰なの?」
「あんたは、『風呂嫌いのエリカ』よ。ついでに一人称は『ウチ』よ。2週間に1回渋々入るような子なのに、何したの?」
(今は『エリカ』っていう名前なんだ…)
前世の記憶がある事は混乱を招きそうなので言わなかったが、ここまでの経緯を説明した。
「え?にんにく投げつけられて無事どころか、かじってパワーアップしたの?信じらんない!」
「やっぱり変だよね。ケガした指を見たら、ふらついたし」
「そんなヴァンパイアは聞いた事ないわ。ところで、あんたはいつまで水浴びしてるつもり?風邪引くわよ」
「汚れた服も洗おうとしたら声をかけられたから、出るに出られなくて」
「あたしが洗ってあげるから、上がりな」
「ありがとう」
(友達というのは本当なんだな。記憶のない自分を受け入れて色々教えてくれるから)
濡れた体を拭いて新しい服に着替えた私…いや、ウチは改めてミモザにこの世界について教えてもらう。
「この国の名前は『ダリア・グラジオラス共和国』よ」
「結構長めだね」
「あたし達のようなヴァンパイアは貴重なのよ。だから、人里離れた住処でひっそりと暮らしてるの。番を探す時だけ街なかに出てるわ」
「ウ、ウチは番を探してたのかな?」
「きっかけはそうかもね。でも、血がだめなら番なんかいらないでしょ」
「ミモザは番がいるの?」
「いるわよ。毎日イチャイチャしてるわ♡」
「うらやましいな…」
「でも、彼はにんにくを断つ羽目になった。大好物だったらしいのに、あたしが見初めた結果なのよ。かわいそうだけど、ヴァンパイアの本能は止められないし、彼も今は『幸せだ』って言ってくれる」
「そっか…」
「あんたはいいじゃない。寿命は人より長いけど、にんにく好きな男を見つけられるし、吸血行為で彼が苦しまなくて済むのよ!」
「そう考えればこの体も悪くないかもね」
「あたしはいつでもあんたの幸せを願ってるわ!服も綺麗にすすいだから、ちゃんと干しとくのよ」
「ありがとう!」
彼女は番の下へ帰っていった。その後、ミモザはウチの家を訪れて話をしに来た。
「あたしの番が『美味しいにんにくを作る農家を知ってるから紹介したい』って言ってるわ!どう、行かない?」
「確かに元気がなくなってきた。にんにく1つだけじゃ栄養が足りないのかも…」
「決まりね!呼んでくるわ」
ミモザは番を呼ぶ為に戻っていった。にんにくが弱点のはずなのに、特異体質のウチを案じて協力してくれた事が何より嬉しかった…。
蝙蝠4へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話③エリカの風呂キャンの理由は後に分かります。




