雌蝙蝠10.(最終話)番を見つけたヴァンパイア
あれから数年が経った。
赤ちゃんだったミモザとアリウムの子供(女の子)は、おしゃべりな幼児となり、日々2人を笑わせているという。
「ママ、パパみて!ワタシのへんがお〜」
「もう、だめじゃない。かわいいお顔が台無しよww」
「まあまあ。気が済むまでやってもいいんじゃないか?そのうち飽きるさ」
「これは〜?」
「前より面白いねww 色んなパターンがあるんだね」
「ワタシね、おおきくなったらこのかおで、つがいをつかまえるの!」
「そ、そっか。がんばって」
(鼻をほじりながらでは、番は見つからないと思うわ…)
子供の将来が不安になりつつも、自由に育てているようだ。ちなみに2人は育児疲れで痩せてしまったけど、近所の人の力も借りて何とか頑張れているみたい。
ルドベキアさんは、変わらずにんにくを作り続けている。最近になって、ようやく子供達がにんにく作りに興味を持って手伝いをしてくれるようになったらしく、生産量を増やす事ができたみたい。売り上げも伸びたので、新しい農機具を買えたと喜んでいた。
「お父さん、今まで手伝わなくてごめんね。私達が何もしないから、赤の他人に手伝わせていたんだよね」
「もちろんそれもあるが、彼らはにんにくが好きだから手伝ってくれてたんだ。仕事ぶりもよかったし、報酬のにんにくも喜んでくれていたから、俺としても楽しかった」
「僕もお父さんの背中を見て、農家を継ぎたいと思った。だから、やり方を教えて欲しい!」
「こんなにも嬉しい事はないな!安心安全のにんにくを届けたいから、指導は厳しいぞ」
「頑張る!」
ウチはというと、血は飲まずとも人外だからか、自分自身の見た目には変わりない。ただ、アキメネスは少年だったあどけなさがなくなり、大人びた青年へと成長した。
「エリカ、この数年で背が伸びたと思わない?昔はエリカの方が高かったけど、今ではオレの方が逆転したよね」
「本当にそうだよね!息子の成長を見守る母親の気持ちが分かったわ」
ドンッ。不意にアキメネスがウチの前で手を付く。
「オレはここに来てから、1度もエリカを『母親』だと思った事ないけど」
「え?」
「ここまで言わなきゃ分からない?最初から、ずっと1人の女性として見てたよ」
「そ、そうなの?」
地雷を踏んだと同時に、嬉しさも感じてドキドキする。
「アキメネスは少年だったから、ウチの事は恋愛対象にないと思ってた」
「だって、露骨に態度には表せないでしょ。一方通行な気持ちでエリカを困らせたくなかったし、嫌われたくもなかった。でも、もういいよね?オレもこの国では成人してるから」
ウチの頬に手を添えてキスをしたと思ったら、髪をクシャクシャにかき乱される。
「あ、あの…」
「前にこうして褒めてくれたでしょ。その時の『お返し』だよw」
思い出した。ハッカの利用方法で、新たな使い道を発見した時に豪快に褒めた事を。
「ん?でも、その時はキスはしてないよ」
「『息子』として見てたからでしょ。オレはもう大人だから、それを分からせたかったんだ」
そう言って再びキスをする。さっきよりも長く、何度も繰り返して。
「ねぇ、オレの事好き?ドキドキする?」
「うん、すごくドキドキするし、ウチもアキメネスが好きだよ!」
「こんなのまだじゃれ合いだから、覚悟してね」
直後、体が浮き上がる感覚がする。出会った頃はウチが彼を抱えていたのに、今じゃウチの方が彼のたくましい腕の中だ。
「本当は婚姻の儀をしてからだろうけど、我慢できない。全部見せて?」
「う、うん…」
彼に服を脱がされた。
「ヴァンパイアって蝙蝠の翼があるんだよね?」
「昔は立派な翼があって、空を飛び回ってたみたい。でも、今は退化して小さな翼の名残りがあるだけ」
うちは、後ろを向いて翼を見せる。
「本当だ。これ、動かせるの?」
「一応は動くよ」
パタパタと微風が吹く程度には、翼を動かす事ができるけど、飛ぶ事はできない。
「かわいすぎる…」
「今まで見せてなかったもんね」
「翼に触れてもいい?」
「…どうぞ」
最初は優しく触れていたが、突然噛みついた。
「痛っ!」
「甘噛みしただけ。ごめんね?」
うるうるした瞳で謝られると、なんだか許したくなる。
「お詫びに優しくするから、いいでしょ?」
「ずる賢いなぁ。惚れた方の負けだね…」
「やったー!好きだよ♡」
彼には一生敵わないと思った夜だった…。
その後、ミモザ達に番になった事を報告すると、彼らの婚姻の儀を執り行ったおばちゃんを呼んでくれて、儀式が始まる。
「エリカはヴァンパイアだけど、血が飲めない。どうしたものか…」
「おばさん、オレから提案があります!」
「…そうしよう。前代未聞だけど、形ができればいい」
アキメネスの案が採用され、おばちゃんが口を開く。
「エリカ、目をつぶって左手の薬指を出しな」
「はい」
これまでの婚姻の儀とは逆にヴァンパイア側が左手を出す。直後、針で突かれる。
「アキメネスはその血を吸う。できるね?」
「もちろん」
「っ!」
目をつぶっていても、彼が血を吸うのが分かる。刹那、その感覚がなくなるとウチは目を開けた。
「おめでとう!これでお前達は夫婦だ」
「初めての展開だけど、お幸せに!」
「これじゃあ、どっちがヴァンパイアか分からないわねw」
「アキメネスは、人間でも吸血行為をするの?」
皆から祝福されて幸せな気持ちになったが、娘を抱えたミモザとアリウムの質問にウチも気になっていた。
「オレは吸血には興味ないし、食べ物で栄養が取れるから、これは形だけだよ。エリカ、安心した?」
「そうよね。てっきり、あなたがヴァンパイアに目覚めたのかと思った」
波乱の婚姻の儀が終わり、各々家へと戻る。
「エリカが倒れなくてよかったよ!儀式どころじゃなかったから」
「驚きの方が強かったからかな。今は無事に終えられてホッとしてる」
「今日は、お祝いににんにく料理を食べよう!」
「ウチららしいねww でも、その前に…」
不意打ちでウチからキスをした。この先に待っている未来を、2人で一緒に歩みたいと思ったから…。
完(番外編1・2へ続く…)
読んでいただきありがとうございます!
小話⑩ヴァンパイアには翼がありますが、私も設定上小鳥なので小さな翼があります。パタパタとなろう内を飛び回って、色んな作品を読み漁っているのです。




