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第2話 初配信

 アレンはマフィアの男性構成員が運転する車に乗って、お台場にあるダンジョンに向かっていた。通称、お台場ダンジョン。初心者から上級者までの幅広いランクの者たちが探索している。

  

「ボス、その服装で行かれるのですか?」


 後頭部座席で窓の外を眺めていたアレンに、運転している構成員の一人が声をかけてきた。服装――アレンは黒のスーツに黒手袋をしている。街を歩く探索者らしき者たちは、鎧などの防具をしっかりと着ている者たちが多い。確かに、アレンの服装でダンジョンに入れば、異質でしかないだろう。


「ああ。何も、防具がなければ戦えない、ということはないからね。それに、この服装の方が慣れている。」

「失礼致しました。ボス、白鳥(スワン)のミスリルプレートは服の下に隠しておられますよね?」

「勿論だ。正体がバレるわけにはいかないし。それに、正体が分からない方が面白いだろう?」

「面白い――ですか。良いですね。ドイツに居た頃よりも生き生きとしておられる。」

「そうかな。あ、ここで降ろしてくれ。」

「かしこまりました。」


 お台場ダンジョンから少し離れた場所で車を止めてもらい、アレンは降りる。人目のつかない場所で降ろしてもらったので、周りからの視線は感じない。

 だが、大通りの方に出れば、嫌でも視線を感じるだろう。なんせ、アレンはサラサラとした金髪に碧眼でスラリとした長身の美男子なのだから。


 そして大通りに出ると、案の定とてつもない視線を感じた。性別年齢関係なくすれ違った者たちは二度見をしていく。写真を撮られるようなことはなかったが、アレンは周囲を警戒していた。


「ねえ、見てあの人……モデル?」

「おいおい、スーツでダンジョンって大丈夫かよ」

「あいつ、多分死ぬぞ」


 少し歩いて、お台場ダンジョンの入口へと着いた。入口には、ダンジョン省の者が立っている。ダンジョン省の人は、アレンに気づくと少し近づいて話しかけてきた。

 

「すみません。通行証を提示していただくことは可能でしょうか?」

「ああ、勿論です。どうぞ」


 そう言ってアレンはポケットから取り出す。取り出したのは、黒色のカードだった。


「はい。ありがとうございま――す!?(は!?くろ――黒!?)あ、いえ、失礼しました。どうぞ。お入りください。」

「ん?あ、はい。ありがとうございます。」


 なんかやけに驚いたような表情をして、開いた顎が戻らないダンジョン省の人を不思議に思いながら、アレンはダンジョンへと入っていった。


 

 ◇◆◇



 お台場ダンジョンに入り、人気のない場所まで来ると、アレンはパチンッと指を鳴らして亜空間の入口を出現させた。その中にある、適当な剣とドローンを取り出す。


「剣はこれでいっか。紋章とかもないし、シンプルな方が良いよね。ドローンもこのボタンを押せば起動するはず――」


 アレンは剣を手に持って、ドローンの起動ボタンを押す。すると、ドローンは空中に自動で浮き、アレンが少し離れれば勝手に近づいてきた。追跡機能があるので、起動すればいいだけの便利なカメラだ。


「Hiyokoを開いて――この配信開始ボタンを押せば、準備は完了かな。うん、簡単だね。アカウントもちゃんとシュヴァンってなってるし、大丈夫だ。」


 亜空間の入口を消して、アレンは、配信開始ボタンをポチッとタップした。大した変化も何もないが、これで本当に配信出来ているのだろうか。


「あー、聞こえてますか?」


 ”聞こえてるよ〜

 ”初心者かな?

 ”それにしては服装、スーツだけども


 聞けば数名の人が反応を返してくれる。ちゃんと配信出来ているらしい。リアルタイムで反応があるのはやっぱり面白かった。


「初めまして。僕はシュヴァン。ダンジョン配信をしようかなと思ってます。これからよろしく。」


 ”よろしく〜

 ”ゆるいなぁ

 ”シュヴァンか。お洒落な名前やね

 ”ほんで、ここ何ダンジョン?


「お台場です。お台場。初めて来たけど、ここまで来るのに時間は掛からなかったから大丈夫だと思う。」


 ”お台場――お台場!?

 ”初心者から上級者まで居ますけども。探索には時間かかるよ?

 ”え、ここ何階層なん?

  

 何階層――何階層だろうか。お台場ダンジョンには初めて来たし、よく分からない。それに、ダンジョンに入ってからずっと歩いていたので数えてもいなかった。


「何階層でしょう?誰か分かります?僕、歩いてただけで、数えてなかったんですよね」


 ”え゛――マジか

 ”魔物とか近くに居る?

 ”イケメンすぎるやろ。ほんで、数えてないことってあるんか……


 アレンは周囲を見渡す。その間にも、視聴者は少しずつ増えていた。そして、遠くの物陰に一体の魔物を見つけた。


「あ、あそこに魔物居ます。」


 ”後ろ後ろ!!

 ”危ない!!

 ”気づいて!!


 アレンがコメント欄を見ると、後ろ、危ない、気づいて、という言葉で溢れかえったいた。後ろ――?アレンが後ろを向くと、そこにはとてもデカい蜘蛛がいた。


「おー、大きな蜘蛛だね。それでみんなどうしたの?蜘蛛しかいないけど。」


 ”え?

 ”ん?

 ”蜘蛛だねぇ……いや、蜘蛛だけども!!

 ”そいつBランクのグレートタイラントなんだが……

 

 コメント欄正解。この蜘蛛、Bランクのグレートタイラントって言うデッカイだけの蜘蛛。コイツが出す糸や毒はとても使い易いから、重宝するんだ。

 

 でも、道の邪魔だな……通れないし、他の探索者も困るよね。なら殺しても良いか。ある程度の常識は身につけたから、剣で倒せば大丈夫だと思う。


「君、道の邪魔だからどいてね」


 アレンが剣を横に振ると、一瞬にして、グレートタイラントは粉々になり、ドロップ品の糸と毒の入った瓶、そして魔石だけが残った。勿論、素材は回収する。


 ”いやいやいや

 ”CG――だよね?(むしろ、そうであってくれ)

 ”最初から見てましたもん……CGじゃないよなぁ……

 ”わ、わぁ……大きな蜘蛛グレートタイラントさんが粉々にぃ……

 ”みんな壊れちゃった……


「えっと……で、何階層でしたっけ?」


 ”うん、その話じゃないと思うんだ。

 ”グレートタイラントが出るなら中層の50階層以降ですね……

 ”とんでもない新人来ちゃった

 ”本当に新人か?俺達が見てるのは夢。そう、夢。

 ”ああ完全に壊れちゃってるよ……(いろいろな意味で)


 え、えぇ……これくらいなら白鳥(スワン)のメンバーは誰でも出来るんだけどなぁ。むしろ、出来なかったら死んでる。中層の50階層以降か。お散歩気分で探索できるだなんて楽で良いね。

 こんにちは、雪華97です。

 前々からずっと書きたかったものになります。

 掛け持ちになりますので、更新はまばらになるかもしれませんが、一万文字までは毎日投稿をします。

 追記:プラチナプレートから、ミスリルプレートへと変更しました。

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