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【一話完結】1200字の闇鍋短編集   作者: こいやはいや


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3/5

【手】 繋がれた手

「俺とお前、どちらかが死ぬしかない」

 ケイゴが放った死の宣告に、レイトは「そうだね」と短く返した。シェルター内に、レイトの声が反響した。

 ケイゴは空になったペットボトルを投げ捨てた。ゴミの山に当たり、耳障りな音を立て崩れ落ちた。

「…………」

 レイトの突きさすような視線に、ケイゴは目を背けた。

 ここに避難してから何日たっただろうか。シェルター内は全身がべた付くほど蒸し暑く、鼻が曲がりそうな異臭が立ち込めていた。

 減っていく水と食料。救出隊の到着日まで、二人で生き残れないのは明白だった。

「大丈夫、絶対助けがくるって」

 そう励まし合っていたのが、遠い昔に思えた。

「ケイゴ!ゴミはきちんと並べてって言ったじゃないか!」

「並べて何の意味があるんだ?水と交換でもしてくれるのかよ!」

 ケイゴの拳がレイトの頬に痣を付けてからは、お互い口を閉ざした。

 死の宣告が、久々の会話だった。

 懐中電灯の明かりが、やせ細ったレイトを照らし出している。

「ケイゴの考えは何でも分かるよ。……親友だからね」

 親友という言葉に、ケイゴの身体が固まった。思わずレイトの表情を見たが、懐中電灯がずらされて表情は読めなかった。

「ああ、そうだな。じゃあ、いつも通りでいいか?」

「じゃんけんだね。負けたら方が、ここから出ていく」

 しばらく、静寂が訪れた。地上で何かが暴れているのだろう。微かな振動が懐中電灯の光を揺らした。

 ケイゴはレイトを盗み見た。伸ばした手が力なく垂れ落ちた。レイトはただ目を閉じ、精神を統一させているようだった。

 カタカタと、異音がした。ケイゴが手にしていたゴミが、床と擦れる音だった。

「随分考えているようだが、出す手は決まったか?どうせ運なんだ。考えても仕方ないだろ」

 つい挑発的な物言いになってしまう。ケイゴの口がまた開きかけて、そのまま閉じた。

「出す手は最初から決まってるよ」

 ケイゴの目が大きく見開かれた。レイトが拳を握り、こちらに突き出しているのだ。

「おい、それは――」

「僕はこの手を変えるつもりはない。ケイゴ、君が決めてくれ」

 レイトの青い瞳が、ケイゴをじっと見つめていた。ふざけるな、そう叫ぼうとして、口を閉じた。レイトはこういうやつだった。ずっと、そうだった。

 大きく息を吐き、レイトを見つめ返した。手の震えは止まっていた。

「……分かった」

 そういって、ケイゴもレイトと同じように、手を伸ばした。今度は、レイトの瞳が大きく開かれる番だった。

「何の真似だい?」

「お得意の心理戦なんてやらせねえ。俺は、この手を変えない。勝ちたきゃ、勝てよ」

 レイトがふっと右の口角を吊り上げた。何度も見てきた、笑い方だった。

「じゃあいくよ。じゃんけん――――」


 救助隊がシェルターを発見したのは、それから数週間後だった。

 異臭が立ち込める室内に、仰向けで並んだ二人の男を発見した。

 その手は繋がれていたという。

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