28話「なんとか息子を連れ帰りたい」
時間はドラゴン襲撃時に戻る。ロンたちは突如現れたモーティスと対峙していた。
「いや...生みの親というのは語弊があるかもしれませんね...私はあくまで発案者というか...」
モーティスはあごに手を当て、何か考えている様子だ。対照的に、ロンとヒナは、はっとした表情をする。モーティス、間違いない、あの誘拐犯が言っていた名前だ。しかも、この男は、今僕の生みの親と言ったのか?
「僕の親は...あなたみたいな人ではありません!」
「ん?ああ、記憶がないのは当然ですよ。中途半端に終わってしまいましたからね」
思わず叫ぶロンに対し、モーティスは含みのある言い方で返答した。
ロンの生みの親...ロンに、両親の記憶はない。気づいたときにはエイに拾われ、魔法を教えられていた。
待て、じゃあその前は?エイに拾われる前、僕はどこで何をしていた?
「お前の目的はなんだ?息子の職場見学じゃないだろ」
考えをめぐらすロンをよそに、ハリスが弓を構えたままモーティスに聞く。先ほどハリスが放った矢はモーティスに傷一つ付けることができなかった。何か魔法を使ったのか、それとも...
「おお!よくぞ聞いてくれました!実は私ロン君を回収しに来たのです!」
「...僕を?」
ロンは一歩後退く。この男は今僕を誘拐ではなく、回収と言った。まるで元は自分の所有物がったかのような言い草だ。
「...一応理由を聞こうか」
「自分の子供を連れて帰るのに理由がいりますか?」
話は終わり、とでもいうように、モーティスは指を鳴らした。乾いた音が戦場に響く。そして...
「ひいっ!」
ヒナが情けない悲鳴を上げる。ヒナの目線の先には、その場で羽を広げ、ロン達に向かって魔方陣を展開するドラゴンがいた。
「ここまで教育するのは大変だったんですよー。なんせ、子供に最初から魔法を教えるんですからね」
モーティスはドラゴンを見つめ、しみじみとした様子で語る。ハリスは焦点をカラス面に向けたまま、歯をくいしばった。
「やはり...原理は分からないが、中身は人間か」
「あなた目がいいですね!正解です!」
中身は子供。にわかには信じられないが、もしそれが事実だとして、その子供はどこから来たのか。その瞬間、点と点が線でつながった。
「その子供は...誘拐した子供ですか?」
「誘拐?はは、人聞きが悪い!私は子供を集めてくれと依頼しただけですよ!まあ、集めた手段は知りませんが」
モーティスは悪びれる様子もなく、淡々とヒナからの質問に答えて見せた。自分の行いを何とも思っていない...醜悪、それ以外の言葉では表せれまい。
「子供を何だと思って...許さない...殺してやる!綿作りの守護者!」
突如、ヒナが抱えていた人形が巨大化する。その人形は、誘拐事件の時よりも大きく、3mはゆうに超えていた。
「待て、ヒナ!」
「死ねえ!」
ハリスの言葉を聞かず、ヒナの人形はモーティスに殴りかかった。もう少しで拳が届く。その時だった。
「壥軅(■■■■)」
「ロン!防御魔法を使え!」
モーティスが何らかの魔法を使ったとほぼ同時、ハリスはロンに指示を出す。
「分かりました!プロテクション!」
ロンは指示通り、魔法の防御壁をモーティスと自分たちの間に展開した。最大規模の魔法壁。普通なら、熟練の魔術師数人でやっと構築できるレベルの代物だ。
「素晴らしい魔法ですね!無意味だとは思いますが」
「床が...!?」
いつの間にか、やぐらの床には、黒い何かがうごめいていた。それは魔法壁を貫通し、ロンにまとわりついて来る。
「魔法が...使えない」
ロンは瞬時に反撃しようとするが、魔法を使うことができなかった。まとわりつく何かに魔法が吸い取られている。そう気づくまでに時間はかからなかった。
「ロン!」
ハリスがロンに駆け寄ろうとした。その瞬間、血しぶきが上がる。肉の塊がゴロンと床に落ちた。それは先ほどまでハリスについていた物...ハリスの片腕だった。
「がっ...!」
「ハリスさん!」
ハリスは床に倒れこみ、自らの傷口を抑える。どくどくと流れ出す血が、黒のナニカに吸い取られていった。
「綿作りの守護者!あいつをぶん殴って!」
ヒナは人形に指示を出し、魔法を出した本人、モーティスを叩こうとする。しかし、真横から放たれたビームに、人形はあっけなく貫かれた。
「嘘...」
「えらいですねカノン君」
ビームを打ったドラゴンは軽く鼻を鳴らすと、そのまま空へ飛び立っていった。
「では、そろそろお暇しましょうか。あちらも決着がついたようですしね」
モーティスは背広を正すと、自らも闇の中へ潜っていく。闇は次第に、やぐら全体を飲み込んでいった。
「ハリスさん...!ヒナさん...!」
「ではまたご縁があればお会いしましょう!騎士団諸君!」
ロンは手を伸ばすが、その手を掴むものは、もはや誰もいなかった。
お疲れ様です、かなりえずきです。今回の話を持って、第二章、及び第一部を完結とします。
第二部も引き続き連載していく予定ですが、作者の都合上、今までよりも更新頻度は下がると思います。すみません。
皆さんの視聴やコメント、大変励みになっていますので、今後も応援よろしくお願いします!




