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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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いく年くる年 番外

今日は大晦日。だけど屋敷の主人は外遊中。

せっかく二人で迎える初めての大晦日だって言うのに僕は一人淋しくお留守番。そう言えば去年の婚約中もレグは年末居なかったんだよね…


僕は気持ちを切り替えてレッドフォードのお屋敷でアリエス達と年越しを過ごすことにした。



「ただいまアリエス。オリヴィアさん、パットくんは居る?」

「あらお帰りなさいテオちゃん。殿下、いいえヒュペリオン公はご一緒ではないのかしら?」


「オリヴィアお義姉さま、レグルス様は現在国外においでなのですよ。海が荒れて新年に戻れなかったのですって」


僕が説明するよりも先に、離れからやって来たアリエスが説明してくれる。良かった。僕が話すとシンミリしちゃいそうで…オリヴィアさんに心配かけちゃいけないからね。


「本当はクリスマスに戻る予定だったんだよ。せっかくセーター編んで待ってたのに!」

「僕とアルタイルにくださったベストも鎧のように頑丈でしたね。あれなら防具にピッタリです。外遊にでるレグルス様にこそ必要だと言うのに」

「え?あ、あの…、そんな鎧は作ってな…」


「あらあら。年々大作になっていくのね。そうそう、パットは旦那様が王城へ連れて行ってしまわれたのよ。旦那さまったら会う人ごとに「類まれな傑物になる予兆がある!」などと自慢して歩いて…。あれほど溺愛されるとは思ってもみなかったわ」


愛情深いお兄様はパットくんへの親ばかぶりを微塵も隠そうとはしない。でもいいと思う!


「パットは可愛いもんね。一歳だって言うのに言葉だってしっかりしてとっても賢いよ?さすがお兄様の息子!」


「ふふ。それじゃあテオちゃん、年越しはレッドフォード邸で過ごすのね?まぁ嬉しい事」


「うん。だから今からおせちちつくろうと思って」


「オセチ?お兄様それは…」


「新年に食べる幸運の寄せ集めセットだよ。お料理の一つ一つに意味があるの。アリエス手伝ってね」




しっちゃかめっちゃかな厨房を覗き込んだのはアリエスの旦那様で僕の友人アルタイルだ。


「テオ、やっぱり来てたんだな」

「アルタイル。毎日お兄様の無茶振り…お疲れ様。それよりジローのところに行ってたんでしょ?元気だった?」

「ああ、テオに頼まれたあの蜘蛛みたいなドロン?に悪戦苦闘してたよ。風の魔力を籠めて欲しいと呼ばれたんだが…、テオ、何だあれは?」


「ドローンね。小型の飛行模型だよ。遠隔で自由に動かしたいって言ったの。バッテリーと送信機と受信機があったら出来るって。そうしたら魔石をバッテリー兼受信機にしてして操縦者の魔力に同調させて制御出来るようにしてみるって」


「じゃぁ魔石に魔力を注いだものが操縦しなくちゃならないってわけか?」

「そうみたい。生活魔法しか使えない僕にはどうせ関係ないけど」


あ、涙が…


「でもこれが出来たら人が入れない場所に荷物を運んだり様子を覗いたり出来るようになるよ。この間タウルスが困ってたでしょ?昔の戦乱跡地を調査したいのに老朽化した建物が危なくて下級騎士では簡単に入れないって。これがあったら便利だよ?」


「確かにな」


「僕の薬草園に空から肥料を撒いたりとかもできると思って!」

「お兄様それって…、じゃぁ疫病の流行った地区に上空から浄化薬を散布出来るという事ですか?」


「そうだよ。あっ!もしかしてアリエスが困ってた東端の領だね」

「ええ。領全体に伝染性の病が蔓延して…、安心して踏みこめるのは僕だけなのです。ですが一人で全てを癒してまわるのは現実的では無くて…。元老院からは他領へと波及する前に何とかせよと言われていたのです」


「役に立つと良いね。ジローには早くしろって言っとく」

「止めてやれテオ…。ジローが倒れる。他人事じゃないがな…」



それぞれみんな、日々ひたむきに仕事へ向き合っている。お仕事してないのは学術院へ進んだ僕だけ。

でも僕には神獣様の宝玉という、何にも代えがたい任務があるから許してね。




「テオ君!」

「リヒャルト君!タウルス!」


「会いたかった!久しぶり!」

「僕も会いたかった。そっか。冬だものね。タウルスに会いに来たの?」

「そう。お父様は相変わらず渋ってたけど…」


「いい加減諦めればいいのに。ねぇタウルス」

「はは、そう言ってやるな。父親なんてそんなもんだ」


会えると思ってなかった人に会うとサプライズ感満載で嬉しくなるよね。あ~あ、ルトガー君も居たら良かったのに…



「それより何作ってるの?」

「おせちだよ。いい?今から説明するね。この卵焼きはクルクル巻いてあるでしょ?これは巻物に似ているから勉強頑張れ!って言う意味ね」


「凄く綺麗に巻けてるね。テオ君上手!」

「それ巻いたのアリエス…。ま、まぁいいや。次コッチ。このブラックビーンズは魔除けと、それからマメになるようにって言う意味ね」


「甘くて美味しい!これは…デザート?」

「テオ、どうしてビーンズの意味がマメなんだ?」

 

ぐっ、日本語との互換性が…、タウルスめ、余計なことを…


「次行ってみよう!このジャイアントへリングの卵が数の子ね。ちょっとサイズ感が大きいけど…でも食感は同じだったから」

「魚卵を食べるのか…」


「アルタイル…そんな嫌な顔しなくても…。この国の人達って魚の卵食べないよね?イクラも明太子も美味しいのに。でもこれは子宝に恵まれる!っていう意味があってね」

「ではその時点で僕たち全員関係ありませんね」


アリエス…、それを言ったら身も蓋も無いから…


「…次。これはバッチリ!バッチリだから!栗きんとん!栗をサツマイモのペーストでくるんだものでね、きんとんは金のことなんだよ。もっともっと栄えるようにって言う意味!」


「では大きなボウルをその〝きんとん”とやらで満たしてしまおうか」

「ハインリヒお兄様!お帰りなさい!」


タタタタ、ボスッ!


「おや?人妻となったのに困った子だ。甘えん坊は変わらないのだね」

「だって…」


「ふふ、良いではありませんの。せっかくの夜に甘えたい相手が居ないだなんて…あんまりですわ」

「代理という訳か。願ったりだ。おいでテオ」


新婚なのにぼっちの可哀想な僕をハインリヒお兄様は思う存分甘やかしてくれた。まるで昔に戻ったみたい。ちょっと嬉しい…


そんな風にして過ごした大みそかは、家族や親しい友人に囲まれ和気あいあいと楽しく語らって、特にリヒャルト君とは積もる話に花が咲いて、淋しさなんか感じる暇も無かったよ。



ほんの一口だけどワインを飲んだ顔が火照って熱い。

レッドフォード邸にそのまま残してある裏庭に面した僕の寝室。部屋に戻ると僕は涼むために窓を開けた。


「この空の向こうで今頃レグもケフィウスさんと乾杯とかしてるのかな…?あーあ…」


なんてつまらない事を思ったりする。ダメダメ。海は気まぐれなんだから。わがまま言っちゃダメ!


そんなことを考えながらうっかりウトウトしてしまった僕が目を覚ましたのはふわりと肩に何かがかけられたから。

アリエスかな?

「日にちの変わるところを見たいからもし寝てたら起してね」って言ってあったんだよね。


「テオ。直に零時だよ」


はっ!


「レグ!」

「可愛い顔に見蕩れてしまった。だけど窓を開け放したまま眠ってはいけないよ。風邪をひいてしまう」


「ご、ごめんなさい、それよりレグ、いつ帰って来たの⁉」

「つい先ほど。夫夫となって初めて迎える年の節目だ。どうしても君の瞳に一番最初に映りたくてね。ケフィウスに無理を言った。船員たちを後で労わなくては」


「レグ!レグ!僕嬉しい!ホントはね、今日はレグと一緒に過ごしたかったの…」

「テオ、私もだ。毎日君が恋しかったよ」



レグとの二年をまたにかけたカウントダウンキッス…

それは少し潮の味がして、レグが本当に急いでここに飛んできてくれたんだなって思ったら、息が白くなるような冬の深夜だと言うのにとっても心がほっこりした…



新しい年…みんな幸せに過ごせますように。ハブアハッピーニューイヤー!



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