王宮で探る 24
私は手をかざして、メリルさんの手にまとわりつく黒い煙をすいとった。
邪気が少なかったので、あっという間にすいとれた。
私の手から生まれたのは、とても小さな種がひとつだけ。
「この種、大きさは違うけど……どう見ても、昨日の種と一緒だよね……?」
「ああ……。昨日、あの女からライラが吸い取った邪気から生まれた種のミニサイズだな。ということは、また、グリシア侯爵家がらみか?」
と、鋭い視線で小さな種を見るアル。
「え、グリシア侯爵家……? もしや……」
メリルさんが驚いたように、コリーヌ様に手渡した封筒を見た。
「ええ、この封筒が原因のようね」
そう言って、コリーヌ様が手に持っていた封筒をゆっくりとテーブルに置いた。
その瞬間、封筒から黒い煙が糸をひくようにして、コリーヌ様の指先から離れた。
「ライラちゃん、この封筒をさわった私の手にも邪気がついているの?」
私はうなずいた。
「うっすらとですが、コリーヌ様の指先に黒い煙がまとわりついて見えます。少しなので、すぐにすいとりますね」
「ありがとう、ライラちゃん」
私は、コリーヌ様の手に私の手をかざして、邪気をすいとった。
私の手のひらからは、メリルさんと全く同じ、とても小さな種がひとつだけでてきた。
「つまり、ふたりが触ったこの封筒が原因か……。母上、もしかして、これはグリシア侯爵関係の人間からの手紙か?」
テーブルに置かれた封筒をにらむアル。
「ええ、まあ、そういうことになるわね。グリシア侯爵の妹であるアメルダ様からのお茶会の招待状だから。しかも、私だけじゃなくて、ライラちゃんとアルにも一緒に来てほしいと書いてあるの」
コリーヌ様が憂鬱そうに言った。
「は……? 茶会? しかもライラも一緒にだと!? 何考えてるんだ、あいつら!」
アルが声を荒げた。
「以前、ライラちゃんがアルと婚約した時、王宮へ挨拶に来てくれたでしょう? その時、アメルダ様とフレッド様には会わなかったじゃない。だから、改めて、ライラちゃんに挨拶したいのですって」
そう言えば、正式に婚約した時、ご挨拶に王宮へ来たけれど、その場には国王様と王妃エリザベス様、そのご子息である王太子のイグアス様だけがいらして、側妃アメルダ様とそのご子息である第二王子のフレッド様はいらっしゃらなかった。
アルからアメルダ様とフレッド様は、アルとコリーヌ様を目の敵にしているから、用心するよう言われていたので、会わずにすんで、ほっとした記憶がある。
なんて考えていたら、アルが勢いよく椅子から立ち上がった。
「ライラにあいつらの挨拶は無用だ! というか、茶のなかに何が入ってるかわからない茶会になんか、ライラを連れて行くわけないだろう! 母上、即刻、断ってくれ! いや、俺が直接行って、この邪気を放つ招待状を突き返してくる!」
そう言って、アルは手紙をひっつかむように手をのばした。
「ちょっと、アル! うかつにその封筒を触っちゃダメだよ! 弱いけど、邪気がでてるんだから!」
私は、あわてて、アルの手をつかんだ。
「そうよ、アル。落ち着きなさい。それにあなたが直接断りに行ったりなんかしたら、無駄にことを荒立てるだけでしょ? 相手が相手なのだから慎重に動かないとダメよ。それにしても、今まではアメルダ様達に何を言われようがアルは適当に流してたのに、本当に変わったわね……」
コリーヌ様が驚いたようにアルを見た。
「俺だけだったら何を言われようがどうでもよかったからな。だが、ライラに関わってこようとするなら話は別だ。あんな心が汚い奴らとライラを会わせたくない!」
アルが私を心配してくれている気持ちが痛いほど伝わってきて、嬉しくて胸がいっぱいになった。
怒るアルに、笑みをこぼすコリーヌ様。
「あなたの気持ちはよくわかるわ、アル。私もあの方たちに、大事なライラちゃんを会わせたくはないもの」
「だったら、即刻、断ってくれ!」
「ええ、もちろん、断るわ。でも、断り方を考えないと……。招待状には、そのお茶会に国王様も顔をだしていただけるよう、お願いすると書いてあったわ。つまり、アメルダ様とフレッド様へ、ライラちゃんが正式に挨拶をする場にしようとしているみたいね」
「は……? あの時、挨拶を欠席したのは向こうのくせに、何が正式な挨拶だ! 父上をひっぱりだして、こっちが断りづらいようにしてきたか……。でも、今頃になって、なぜだ? ああ、あの女か……」
「ええ。おそらく、イザベルさんがアメルダ様に何か話したのでしょうね」
「あの女がライラの力に気づくわけもないから、側妃をつかって、ライラに嫌がらせでもするつもりか? おそらく、茶会には、あの女もくるんだろうし」
「そうでしょうね。イザベルさんはアメルダ様のお茶会には毎回来られてるみたいだから」
ふたりの会話を聞きながら、いろいろ考えていた私。
「あの……」
と、声をだした瞬間、アルが私を見た。
「どうした、ライラ?」
「そのお茶会に参加します!」
私は、はっきりと宣言した。




